アパレルだけじゃない。“食”も考える企業「パタゴニア」がムール貝の缶詰を発売した理由|GOOD GOODS CATALOG #025

2018.8.16

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BBQや宅飲みのテーブルにいつもと違う小洒落た彩りが欲しいという人に朗報がある。アウトドアシーンで活躍する製品を扱うPatagonia(パタゴニア)からオリーブオイル漬けされたムール貝の缶詰が発表された。 …パタゴニアからムール貝?… と思った人もいるかもしれない。

パタゴニアはアパレルを主に展開しているが、実はPatagonia Provisions(パタゴニア プロビジョンズ)という食品事業も存在しており、食品、飲料も提供している。そして同ブランドの考え方には、「最高の製品を作りながら、環境に与える悪影響を最小限に抑える。そして、ビジネスを通して環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する」というものがあるが、このムール貝の缶詰にも環境改善に対する意識が強く反映されている。それは何なのだろうか。

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新製品「ムール貝オリーブオイル漬け」
Photo by Amy Kumler

なぜムール貝を新商品として選んだのか

パタゴニア プロビジョンズから、3種のムール貝の缶詰が発売された。価格は各993円(税込)、3種パック2,851円(税込)だ。

この缶詰を発売した “パタゴニア プロビジョンズ”には、 パタゴニアの創業者イヴォン・シュイナードの「新しいジャケットは5年か10年に一度しか買わない人も、一日三度の食事をする。我々が本気で地球を守りたいのなら、それを始めるのは食べ物だ」という言葉が強く影響しているが、それはこの缶詰からも感じられる。

ムール貝を養殖する際は、人間が餌を与える必要は全くない。貝自体で生命活動を維持できるからだ。このように人間の介入をほとんど必要としないため、ムール貝の生産においては、温暖化などの原因となり地球環境に悪影響を与えるような、生産活動にかかる二酸化炭素の排出を限りなく少ない状態を保つことが可能である。さらに、水を自身の身体を通してろ過することで水中にいるプランクトンなどを食べて成長し、海の栄養過多の状態を整えてくれるため、養殖する数が多いほど水質改善にも大きな役割を果たす。つまり、ムール貝は環境を汚染することなく、私たちにとって栄養素の高い食材(タンパク質、鉄分、ビタミンB12が豊富)になってくれるサステイナブルな海の生き物なのである。

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海中のムール貝
Photo by Amy Kumler

食材の生産と二酸化炭素排出の関係

ここまでムール貝の話をしたが、普段食材がどのように作られて、何を使って、どのような影響を地球に与えて私たちの口に運ばれてくるのかを考えたことはあるだろうか。たとえば、牛肉や豚肉。育てるためには、十分な広さの土地が必要だし、餌の育成・調達や小屋の掃除、加工のプロセス、運搬などで水や電気、土壌、燃料などの資源を必要とする。また、牛の呼気、フンからは大量の強力な温室効果ガスや二酸化炭素の放出が見られる。この時点で、ロープに付着した貝たちをただ海の中で放置しておけばいいムール貝の養殖とのカーボンフットプリント*1の量の違いは明らかだろう。
 
牛や豚よりもムール貝と生息環境の近いサーモンでさえも、餌を人間からもらう必要があるし、その餌を作るため、採るための資源コストの消費が大きい。牛肉1kgあたりを作るためには27kgあたりのCO2が排出され、豚肉は1kgあたり12kgほどのCO2を排出する。サーモンでは1kgあたり、12kgのCO2の排出が確認されている。(参照元:BUSINESS INSIDER

(*1)商品の原材料調達から廃棄、リサイクルまで全体を通して排出される二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を二酸化炭素に換算して、数値化したもの

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Photo by Andrew Burr

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Photo by Amy kumler

食べ残しだけが食料問題ではない

さまざまな食材の作られる裏側にはそれぞれに地球環境にまつわるストーリーがあることを、覚えておいてほしい。食材が作られて、人々の口に入るまでに輸送のために使われる燃料など、さまざまな資源が使われている。だからこそ食べる先にある環境への影響や、食べている食材のルーツなどにもっと興味を持ち、自身もその食物連鎖の循環のなかにいることを意識してもらいたい。環境全体として見たときに、食物を作るための資源の調達には、持続可能性を踏まえて行うことができるものと、できないものがあるのだから。

少なくとも、このパタゴニア プロビジョンズの商品は食を通した持続可能性についてのヒントやきっかけを私たち人間に残してくれそうである。

パタゴニア プロビジョンズ

WebsiteInstagram

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▶︎これまでの「GOOD GOODS CATALOG」

p.24 「サンゴ礁を代償に、あなたの肌を守るのはもう終わり」。肌も海も守ってくれる日焼け止め

p.23 洋服やカバンにつける「ピンズ」で、小さくともパワフルに自己主張する時代

p.22 「化粧品に性別はない」。化粧品から“性別”をなくした“ユニセックス・コスメ”がイギリスで誕生

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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