「原宿での当たり前の過ごし方を変えたい」。“ゴミ拾い”で新しいストリートカルチャーを作る男|都会のローカルコミュニティ、「原宿キャットストリート CATs」の活動日誌 #001

2019.4.27

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こんにちは、CATs(キャッツ)の中村元気(なかむら げんき)です。

CATsってなんだよって話なので、説明から始めようかなと思います。簡単にいうと、原宿の裏通りにある、個性的な店舗の立ち並ぶキャットストリートのお店のスタッフを中心とする人たちと始めた地域コミュニティです。これの根底には「消費の中心地」といわれる原宿だからこそ「消費」について考え、都会だからこそ「困ったときに助け合えるような関係性」を作りたいという共通した思いがあります。

今回は、立ち上げた時から5年続けている活動の「クリーンアップ」について、休日の朝ストリートを歩くようにのんびりとゆるゆるお話してみようかと思います。

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中村元気
都会のローカルコミュニティ、「原宿キャットストリート CATs」の活動日誌 についてはこちら

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そもそも何で掃除するの?

理由は三つあります。まずは、「街が綺麗になる活動」だからです。あまりにも話に夢中になって手が動かないということがなければ終わった時に街が綺麗になります。もちろんCATsのクリーンアップに参加してくれる皆さんは本当に真剣にゴミを拾ってくれているので、みんなで通った道にはゴミはほぼ残っていません。

何度も参加していると、普段の生活の中でもだんだんと街に落ちているゴミが気になってくる人が多いみたいです。掃除をするときに最初に伝えていることがあります。「街には大きなゴミはありません。タバコのような小さなゴミばかりです。でも、もしこのタバコが雨の日に排水溝に流れて、それが川から海へ出て、魚が間違って食べてしまった、その魚を誰かが食べるかもしれないことを想像してください」。

このゴミ拾いはストリートのためだけではなく、大きなことを言えば地球全体の環境問題を防ぐためのアクションなんです。参加者それぞれの想像力しだいで、活動の意義や意味が変わってくるんです。ストリートから地球を救うなんてワクワクしません?密かにそんな仲間をもっと作っていきたいと思っています。

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二つ目は、「コミュニケーションツールとして優秀」だからです。簡単に実施できますし、準備することはほとんどありません。しゃべりながら拾っても十分街は綺麗になります。なので、月一回集まるストリートのお店のスタッフや街の人同士の関係性が、掃除中に作られていきます。一度会えばストリートですれ違えば挨拶くらいしますよね?

最後に、「感謝の気持ちをつなげる」からです。何度も参加してくれている人でも、いろいろな事情で皆勤は難しいんです。もしくは、行こうと思っていたけど、寝坊してしまったり、予定が入ってしまったなどなど理由は様々。そんな時もありますが、誘う時にはこう伝えています。「来れなくても申し訳ないと思わないでください。その代わり参加してくれた人に会ったら、綺麗にしてくれてありがとうと伝えてください」。感謝の気持ちをストリート中でつなぐことができたら、他のちょっとした親切も気軽にできるようになると思いますし、そういった雰囲気が場所の価値を高めると信じています。

ある二人との出会いをきっかけに。

この活動を始めることになったのは、これから紹介する二人が大きく関わっています。

かざまなおみさん(アーティスト)

シルクスクリーンプリントを通して、オーガニックコットンを広める「BIG O PROJECT(ビッグ・オー・プロジェクト)」という活動をしていたなおみさん。“プリント価格の透明性”と“着ていない服をもう一度お気に入りにすること”をコンセプトにした活動にも惹かれましたが、プリントするイラストレーションに一番惹かれましたね。今シルクスクリーンプリントをやっている人は多いけど、この柄をプリントすれば服がもっと魅力的になりそうって思える柄にはなかなか出会えてません。

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Artwork: Naomi KAZAMA

ストリートで活動を始めようとぶらぶらしていた自分は、本当に偶然なおみさんにPatagonia渋谷ストアの前で出会い、街の人たちと活動をしたいという思いを話したところ、「それいいじゃん!」と言われ、「原宿のみんなをつなげていろんなことしている人がいるから呼んでくるよ」と、このあと紹介するPatagonia渋谷ストアの元スタッフを紹介してくれます。そこからすぐに話は進み、クリーンアップをすることになるのですが、その活動を始めるにあたり、今でもなおみさんとの一番の大きなつながりだと感じていること、それは「CATs」というネーミングとロゴです。

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Artwork: Naomi KAZAMA

「CATs」というのは、そのままの意味で、俺たちはキャットストリートの猫だという意味。ここでたくさんの時間を共にする仲間だという意味です。もう一つ大きなメッセージは「ACT DIFFERENT」、「今まで当たり前だと思っていることとは違うことをしよう」=「ストリートでの当たり前の過ごし方を変えたい」というメッセージが込もっています。キャットストリートはショッピングストリートで、たくさんの人が日々買い物しています。そう言った場所だからこそ「それって本当に必要?」と問うことで、それぞれに本当に必要なモノや、人とのつながりが見えてくるんだと思います。

かがやん(元Patagonia 渋谷ストアのスタッフ)

width="100%"最前列で水色のTシャツを着ているのがかがやん

なおみさんが紹介してくれた、元Patagonia渋谷ストアのスタッフのかがやんにも、なおみさんと出会った同じに日に出会いました。すごいスピード感でキーマンと出会っていますよね(笑)。

かがやんにもストリートでクリーンアップをしたいという話をしたところ、「実は以前クリーンアップをしていたんだけど、知り合いのスタッフが異動してしまって、いつからか途切れているんだよね」というところからあれよあれよと話が進み、それから一ヶ月ほど経った2014年4月23日に初めてのクリーンアップを実施しました。初回はかがやんと一緒に面識のあるお店に足を運び紹介してもらいながら、自分の顔を覚えてもらうところから始めました。やっぱり世間話でも足を運ぶとだんだんと仲良くなるもので、むしろその世間話が大事だったような気もしますが、どんどん活動への参加者も増えてきました。正直最初は5人くらいしかこない時にもありましたが、なんとかめげずにやってました。

かがやんを紹介したのは、ストリートでクリーンアップを始めた時に最初に会ったショップスタッフというだけではありません。関西弁で親しみやすい人柄を持っているし、誰と会ってもすぐ友達になれるような、人を巻き込む力がすごいなって一緒にいて思っていました。もう一つは、原宿を身近に感じることができるシーンを見せてくれたことが大きかったです。自分のスタイルを持っているなって感じていて、なんというかおしゃれなコーヒー屋さんで打ち合わせるときでもビーサンで来て、コーヒー待ってる間に裸足になっていたり。それまでは、原宿ってなんとなく気張って行く場所だったのが、出会ってからは変に力が入らなくなりました。今は、本当に居心地のいい場所になっているんだなって改めて思います。

いわゆる“ストリート系”とかじゃなくて

先ほど紹介した二人との出会いは、5年間も続くCATsの活動を語るにあたって、欠くことはできません。記事の前半では、クリーンアップを続けている意味とか意義みたいなことについて真面目に書いてみたのですが、それは後付けのようなもので、正直自分としてはあんまり大きな意味を持ってないなと思います。

今一緒にストリートで過ごすみんなが、これからどんなストリートにしたいか、共通言語(共通認識、感覚のようなもの)を持っているかを大事にしながら、高見を目指すのではなくて、「昨日より居心地がいいか?」という気持ちを大事にしてクリーンアップも続けていきます。

こんなことを積み重ねてたら、キャットストリートに新しいシーンができて、それがキャットストリートのスタイルになるみたいな。みんなが思い浮かべるような、いわゆる“ストリート系”じゃなくて、キャットストリートなりの新しいストリートカルチャーが出来ていくんじゃないかな?なんてね。

今回の連載で紹介した、原宿キャットストリートで出会った人①

Naomi KAZAMA

Website

アーティスト

ストリートアートの先駆者OBEY、シェパード・フェアリーに出会いからシルクスクリーンプリントを学ぶ。アートとは実験であることを知る。98年に帰国後、ストリートにてスクリーンプリントポスターを貼り、作品を発表する。2001年、東京、中目黒にギャラリースペース “大図実験” (DYEZU-EXPERIMENT!)を展開し、ストリートの延長上を表現する(当時の様子を収めたVon Azain! / 2005 や、そこに集った作家達の今の作品とインタヴューを収めたDYZ / 2012 Bueno Booksの本がある。)以降、NYと東京ベースに活動するアーティストペインティングコラボレイティブのバーンストーマーズへの参加をはじめ、作家としてNY, Paris, London, Stockholm,Munichなど国内外のグループ展への参加や個展を中心に活動する。

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今回の連載で紹介した、原宿キャットストリートで出会った人②

香川真輝(かがやん)

約10年間のパタゴニアでの勤務の後、カナダに移住。キッズプログラムやキャンプ場の運営に携わりながら、日本とカナダを行ったりきたりしている。日本の大好きな所は温泉文化。苦手な所は過剰包装。

旅とクライミング、スノーボード、カナダ人のパートナーを愛する。

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中村元気(Genki Nakamura)

Instagram

1992年、埼玉県生まれ。 原宿のキャットストリートという通り沿いで地域活動 CATsを始める。地域に関わる様々なレイヤーの人達と居心地のいい街を作るために日々活動中。消費の中心地だからこそ、クリーンアップなどお金では手に入らない人間関係を作る活動や、表参道の落ち葉を使ったコンポストなど生産側になりゼロから価値を生み出すアクションを実験的に行う。それ以外の活動には都市型屋上農業や、地域のみんなで行うキャンプや山登りなどがある。また、2018年には地域のゴミ問題の根本解決を目指すために「0 waste=ゴミ・無駄のない」ライフスタイルの提案を行う530weekという活動を立ち上げ、5/30にイベント開催を予定。

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CATs

Facebook

東京の中心で昔ながらの商店街のような空気感を持つ、CAT street で働く人たちがメインのコミュニティ。商いをする人たちが、商い以外の活動を通して繋がっている。”ACT DIFFERENT” というコンセプトを掲げていて、消費の中心地、原宿で日常的に消費について考え、行動できる仕組みを作ったりもしている。

目的:
*都市の真ん中で、地域に関わる個人や店舗が有機的につながること
*地域に関わる人が、当たり前の日常に少し変化を起こすこと
*地域に関わる人が、生活に必要な物だけを選ぶライフスタイルが浸透すること

活動:
*Cleanup
*Compost
*CAFE SHIBUYAGAWA
*CAMP CLUB
*Meetup

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530week

WebsiteFacebookInstagram

キャットストリートのクリーンアップを原点に、もっと仲間たちと楽しい時間を共有したいって思った時に、クリーンアップじゃなくて、ただただお茶したいって思いました。

今ストリートでやらなきゃいけないのは、「ゴミを拾うこと」だけじゃなくて「ゴミを出さないこと」。私たちの大好きないろんなものやサービスを提供する企業が変わってくれたらいいなって思いから、530conference 2019というイベントを5月30日(木)に開催します。

ただNoと叫ぶ環境のイベントじゃなくて、循環を意識したビジネスの作り方を学べる少し真面目なビジネスイベントです。NEUT MAGAZINEの読者にもたくさんの多様な生き方、働き方をしている人がいると思っています。私は普通のビジネスマンだなんて思わないで欲しい。あなたが変えることができる世界がたくさんあることを知って欲しい。そんなこれからのみんなの生活をビジネスの中で作っていくようなみなさんに参加して欲しい。

日時:5月30日(木)10:00-21:00
場所:TRUNK(HOTEL)&SHIBUYA CAST.

チケットはこちら
詳細(Facebookイベントページ)はこちら

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