「話題性」や「売れたときに得られる利益」は二の次。ロンドンの社会派ストリートブランドとは|GOOD WARDROBE #008

Text: Shiori Kirigaya

Photography: ©Hypepeace unless otherwise stated.

2018.2.11

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「ファッションはいつも人々の注目を集めている産業で、非常に大きなプラットフォームだと思ってる。だから、重要な問題に光を当てるのにファッションを使うのが素晴らしいアイデアだってことは明白だよ」。そう話していたのは、売り上げの半分以上を寄付し、社会問題の提起や解決を目指す取り組みを行っているロンドンのストリートブランドのデザイナーたちだった。

「服をただ着るのではなく、マニフェスト(宣言)として着よう」というモットーを持つBe inspired!の編集部がセレクトしたブランドの詰まった「人や環境、社会に優しく主張のあるWARDROBE(衣装箪笥)」を作り上げる連載『GOOD WARDROBE』。今回紹介するのは、政治的な問題の提起をしたり慈善団体やNGOの活動をサポートしたりしている、ロンドンのストリートブランド「Hypepeace(ハイプピース、平和を作るの意)」。同ブランドの創始者であるファッションデザイナーのJとグラフィックデザイナーのMに話を聞いた。

Photo by 撮影者
@nadineartois

ーHypepeaceはどんなブランド?

ロンドンを拠点に、政治的な問題の提起をしたり慈善団体やNGOの活動をサポートしたりしているストリートブランド。世界の社会的な不均衡にも光を当てようとしてて、年齢や人種、宗教、性的指向、ジェンダーなどによって抑圧されることのない世界を目指してる。

ーHypepeaceの商品は社会に何を訴えているの?

主に政治的な問題を提起してる。それが、特に考えてもらわなきゃいけない問題だと思っているから!それと同時に問題に対して戦っていたり、何か前進させようと活動していたりする団体への寄付もしているよ。今まで出したコレクションは下記のような感じ。

パレスチナコレクションでは、売り上げの6割が、若いパレスチナ人たちに学習などの機会を作る手伝いをしている、パレスチナ*1の都市ラマラが拠点のNGO Sharek Youth Forumに寄付されるんだ。今までに寄付したのは、若者向けのスポーツセンターの建設を助けるための6,000ポンド(約91万円、2018年2月8日現在)。

(*1)国として承認されていないパレスチナは、イスラエルの軍事支配下にあり人権が制限されている状態にあるといえる。その人口の過半数が15歳以下の子どもだという

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Pray pour les Syriens(シリア人たちへの祈り)」コレクションでは同じく売り上げの6割が、内戦で傷ついたシリア人たち*2に向けた援助を行っている慈善団体Syria Reliefへ、今までに2,000ポンド(約30万円、2018年2月8日現在)を寄付した。

(*2)激しい紛争が続くシリアでは難民として国外へ逃げる住民が後を絶たないが、彼らを受け入れる体制も不十分となっている

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最近は、Narcyっていうマルチメディアアーティストとコラボレーションした限定コレクション「Iraqafella × Hypepeace(イラク*3のフリースタイル × Hypepeace)」を出して、紛争に苦しめられた人たちを支援する慈善団体Pre-Emptive Loveに寄付する活動もしてた。

(*3)過激派組織ISISに地域社会を破壊されたイラクでは、十分な保健サービスを受けられない人たちが少なくない

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それから、政府や大きなNGOにはできなかった細やかな人道支援を行うNGO Help Refugeesと組んだ「IMMIGRANT(移民)」*4コレクションを発表したんだけど、パーカーの売り上げのうち10ポンド(約1,500円、2018年2月8日現在)をその団体に寄付するような仕組みにしてる。

(*4)シリア内戦が激化しヨーロッパに難民として渡るシリア人が流れ込み、ヨーロッパ諸国では難民の受け入れが大きな問題となり移民を排斥する動きも見られた

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ー環境問題とか労働者の権利については考えてるの?

そう、もう一つ重要なのが、Hypepeaceでは服を作るときの環境に対する影響も考慮に入れていること。だから素材はFair Wear Foundationに加盟している企業か、気候を変動させないという証印を持っていたりやオーガニック・テキスタイル世界基準を満たしていたりするような企業から調達してる。デザインのプリントや刺繍はイギリス国内で行っていて、フェアな労働環境を保つように管理してる。でも、まだオペレーションが完璧じゃないから、先は長いけどね。私たちの目指すゴールの一つは、リサイクルできるものを作ることなんだ。

ーどんなきっかけでHypepeaceを始めることになったの?

Mが「Palace」っていうブランドが使ってた“tri-ferg”と呼ばれる三角のロゴをパレスチナ(Palestine)って書かれたものに作り変えて公開したら、それを支持してくれる人たちが出てきた。そして、それに続くほかの問題にも光を当ててほしいというリクエストを受けて「シリア人たちへの祈り」をリリースしたんだ。

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そんな感じで最初はブランドを作ろうというつもりではなかったけど、自然とHypepeaceというブランドができあがった。Hypepeaceの根本にあるのは、私たちの関心であり、クリエイティビティ、政治的指向、嗜好、そして信念。Hypepeaceは世界や社会について話しているけど、そのどこかにはユーモアが潜んでるんだ。

ー社会の問題を解決するために、ファッションには何ができると思う?

ファッションはいつも人々の注目を集めている産業で、非常に大きなプラットフォームだと思ってる。だから、重要な問題に光を当てるのにファッションを使うのが素晴らしいアイデアだってことは明白だよ。ファッションはまた、自分のスタイルや興味を表現したり、信念を声に出したりするための手段として使われてきているしね。

ファッションだけで何かの宣言になるんだから、政治的なことを訴えるのにそれを使わない手はないって思った。地球規模で何かの問題を提起をしたり光を当てたら、それが会話の始まりになるんじゃないかな。そんな会話があちらこちらで行われたら、人々が問題を理解するようになって、やっと問題が改善に向かうと思う。

ーどこでHypepeaceの商品は買える?

オンラインショップで買って日本に配送することもできるけど、国外にある唯一の取り扱い店は日本にあって、渋谷にある「12XU」で取り扱ってもらってる。パレスチナ、シリア人たちへの祈りのコレクションと、移民コレクションのパーカーをちょうど補充したところ。

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最近、特にアメリカのファッショントレンドとして、「政治や社会の問題を訴えているようなデザイン」の商品が増えてきている。たとえば、マイノリティを排除する政策をとっているトランプ大統領に対するアンチで「Fuck Donald Trump(ドナルド・トランプくたばれ)」などと書かれているものがある。

それらのなかには、実際のところ問題を提起をしてはいるものの、どちらかといえば重視しているのは、「話題性」や「売れたときに得られる利益」だと思えてしまうのだ。社会や政治の問題を訴えているブランドの服を買うときも、その利益がどう使われているのかまでチェックすることが必要ではないだろうか。

Hypepeace

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12XU

(Hypepeaceの国内取扱店)

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※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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