店の窓ガラスを割りまくり、屋敷を爆発。破壊行為を繰り返す女性“犯罪者”たちが手にしようとしたものとは?

Text: Noemi Minami

Photography: © Pathe Productions Limited, Channel Four Television Corporation and The British Film Institute 2015. All rights reserved.

2017.1.23

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今月27日(金)、人類の歴史にとって重要な役割を果たすある映画が満を持して日本で公開される。

その映画の名は『未来を花束にして』。キャリー・マリガン、ヘレナ・ボナム=カーター、メリル・ストリープら実力派俳優が集結した本作は、欧米で2015年に公開され様々な映画祭で14賞を勝ち取り、絶賛と議論を生んだ。

隠された歴史

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この映画は、1910年代イギリスに実在した参政権を得るために闘った女性たちのストーリーに基づいている。もともと政治に興味がなく、保守的だが優しい夫と愛くるしい子供に恵まれたキャリー・マリガン扮する女性、モードが主人公。酷い労働環境で貧しいけれど、あまり疑問を持たずに生きてきた彼女の人生が、女性参政権運動を展開するWSPU(女性社会政治同盟)との予期せぬ出会いをきっかけに、急激に変化していく様を描いている。

当時のイギリスでは男性より長時間、より過酷な労働をしても賃金は半分か、酷い時は6分の1。女性に参政権がないどころか、政治の話をすること自体タブーとされていた。職場での女性への性的暴行も暗黙の了解事項とされていたような時代だ。それが当たり前の社会では、女性の権利を主張する女性は同じ女性たちにも煙たがれていた。これを考慮するとWSPUがどれだけ革命的な存在だったかは、言うまでもない。彼女たちは「“戦争”だけが男が理解できる言語だ」と公共の建物を破壊するなど、戦闘的な手段を取り入れたのだった。実際のところ、彼女たちの暴力性には歴史的に批判的な見方も存在する。しかし彼女たちの運動がなければ、現在のわたしたちは存在しないと言えるだろう。

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この歴史はイギリスの教科書で深く語られることはなかった。「女性の苦悩」は長い間その存在を無視されてきたのだ。だからこそ今作が、男性が独占する映画業界で女性の監督、脚本家、そしてプロデューサーのもと、大々的に製作されたこと自体に社会的意味があり、歴史的出来事だと言えるだろう。

2017年の日本人女性に共通するもの

1910年のイギリス人と言うと、わたしたちとは遠い存在のように感じる。しかし、ある意味残念なことに様々な共通点が見つけられる。

日本の女性の賃金は非正規社員も入れると、男性の半分にしか満たない。また、妊娠・出産を機に6割の女性が仕事を辞めているのが現状である。(参照元:PRESIDENT Online)これは、育休制度が十分でないことや、保育施設が整っていないことが原因と考えられる。(参照元:内閣府

また、1910年に活動家の女性を煙たがる女性たちと同じように現代でも「女性による女性差別」が目撃される。マスメディアが「女性らしさ」を称賛し、女性差別的な表現を公に容認する世の中では(参照元:中央調査社)、女性同士が「社会的な理想の女性像」から外れる者を攻撃する。差別は人々に「当たり前」として内面化され、被差別者すら差別者に変える。
 
また選挙権はあるものの、日本の女性委員の割合は世界の平均22.8%を下回り、衆議院9.5%、参議院20.7%にしかすぎない。女性の議員が少なければ、当然女性に生きやすい社会への政策も整いにくい。事実、女性議員が多い北欧では、女性の社会進出や育児まわりの政策が充実している。日本での女性の政治への進出はまだまだ果たされていないということだ。(参照元:日テレNEWS24

“運命は自分の意思で変えられる”

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2017年現在、世界には女性に選挙権がない国が未だに存在する。サウジアラビアが制限つきで女性の投票権を2015年に認めたので、残る一国はバチカン市国。(参照元:FORTUNE)とはいっても、制限や、社会的風潮などで実質的に女性が政治に参加することが難しい国は多い。

日本には参政権がある。社会的傾向としても、「女なのに投票するなんて」などと発言する人は少数派であろう。しかし私たちには向上するべきところがまだまだある。当時のイギリスの女性たちのように、労働環境や男女の役割の社会的押し付けなど、現代社会の中で「当たり前」だと思っている不平等を改善できれば、より生きやすい社会ができることは言うまでもない。

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「運命は自分の意思で変えられる」

主人公のモードのこの言葉を胸に刻み、自分が知っている「常識」から解放されるため、日常の言動からでもいい、少しずつ変えていけることがあるのではないだろうか。私たちの運命は、自分の意思で変えていけるのだ。

予告編

※動画が見られない方はこちら

『未来を花束にして』

1月27日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー!

監督:サラ・ガヴロン

脚本:アビ・モーガン『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』

出演:キャリー・マリガン『華麗なるギャツビー』、ヘレナ・ボナム=カーター『アリス・イン・ワンダーランド』ベン・ウィショー『007 スペクター』、メリル・ストリープ『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』

2015年/イギリス/英語/1時間46分/シネマスコープ/カラー/日本語字幕:寺尾次郎

提供:KADOKAWA、ロングライド 配給:ロングライド パブリシティ:Lem(レム)

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※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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