“いじめ”が「言論の自由」に守られてしまう国オーストラリア #FreedomOfSpeech|「丼」じゃなくて「#」で読み解く、現代社会 #018

2017.3.23

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サンサンと照らす太陽に、無限と広がる透き通った海。コーヒーがおいしくて、近頃では若手のアーティストを次々と輩出し、芸術が盛んな国。実際に行ったことのない筆者のオーストラリアのイメージはそんな感じです。来年あたりはぜひ行きたい。

とはいっても、どんな国にもダークサイドはあるもの。本日はそんな太陽の国オーストラリアから始まった、人種差別問題に挑戦するハッシュタグ・アクティビズムを紹介したいと思います。

▶︎ハッシュタグ・アクティビズムについてはこちら

今週の火曜日(2017年3月21日)、2015年に就任したオーストラリアの保守派首相マルコム・ターンブル氏が人種差別を規制する「人種差別アクト1975(Racial Discrimination Act 1975)」の「18C項(Section 18C)」を改正する意を示しました。20年前に国の人種的マイノリティを守るために追加された18C項は「人種を理由とした、他人をおびえさせる言動、気分を害す言動、屈辱を与える言動、侮辱的な言動を認めない」という反人種差別的な内容でした。(参照元:The Conversation

長年、18C項が「言動の自由に反する」と主張してきたマルコム首相率いる右派の努力が実り、「他人をおびえさせる言動」は残したものの、今回この「気分を害す言動、屈辱を与える言動、侮辱的な言動」という一部を「ハラスメントと捉えられる言動」と一括し、人種差別に対する規制を緩ませる方向に進んでいます。

これに反して、多様性を急進的に促進する政治家たちは「ハラスメント」と一括してしまうことに対し現在、猛反対しています。(参照元:Mashable

オーストラリアの実情は?

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ベンジャミン・ロウ
Photography: Benjamin Law

そんな中、香港人の親を持つアジア系オーストラリア人作家、ベンジャミン・ロウがはじめたハッシュタグアクティビズムが「#FreedomOfSpeech(言論の自由)」。このハッシュタグムーブメントは右派の18C項が「言論の自由に反する」という意見に反対を示しました。

人種差別を受けた体験を#FreedomOfSpeechのハッシュタグと一緒にシェアしよう。僕から始めるよ。

10歳のとき、近所のプールで白人の男の子グループに頭を水中に押し付けられながら、僕がアジア人だということを笑われた。

先週、白人のオーストラリア人が登壇を終えた僕のところにきてこう言った。「私はずっとこの国に住んでるけど、あなたの方が英語上手だね」

このハッシュタグはあっという間に広がり、同じような体験をしたことがある人々がツイッター上で自分の体験や、もしくは目撃した人種差別のストーリーを共有しはじめました。

90年代:The Eastern Bulls(バスケットボールのチーム)でプレーヤーだった。黒人だからとチームメートにいじめられた。オーガナイザーに私は「そんなもんだよ」と説得された。

小学校の学芸会でWannabe(スパイス・ガールズのヒット曲)のパフォーマンスをすることになった。肌が黒いという理由でScary Spice(唯一の黒人メンバー)だったのを覚えてる。

10歳のときクラスメイトが「アボリジニ(オーストラリアの先住民)好きじゃない」といっていたけど、彼は理由は言えなかった。オーストラリアでは早い段階から(差別が)始まるんだな。

「言論の自由」で守られるいじめ

今回改正に進む上でキーワードとなった「言論の自由」。果たして人種差別的な発言は「言論の自由」で守られるべきなのでしょうか?

自己表現や自分の意見を主張する権利はすべての人が持ち、守られるべきだと思います。しかし、だからといって他人を誹謗中傷していいというわけではありません。本来、それは法律を必要としなくても道徳的に社会に根付いているべきもの。白人系以外のオーストラリア人が体験している差別は、意見や自己表現ではない。それは、いわば単なる「いじめ」です。法律ではいじめは裁かれないことが多いですが、みんながいじめはよくないとわかっているように、人種差別も許されるべきではないのです。

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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