「『日本での正解』だけが答えなわけじゃない」。ライター・神田桂一が指摘する、若者の“内向き志向”にともなう危険性

Text: Noemi Minami

Photography: Noemi Minami

2018.10.12

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「近頃の若者は内向き志向」だと言われて久しいが、それでは「外向き志向」とはなんのことだろうか。そもそも内向き志向ではだめなのか。

6刷累計11万5千部を売り上げた『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(宝島社)の著者であり、『POPEYE』や『スペクテイター』などのカルチャーマガジンで執筆を行う神田桂一(かんだ けいいち)氏がこの事情に対する彼の見解を話してくれた。

海外に出向くことが多い神田氏が考える「外向き志向」の本質と、「内向き志向」の問題点とは。

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神田桂一氏

日本にはもっとオルタナティブな選択肢があってもいい

雑誌『ケトル』では編集をつとめ、『POPEYE』や『スペクテイター』などのカルチャーマガジンで執筆、人気漫画『アイアムアヒーロー』のリサーチやイベントブッカーも行ううえに、著書『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』は累計15万部のベストセラーと、多方面で活躍する神田氏。

僕は本当に文章を書くことが苦手だったんですよ。子どもの頃は作文とか大嫌いで。読書感想文とかあるじゃないですか、その400字が埋まらないっていう。

もともと執筆よりも書籍の企画・編集に興味があったという神田氏は「とりあえず入り込めたらなんにでもなれる」と出版業界に就職。配属された先では記者の仕事を任され、本格的に執筆を始めたのはこの頃だったそうだ。同社では重要な役割を担うまでのぼりつめたが、新しいことに挑戦するために転職。その転職先では念願のカルチャー面での編集の仕事に就けたものの、社風が合わずに数ヶ月で辞めることになる。

組織を辞めるのはこれで3度目、日本の「同調圧力」にうんざりしたと神田氏は思い出す。このときは『就職しないで生きるには』という本と、『スペクテイター』の「WORKING!」特集号を片手にトルコとエジプトを旅したそうだ。

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旅好きの神田氏が「外向き志向」をすすめるのは、各国・各文化にそれぞれ「常識」や「ルール」があり、それらを垣間見ることで自身の環境の「正解」がすべてではないと知ることができるから。

たとえばインドを訪れたときは、日本とは対象的に「時間を守ること」が文化的にさほど重要視されていないなど、些細なことが印象に残ったと神田氏は話す。

僕は海外に出て、びっくりすることがたくさんあって。それで日本の制度をみたときに、もっとオルタナティブな選択肢があっても別におかしくないってことを知りました。

和を大切にする日本文化に美点はたくさんあるけれど、同時に行動の規範、つまり「常識」とされていることから遠のくものを必要以上に否定してしまう傾向があることは否めない。

しかし、国外をみてみれば、日本の常識は常識ではない。「外向き志向」の利点とは、客観的に内(日本)をみられるようになることなのかもしれない。

「みんな依存しあって生きていかなきゃなんないのに」

神田氏は、「内向き志向」に対する危機感についても話してくれた。

国を超えて人と人のつながりを考えたときに、日本の海外に対する態度は閉鎖的すぎるという。それは移民や難民を極力受け入れない日本政府の姿勢にも表れているのかもしれない。

特に今の安倍政権とか、世界の国際関係をないがしろにしているのが結構許せないっていうか。みんな依存しあって生きていかなきゃなんないのに、そういうことするなよって。

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神田氏は世界と日本の関係を重視するが、それは「日本に国際化が必要だという話とは違う」と付け足す。

別に世界と同じにしろって言っているわけじゃなくて、「日本での正解」だけが答えなわけじゃないんだよって、そういう感覚がみんなにあればもっと自由にいろいろな議論ができるんじゃないかなと思って。

なるほど、「内向き志向」や「外向き志向」とは、外国の文化に精通しているかどうかなどではなく、視野の広さをさしているのではないだろうか。

「日本スゴイ」でもなく、「日本オワタ」でもなく。

そんな神田氏がNEUTで連載を始める。その名も、『「日本スゴイ」でもなく、「日本オワタ」でもなく。』。同連載では、神田氏が毎回世界のさまざまな統計をもとに、日本と外国を比較していく。

統計は一番わかりやすく、日本が世界からどうみられているかっていうのを知ることができる資料かなと思ったので、それ見ながらだったら論じられるかなと思ったんです。

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「日本の常識が世界の常識じゃないってことは、俯瞰してみてわかるっていうことを前提」とし、世界からみて日本がどんな立場にいるのか、世界とどう関わっていけるのか、そんなことを考えるための第一歩にこの連載はなるだろう。同時にそれは、必ずしも自分がおかれた環境の正義に合わせなくてもいいという、一種の思考的解放ともなるかもしれない。

今後掲載していく連載はこちらのページからチェックできる。忙しい平日の朝に電車の中で、家でダラダラしたい休日にベッドの上で、日本を「外」からのぞいてみてはいかがだろうか。

神田桂一(かんだけいいち)

ライター・編集者。
『POPEYE』『Spectator』『ケトル』『murmurmagazine for men』『クイックジャパン』など。
新刊「もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら」(宝島社)6刷11万5千部。

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