身近にあるもので作り始めよう。直感と感覚のアーティストmokaとnico itoの意外な共通点|VANS CHECKERBOARD DAY特別対談【Sponsored】

Text: Moe Nakata

Photography: Goku Noguchi unless otherwise stated.

2021.11.17

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 VANS(ヴァンズ)と聞いて何を思い出すだろう。スニーカー含むストリートカルチャーのイメージが強いかもしれない。だが実は人々のクリエイティブな表現を称賛し刺激することをポリシーに掲げ、アーティストをサポートしたり、数々のコラボレーションを行ったりしている。
 そんなVANSは2021年11月2日(火)から店舗内の壁をジャックするアート展示イベント「OFF THE WALL ART HARAJUKU」を開催。NEUT Magazineがキュレーションをし、moka、nico ito、DAISAKU、leegetの4名のアーティストが参加。彼らのアートが2週間ごと順番にVANS STORE HARAJUKU店舗の1階の壁を飾る。
 加えて、本国のアメリカが主軸となって2021年11月18日(木)に慈善イベント「CHECKERBOARD DAY(チェッカーボード・デー)」を開催。芸術、スポーツ、文化、社会的影響を与えるプログラムを通じて公共空間を活性化することを使命とする16の慈善団体を世界中から選び支援を行い、クリエイティビティを発揮できる機会を増やすことを目標としている。今年のテーマは「TOGETHER MAKES IT BETTER(一緒にやればもっと良い)」。

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左からnico ito, moka

 今回NEUT Magazineは「OFF THE WALLART HARAJUKU」に参加したイラストレーターのmokaとnico itoの対談の場を設けた。作品制作の裏側やCHECKERBOARD DAYの信念にももとづいて、クリエイターとしてのあり方などについて語ってもらった。この記事が、これから一歩を踏み出したい人へのクリエイティブな活動のきっかけとなってくれれば幸いだ。

ー今回の「OFF THE WALL ART HARAJUKU」に向けてどのような作品を作られたのですか。

moka:自分ってすごい練って練って作品を作るというよりパッと想像するタイプなんです。だからVANSって聞いたときにチェッカーボードが一番に浮かんできて、あとはスケートボードとかスケーターとかのカルチャーが思い浮かんだので、そこでボードにイラストを描く作品を作ることにしました。スケートボードの真ん中に1人女の子がいるんですけど、それに深い意味はなくて、最近描きたかった女の子が赤髪で「あ、ここに入れよう」って思いました。女の子自体は実在していないけど、赤髪の女の子には一応モデルはいて。描く子は気が強い女の子が多いような気がします。あんまり性格は考えていないんですけど、自分を持って自信のある感じの女の子を描きたいと思う。

nico:私もVANSって聞いたときに思いついたのがチェッカーボードで。VANSのスニーカーはスケーターの方もよく履いていたり、自由に動けるみたいなイメージがあったので、この絵は、上の段には「あそびにいくぞ!」と飛び出すピンクの生き物。下の段には形が変わるほど動き回った先ほどの生き物を描きました。私もそんなに深い意味はないんですけど、「VANSを履いて外であそぶぞ!♪」って感じの楽しい絵です。いつもとは違って今回は動きのある絵にしました。

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moka’s art work for OFF THE WALL ART HARAJUKU

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nito ito’s art work for OFF THE WALL ART HARAJUKU

ー普段作品はどのように作っていますか。

moka:いつもアナログで紙とかもそこまでこだわっていないんですけど、ペンはずっと無印良品のゲルインキボールペンを使っています。小学校から使っていたのがいつの間にか仕事道具になっていて。あと色を塗るときはアクリルガッシュで色を塗っています。でも今回のスケートボードはマッキーとアクリルガッシュで作りました。他のをいろいろ使ってみようというより、身近に済ませちゃうっていうのが結構あって。アクリルガッシュも大学の受験で買ったものがあったから使ってみようって思った。

nico:私の家にもたくさんあります。

moka:だよね。そこから合う合わないを決めたらいいと思うので、とりあえず家にあるものでできるし、面白いものも作れる。

nico:私は全部デジタルなんですけど、ラフだけ手書きで書いてそれをBlenderっていう3DのソフトとPhotoshopで仕上げています。

moka:3Dなんですね。

nico:そうなんです。3Dで1回形にするんですけど、私が使っているのは「Sculpting」っていう粘土みたいなモードで、ただの球体を実際の粘土みたいにどんどん伸ばしていく。初めは描いたラフ通りにやってみるんですけど、どんどん面白くなって。自分が思っていないような形ができるのが楽しいのでこのやり方を続けています。次にPhotoshopで画面構成をして最後にノイズのような質感を加えています。

moka:それであの柔らかい独特な見た目になるんですね。

nico:そうなんです。3Dってツルツルした感じなんですけど、あえてザラザラにすることで時代感がわからない不思議な感じにしてます。

moka:それはいろいろいじってたらでき上がったの?

nico:そうですね。いろいろ試して今の質感に落ち着きました。

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ーどのようなときに作品を作ろうと思いますか?

moka:そもそも雑誌や映画やSNSで見たものを描くことが多いので、いいものを見つけたときに描きたいって思います。最近はできていないけど、神保町に行って昔の雑誌を見るのもすごい好きです。映画のシーンだったら停止して保存することもあります。

nico:いいですね、楽しそう!私はそのときの自分のなかのブームで作りたいイメージはなんとなく頭にはあるんですけど、そこからさらに状況設定とかストーリーを考えて、絵本を描くみたいな感覚で描いています。他には3Dでモデリングしたけどまだ作品になっていない素材が割とあって、それを見て動きを考えたり、性格を考えて作品にしていくこともあります。

ー作品を作っているときはどんな気持ちですか。

moka:最近は自由に描くより仕事で描くことの方が多いんですけど、ワクワクしながら描いていますね。仕事もメールや打ち合わせで「どんな絵を描くことになるんだろう?」って。詳しく描いてほしい絵が決められているときも自分が普段描かないような絵だったら逆に楽しいって感じます。

nico:私もmokaさんの同じで仕事で作ることがほとんどです。可愛い作品ができたときは興奮します。自分でストーリーを考えて作るのも好きだけれど、お題に沿って作るのも楽しいです。その喜びがあるから作り続けられるなと感じます。基本的に自分の作風で頼んでくれることが多いのでとてもありがたいですよね。

moka:そこがマッチするのが一番嬉しいですし、使ってくれるっていうのもすごい嬉しい。ほかに嬉しいときは、「このモチーフ誰も見たことないでしょ!」っていうものに出会えたとき。作品ができ上がるのももちろん嬉しいけれど、作品を作る前と後でテンションが上がることが多いかな。

nico:完成して褒められたときより、見つけたときの方が楽しいですか?

moka:どっちも嬉しいし、細かいこだわりとかをみつけてくれて「やばいね、変態だね」って言われたらなおさら嬉しい。

nico:それすごく分かる(笑)「分かってくれている〜!」って思いますよね。

moka:自分でグッズを作るときも工場に頼んでやるより、自分でやるんですよ。例えばライターを作ろうと思ったとき、ライターだと100本が同じ絵柄じゃないですか。それなら無地のマッチに絵を描こうと思って、100個くらい買って一つ一つに絵を描きました。作品なのか消耗品なのか分からないから一応作品として出したら「え、このマッチなんでこんな高いの?」って言われて。「それ、一つ一つ自分で描いたんです」って言ったときに驚く顔を見るのが楽しいというか、変なことをして自分がいいなと思ったものを評価されるときが嬉しいです。

nico:いいですね〜。その顔見たいです。私も「キモくていいね!」が一番嬉しいですね。

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ーこれまで楽しかった仕事にはどんなものがありますか?

moka:最近は挿絵とアパレルグッズが多いです。他にはGINZAで挿絵を描いているんですけど、本当に自分のスタイルでやらせてくれて。それがとても嬉しいです。初めはすれ違うことも多かったけれど、今は仕事が楽しいなって思っています。

nico:私は何かのキービジュアルとか、グッズとか、音楽のジャケットとか、いろいろやらせていただいてます。映像を作ることもあります。今年の夏頃にファミリーマートのレジ上にあるデジタルサイネージ(電子看板)に自分の映像が流れる機会があって。ファミリーマートに自分の絵が急に大きく出てくる違和感が最高でした。

moka:今回のVANSの展示もテンション上がりましたね。知っているブランドだし、ストリートカルチャー寄りの絵を描くこともあるから、嬉しいなって。

nico : 嬉しいですよね。本当にありがたい…。ありがとうございます。

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ー作品を作ることは小さい頃から好きだったのですか。

moka:ものを作ることは小さい頃から好きで、夏休みの宿題とかも大きな貯金箱を作ったりしました。コインの種類によって入れる穴が違うやつ。あとはペットボトルでウクレレみたいなのを作ってずっと演奏するとか。

nico:かわいい…!私は小さいときからパソコンの中で作ることが多かったです。「キッドピクス」っていう子ども用のお絵かきソフトがあって、それでずっと描いていました。

moka:(キッドピクスをスマホで調べる)あーnicoちゃんこのソフトにすごい影響されていそうなのが分かる!

nico:そうなんですよ。小さいときは何も思っていなかったんですけど、今見たらこのソフトかなりセンスいいなって思います。効果音も不穏な感じでかっこいいです。

moka:これを小さい頃にやっていたのがうらやましいし、すごい納得。

nico:かなり影響受けていると思います。親に感謝です。

moka:新しいものもうまく使わないといけないなって思うけど、昔使っていたものとかも大事だと思う。今生まれた人って、今の良さしか分からないじゃないですか。そして上の世代だと今起こっているジェンダーについての議論とか今の流れが理解しづらい。でも平成に生まれた私たちの世代ってどっちも分かかるなって思う。変に偏ってないような感じ。だから作品もあまり偏らずにアナログも取りつつデジタルも取るみたいな、変わった手法も忘れずに作品を作っていきたいなって思います。

nico:取りたい放題って感じですよね。

moka:取りたい放題でも自分のスタイルがブレなければ面白いものもどんどん作れるって思う。

nico:そういう面ではいい時代に生まれましたね。

ー2人のスタイルが確立されたのはいつ頃ですか。

moka:落書きで絵を描くことはあったんですけど、自分の作風で本格的に描き始めたのは大学3,4年のとき。でもわざとこの顔にしようとしたわけじゃなくて、見たまま描いているつもりが気付いたらこの顔になっていたって感じです。

nico:同じ人が描いているからだいたい同じような感じではあるんですよね。私はBlenderを1年くらい前に友達に教えてもらって使い始めて、そこから「これはnico itoだな」って分かってもらえるような作品が増えました。友達にも感謝です。

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ー制作において2人が影響を受けたアーティストはいますか。

moka:東京アートぶっかけフェアーっていうのがあってそれがとても好きです。出店するアーティストがみんな好きで、毎年行っていました。くだらないものに全力で力を注ぐっていうか。そういうのが好きでした。

nico:くだらないものに全力になっているの本当にめっちゃいいですよね。私もそういう作品が好きです。

moka:いいよね。dokidoki clubさんがすごい好きで、何度か展示に行っていたら「以前来ていましたよね」って顔を覚えていてくれて。話したら地元が一緒だったんですよ。本当に作品もめちゃくちゃ面白くて、小泉純一郎の写真集みたいなのがあって、目のところにおっぱいが貼ってあって、「小泉おっぱ一郎」って描いてあって。発想がすごくて自分にとって刺激的でしたね。

nico:私は有名なものだと「ファンタスティック・プラネット」っていう映画があって、架空の植物や生物が出てくるんですけど、それにはすごい影響を受けていますね。

ー今回、「CHECKERBOARD DAY」のテーマが「TOGETHER MAKES IT BETTER」ですが、今後誰かと一緒に作品を作ることになったら、どんな作品を作りたいですか?

moka:平面が多いので、3Dプリンターでキャラクターをフィギュアにしたら面白いんじゃないかって思うんで、それをやってみたいです。

nico:いいですね!私も3Dプリンター気になっています。私は最近見たM-1グランプリ2021の3回戦の「空前メテオ」さんというコンビのネタがすごく好きで、非現実的なネタなんですけど、発想がすごいんです。おもしろいなと笑うと同時に「このネタを絵にしたらどんな感じなんだろう」と勝手ながら考えてワクワクしてしまいました。このような感覚って今までなかったんですけど、このネタを見てはじめて思いました。(もちろん空前メテオさんのネタなので絵にはしないです。応援しています!)
自分でストーリーを立てて作品をつくっていくのも好きですが、自分にはない発想を持っている方と一緒に物づくりするのも楽しそうだと思いました。

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 今回、全く違うツールで絵を描く作風もテーマも異なる2人にも“作品に深い意味を込めない”という意外な共通点があった。アートを見るとき、「その奥の深い意味について考えなければいけない」「アートのメッセージが読み取れない」とプレッシャーを感じることがあるかもしれない。しかし、2人の作品は考えずに感じることのできるアート作品として存在している。
 クリエイティブなこととは、絵を描くことだけではない。スケートボードをすることも、自分のスマートフォンでキュートな動画を撮ることもクリエイティブな活動の一つである。材料は目の前に散らばっている。あなたも記事を読み終わったら、目の前のものから何かを作り出してみたらいかがだろう。

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moka

1995年生まれ。熊本県出身。日本大学芸術学部デザイン学科卒業後、東京を拠点にイラストレーターとして活動。雑誌の挿絵やアパレルグッズとコラボ他、イベントでは似顔絵やポップアップなど幅広く活躍中。
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nico ito

1996年東京生まれ。武蔵野美術大学空間演出デザイン学科を卒業後、フリーランスのイラストレーター兼グラフィックデザイナーとして広告ビジュアル、ジャケットアートワーク、アニメーション制作、グッズデザインなど、ジャンル問わず幅広く手がける。
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OFF THE WALL ART HARAJUKU

人々のクリエイティブな表現を称賛し刺激する事をポリシーに掲げ、アートというカルチャーとも数々のコラボレーションやサポートを行ってきたVANS(ヴァンズ)による、店舗内の壁をジャックするアート展示イベント。2021年11月と2022年1月の2ヶ月間にわたり、moka、nico ito、DAISAKU、leegetの4名のアーティストによって描き下ろされた作品がリレー形式でVANS STORE HARAJUKU店舗1Fの壁にて展示される。
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VANS CHECKERBOARD DAY
VANS(ヴァンズ)が3年連続で行っている、毎年恒例の慈善イベント。2021年は、11月18日(木)に開催し、世界各地のコミュニティの再建と活性化に焦点を当てた活動を行う。VANSは、この日を記念するためにクリエイティブな自己表現を支持する全世界10カ所の慈善団体に合計100万ドルの資金を寄付し、人々のクリエイティビティを発揮できる機会を作り出す。今年のテーマは「TOGETHER MAKES IT BETTER」。
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