アジア人の女の子は従順で、エロいことに興味津々?彼女がベルリンで感じた“好意の裏に隠れた差別”

Text: Lisa Tani

Photography: Lisa Tani

2018.3.30

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こんにちは、そしてお久しぶりです、谷村リサです。

前回の記事でもサラッと書いたけれど、私は今ベルリンに住んでいる。

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2015年の欧州難民危機以降、ヨーロッパで最も多くの難民を受け入れたドイツ。
そのドイツのなかでも多くの移民が暮らす街、ベルリン。

ベルリンには近年シリアからの移民だけでなく、トルコ系やベトナム系のルーツを持つ人々、そしてほかのヨーロッパ都市からより活動しやすい環境を求めてやってきたアーティストたちなど、多くの異なる文化的、そして人種的背景を持つ人々が住んでいる。

実際私の住んでいる家の近くを走る大通りのコットブッサーダム通りに並ぶ店のほとんどは中東系で、道を歩いていても半数ほどの人がドイツ語以外の言語を話しているように感じる。

そしてベルリンといえば、有名クラブであるベルグハインなどに代表されるようなLGBTQカルチャー。1920年代にはすでに世界初のゲイタウンが存在しておりヨーロッパのゲイキャピタルとして名を馳せ、現在でも毎週様々なクラブでクィアパーティーが開催される。

そんな多様性の街ベルリンは、外国人でたいしてドイツ語も話せない私にだって優しい。
レストランではすっと英語のメニューが差し出されるし、ドイツ人の友達だってみんな私がいれば英語で喋ってくれて申し訳ないくらいだ。
いろんな人が自由に生きている社会では、人間自然と他人に優しくなれるものなのかもしれない。

それでもまだ遠い、ベルリンから見たアジア

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ベルリンのそんなところは本当に大好きなので、嫌なところに気付いても目を瞑って生きていった方がいろいろ楽なのかもしれない。

それでも一度気付いたら、あれこれ考えずにはいられない質なので、チャイナドレス風の服を来た女性の横にGEISHAと書かれたポスターを見かけたり、寿司がすっかりベトナムレストランの定番メニューになっていたりするのを見たときに、この街の人々にとってアジアはまだまだ程遠い存在なんだと感じる。

人と話していても、「自分達とは違うアジア人」というフィルターが立ちはだかるときがある。
さすがアジア人、暗算が早いのね。アジア人は髪がまっすぐでいいわね。

それはシュガーコートに包まれていて、甘い賞賛のように聞こえるけれど、私と彼らを隔てる壁以外のなんでもなくて、私たち本当はそんなに違わなくって、共通点だって見つけようと思えばいくらでもあるのに、と思う。

アジア人の女の子はみんな大人しくて女性らしい?

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そんななかでも特に厄介なのが、「自分達とは違うアジア人」が好きな人たち、いわゆる「イエローフィーバー」持ちの人たちだ。

今まで日本人としか付き合ったことがない、日本人の女の子がとても好き、と語る人。
ここ数年は日本人、韓国人、中国人、台湾人としか付き合ったことがないという人。
SNSでアジア人の女の子にばかりに気持ち悪いセクハラメッセージを送り続けている人。
日本人女性だから、大人しく言うことを聞いてくれる。アジア人女性だから、何をしても怒らない。

そういった偏見が見え透いて、彼らにとっては私を含めてすべてのアジア人女性がそう見えているんだと思うと、何十年に渡って彼らの文化に存在してきた根強いステレオタイプを前にしてただただ無力さを感じる。私は蝶々夫人でも、ミス・サイゴンでもないのに。

彼らは自分の差別的意識を好意と信じてやまない。そうやって一つの人種を包括的に語るのは、一人の人間を個々の人格と認識しないということで差別的ではないですか、と指摘すると怒ったりする。あなたたちのことを褒めているだけなのに、と。

じゃあ全ての白人男性はジェントルマンですね、なんていわれても手放しで喜ぶのだろうか。

もし私が日本人じゃなかったら?

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“…キッチンにお箸と緑茶があったけど、あなたイエローフィーバー持ってるの?”
Illustration by Magdalena Mitterhofer

共通の趣味の音楽を通して仲良くなった友人の家で、私を出迎えたのは本棚いっぱいに並べられた日本の漫画と壁に掛けられた攻殻機動隊のサウンドトラックレコード、そして四角いフライパンだった。

ほら見て、日本の玉子焼き器だって持っているんだ、と。玉子焼き器を「四角いフライパン」ではなく「玉子焼き器」と認識してくれる人と出会えたことがたまらなく嬉しいらしい。ついついつられて笑顔になるが、そんな誇らしげに四角いフライパンを見せられても、私は玉子焼きだっていまだにうまく作れないのに。

日本の漫画が好きなんだ、料理も美味しいよね、ファッションだってオシャレだし。
そんな風に日本のことを褒められているのを聞いていると、なんだか自分自身が褒められているような気さえしてくる。

それでも、本棚に並んだ漫画やアニメのDVDに玉子焼き器だとかを見ているうちに、自分までもがそのコレクションの一部のような気がしてくる。
そうして問いたくなるのだ、あなたが好きなのは私ですか?それとも、あなたがイメージする不思議な東洋の国、日本ですか、と。

ここまでは自分の体験を主観的に書いてみたけれど、日本語で同じような体験をした人を探してみても全く情報が出てこないことにびっくりして、アジア人女性が面する性的対象化(フェティシャイゼーション)、「イエローフィーバー」という差別的なフェチについて日本語で書きたいと思い、ベルリンに住むアジア人の女の子たちに彼女たちの体験を教えてもらうことにした。

サラ・リトル

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ーあなたの名前とベルリンで何をしているか教えてください。

サラ・リトル。シングルマザー、フリーランスのタトゥーアーティスト・モデル。

ーアジア人女性のステレオタイプってなんだと思う?

従順、「いい子」、実はエロいことに興味津々、料理上手、ベットの中で「セックスしたいの」って言う、小さい、キュート、ハローキティにゲーム、そして漫画が好き。

ーベルリンに住んでいて、アジア人女性フェチを感じる?

高校の頃に比べたらそうでもないけれど、自分がインドネシア出身だと知った途端、男性が興味を示してくることはある。

ー「イエローフィーバー」持ちの人に出会ったことはある?どんなことを言われた?

まだ高校生だった頃、男子が私がどのくらい「キツい」のか聞いてくることがあった。私がアジア人で小さいから。

ーどうしたらアジア人女性の性的対象化(フェティシャイゼーション)、つまりアジア人女性が一種のフェチの対象として扱われている現実を改善できるのだろう?

世界中の有色人種の人々によって作られた映画や文学、その他のクリエイティブな表現方法をもっとインターネットを通じて広めることができれば、ハリウッドなどが作り出したステレオタイプを打ち消すことができると思う。

シュアン

ーあなたの名前とベルリンで何をしているか教えてください。

シュアン。コスチュームヘッドウェアのデザインをしている。

ーアジア人女性のステレオタイプってなんだと思う?

服従的な女の子、従順すぎて人形と見分けがつかないような女性。オタクっぽい真面目な学生。ドラゴンレディー*1とタイガーマザー*2。よくこの質問に関して、ハイパーセクシュアリティ*3という単語が挙がるけど、私はそう思わない。ステレオタイプに関して言えば、私たちは自分自身の欲求や要求を持っていると考えられていなくて、誰のどんな性的妄想であろうといつでも受け答えると思われているから。私たちの自主性はとても低いと思われている。

ーベルリンに住んでいて、アジア人女性フェチを感じる?

ドイツで生まれ育ったが、ベルリンに限らずそう感じる。ベルリンはよく進歩的だと言われるけれど、数字の上での多様性が必ずしも社会的な受け入れを意味する訳ではない。

ー「イエローフィーバー」持ちの人に出会ったことはある?どんなことを言われた?

一人の人間として見られていない気持ちになる。特に親密な関係を結んでいる誰かからそういったことを言われたときはとても傷つく。セックスをした人から私が何人目のアジア人だって聞かされることもよくある。少なくとも3人の「初めてのアジア人」だったし、4人目や9人目だったこともある。

あと、第三者には私がアジア人であるという事実しか目に入らないということにも気が付いた。 誰かがアジア人と付き合ったことがあると、すぐ「彼・彼女はアジア人が好きだから、チャンスがあるよ」と言われる。近しい友達にこんなことを言われたときには本当に傷つく。だって私がアジア人だってこと以外に何も良いところがないみたいだから。

ーどうしたらアジア人女性の性的対象化(フェティシャイゼーション)、つまりアジア人女性が一種のフェチの対象として扱われている現実を改善できるのだろう?

人種差別と一緒で一回一回指摘していかなきゃいけない。けれど人種フェチを減らすことは難しいと思う。好きなタイプの話ってとてもパーソナルなことだから、指摘するとすぐ個人を攻撃をしてると思われてしまう。でも、セクシャリティは遺伝的素因で決まるかもしれないけれど、好きなタイプは違う。タイプは生まれ育った環境の影響で決まるから。

(*1) 欧米メディアでよく使用されてきた、目的の為には手段を選ばない、強気で神秘的な女性としてのアジア人女性のステレオタイプ
(*2) 同じく欧米メディアでよく使用されてきた、子供に過剰に学業的な成功を求めるアジア人の母親のステレオタイプ
(*3) 過剰なまでに性的な事柄に興味があること

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彼女たちのパーソナルで正直な体験を通して、一つの人種をひっくるめて語ることの愚かさと、恐ろしさについて考えてみてもらえばと思う。
私たちも他の人種に対して同じように一概的な考えを抱いていないだろうか?

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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