ファンと会うことで奏でられ続けるUMIの音楽。新作EP「talkin to the wind』と『wherever u r feat V of BTS』

Photography: Saeka Shimada
Styling: Kaori Suzuki
Hair & Makeup: Katherine Jin
Text: Fumika Ogura
Edit: Jun Hirayama

2024.3.11

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昨年に初来日を果たし、単独ライブやさまざまなフェスに出演したシンガーソングライターのUMI。初来日のタイミングで、NEUT Magazineでもインタビューを実施し、UMIのこれまでの生い立ちや、音楽性、今後についてなどさまざまな話を聞いた
今回は今年の1月19日にリリースしたEP『talking to the wind』を引っ提げて、NEUT Magazineの5周年イベントと本EPのリリースパーティを笹塚ボウルにて共催
今回の滞在中にNEUT MagazineはUMIと渋谷パルコに訪れ、パルコがピックアップした3店舗(LOEWE、ポケモンセンターシブヤ、MARC JACOBS)を紹介する動画コンテンツの撮影とインタビューを決行。リリースしたばかりのEPや、年末にBTSのVとリリースした楽曲『wherever u r feat V of BTS』、そして楽曲制作に欠かせないファンの存在についてたっぷりと話してもらいました。

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ファンに直接会うことで、私の中にある新たなメロディが奏でられていく

ーまずは、EP『talking to the wind』のリリースおめでとうございます! 1月26日に笹塚ボウルで行われたNEUT magazineの5周年イベントでは、今回のリリースパーティも同時に開催しました。こうして実際にNEUT Magazineの読者や、ファンと会ってみてどうでしたか?

日本に来るたびにファンのみんなと一緒に思い出を重ねていけるのがすごくうれしいです。去年は「グリーンルームフェス」での初来日を機に、単独ライブ、「サマーソニック」にも出演させてもらって、ファンの方に会うたびに、「サマソニ行きました!」とか、「ライブ素晴らしかったよ〜」と、すてきな言葉をたくさんもらって。今回のリリースパーティも、次の来日のタイミングで、「リリースパーティ楽しかった」と、声が聞けたら幸せだなと思いました。あと、みんなすごく優しい人たちばかりでした。イベントが終わったあと、私と写真を一緒に撮影するときに、友達のグループじゃなくても、フラッシュを当ててくれたり、代わりに写真を撮ってくれたり。すごく気配りができて心の温かい人たちがたくさんいましたね。

ーファンと直接会うことは、UMIさんにとってどんな時間ですか?

一番ってくらい大事な時間です。私が音楽を作る理由は、まずは聴いてくれる人がいるからということが大きくて、私の曲があることで、聴いた人の心の拠り所になれたらいいなと思って制作しています。スタジオで音楽を作っているだけだと、私の楽曲が聴いてくれた人にきちんとリーチしているのかな?って、頭の中はクエスチョンだらけになるけど、実際にファンと会って、表情や反応を見ると、作った曲がファンにとってどういう存在なのかがわかるし、また音楽を作りたいって気持ちになるんです。音楽を作るためのプロセスって本当に大事で、ファンのみんなと楽しむ時間があるからこそ、音楽を制作しているんだなと思います。テキストでコメントをもらうのももちろんうれしいけど、直接顔を見て反応をもらうのが一番のパワーになっていますね。

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愛はどんな時間でも、どこにいても送り合えるもの

ー昨年末にリリースされたBTSのVとの楽曲『wherever u r feat V of BTS』は、とても心地よいメロディと二人の歌声が素敵でした。今回はどうしてコラボレーションすることになったのでしょうか?

去年の10月くらいにVが私の楽曲をタグ付けしてInstagramでアップしてくれて。これまでもSNSなどでシェアしてくれていることは知っていたんですが、タグ付けされたのはそれが初めてだったんです。そのとき、ちょうど母とハイキングをしているときで、「曲を一緒に作らないか誘ってみたら?」と、母から言われて、勇気を出してDMを送ってみました。その日はドキドキで夜まで連絡が来ているか見られなかったんですが、時間をおいてDMを開いたら、「ぜひ作りましょう!」と、返事がきていたんです。最初はとても緊張しましたが、Vと話していくうちに、改めて彼は音楽が好きで、音楽を作るのが大好きなひとりの人間なんだなと感じました。

ー楽曲のコンセプトや、制作過程などはどのように進めていきましたか?

制作は全てオンラインです。楽曲のビジュアライザーに落とし込んだように、Vとはメールや、ビデオ通話でやり取りをしました。もともとこの曲を作り始めたのは、去年の6月頃。家のガレージから昔の家族写真をいろいろと引っ張り出して、よく家族で思い出に浸っていたんですが、大好きなおばあちゃんの姿もたくさん写っていて、おばあちゃんのことを考える時間が増えました。そんなことを思いながらスタジオに入ったら、おばあちゃんのことを思った曲がなんとなく浮かびあがってきて、今回はそのときの曲がベースになっています。もともとはおばあちゃんに向けたものだったし、当時は半分くらいしか出来ていなくて、リリースをするかも分からなかったんですが、Vと色々話していくなかで、この曲が私たちにぴったりだなと思いました。

この曲で一番に込められているメッセージは、愛です。愛は時間や距離など関係なく、恋人や家族、友人や周りにいる人、自分が伝えたい人に送ることができるし、誰でも感じられる気持ちだというのを伝えたいなと思いました。たまに、日常でふと笑ってしまうときや、楽しくなるときってあると思うんですが、そういうときって、きっと誰かが自分へラブを送っているサインなのかなって思うんです。私はアメリカに居ますが、おばあちゃんにこうやって愛を送れるし、Vは兵役中だけど、この曲を通してファンへ愛を届けられるし、ファンの方も送れるんだよって。制作する前はVが兵役に行くことを知らなかったんですが、このタイミングでこういった楽曲をリリース出来たのは、縁だったのかなと思います。10月くらいから一緒に作り始めて、12月末のVの誕生日にリリースすることを決めてからは、お互い急ピッチで進めていきました。短いスパンでしたが、たくさんの愛が詰まっている曲です。

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風との対話で、どんな自分も受け入れられると願いを込めて

ー新しいEP『talking to the wind』について教えてください。「風と対話する」というタイトルがUMIさんらしいなと思いました。

2023年は世界的にも社会情勢や、いろいろなことが変わっていく転換期だった気がしていて、みんな何かしらで頭のなかがごちゃごちゃした瞬間が多かったのかな思っています。私にとっても、2023年はレーベルやマネジメントが変わったり、引っ越しがあったり。大きいトピックがいくつかあって、すごく変化のある一年だったので、いつも以上に自分の頭や気持ちを整理する時間が必要でした。そんなとき、外に出て風を浴びると、少しずつ頭がクリアになって、自分のなかで抱えていたものが解きほぐされていく感覚になったんです。この一年は風に身を任せる時間にすごく救われたので、風からもらったピースな気持ちや、エネルギーを音楽に変えたいなと思って、このタイトルをつけました。このEPを聴くだけで、外に行かなくても、風が吹いていなくても、いつどこで聴いてもクリアな気持ちになれますようにという願いを込めています。

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ー収録されている楽曲についてそれぞれ教えてもらえたらと思います。まずは、一曲目の『why dont we go』のインスピレーション源になったものを聞かせてもらえますか?

この曲の『why dont we go』という言葉は、「考えすぎないで」というメッセージが込められています。私がこの言葉を聞いて思い出すのは、アドベンチャー。例えば、知らない人とデートをすることや、週末の夜、友達とAirbnbを予約してロードトリップへ行くなど、スケジュールで予定してなかった突然のお出かけをイメージして作りました。そういう偶然訪れた時間って、いつもより少しだけ刺激的でワクワクしませんか? その気持ちを楽曲でシェアできたらなと思ったんです。ビジュアライザーも、そういった時間を何度も一緒に過ごしてきた私の友人を呼んで、自由にダンスしてもらいました。

ー『happy im』は、パートナーであるヴェロニカさんと過ごす日常の光景や、旅での風景がミュージックビデオに落とし込まれていて素敵でした。観ているだけで幸せな気持ちになる映像ですよね。

ビデオはフィルムで撮影しているんですが、そのままの私たちを見せたくて、このようなムードに仕上がりました。この曲を作ったとき、自分のリレーションシップについて考えすぎてしまう時期で、いい状態なのに、逃げたいと思っていたし、なにか悪いことがありそうだと自分で自分に問題を作って、周りの人も自身のことも傷つけてしまっていたんです。だから、この曲を書きながら思っていたのは、「あまり考えすぎずにいることを大切にしよう」ということ。何十年先のことを考えても、どうなるかなんて誰にもわからないし、今がよければ問題ないと自分に伝えたかったから書きました。私もこの曲を歌うたびに「今がよければ大丈夫だよ」と、自分に言い聞かせています。

ー『not necessary』という曲は、日本語の「別にいいよ」がインスピレーションだったと聞きました。

日本でもそうだと思いますが、アメリカでも、人に対して「別にいいよ」って答えることがあまりポジティブには捉えられていません。けど、私はそんなことはないと思っているんです。例えば、まったく知らない人だったら断ることも、好きな人や友人であれば、「別にいいよ」って言うこともある。それが言葉として面白いなと思っています。『why dont we go』の楽曲に繋がるんですが、突然のお出かけや約束も「別にいいよ」という気持ちの広さがあるからこそだと思っていて、「別にいいよ」の一言で、自分では考えてなかった予定や、出来事につながって、新しい経験になる可能性があるかもしれないなって。だから私はあえて「別にいいよ」という言葉を、この曲を聴いている人に、もっと言ってほしいなと思っています。

ちなみに、パートナーのベロちゃんがビートを制作したんですが、フレーズを聴いたときに、これはフリースタイルで作りたいなと思いました。なので、言葉をつないでいくために、ベロちゃんに「この音を作ったとき、なにか思ったことはある?」って聞いたら、「うん、別に〜」って(笑)。始まりはそこからです。

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ー最後に収録された『SHOW ME OUT』は、ダンスナンバーで、とてもかっこよかったです。

もともといつかダンスで表現したいなと思っていたので、今回こうして披露できてうれしいです。今年はプライベートでも友達とよく集まって踊ったりしていたし、私のファンの人たちは、私の曲を使ってSNSでダンス動画をアップしてくれている人たちがすごく多いんです。その姿も日々のインスピレーションにさせてもらっていたから、ようやく形にできてよかったなと思います。ダンスの振りも自分で作りました。みんなにはこの曲でたくさん楽しんでもらいたいです。

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UMI

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日米をルーツに持ち、R&B、ソウル、ヒップホップ等のさまざまな要素を取り入れ“ヒーリング・ネオソウル”として人々の心に寄り添うような楽曲をリリースしているシンガーソングライター・UMI。2018年にデビューし、初のEP『Interlude』をリリース。その後2019年には2nd EPの『Love Language』、2020年にはメジャーデビューEP『Introspection』、そして2022年5月にはデビューアルバム『Forest In The City』をリリースしている。UMIがリリースする作品には自身が日頃から感じている、「アメリカ生まれ且つアメリカ人でありながら、もう一つのルーツである日本を思いやる気持ち」、「日本人であるにも関わらず日本人として見てもらえない」など自身の複雑な経験を楽曲を通して表現しており、現在若い世代から支持を得ているアーティストの一人だ。

 

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