“超ふざけるスタイル”を貫くxiangyuが語る、1stアルバム『遠慮のかたまり』について

Photo: Dream Aya
Text: Takao OKB
Edit: Jun Hirayama

2025.6.28

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1stアルバム『遠慮のかたまり』では、食卓の一皿やちょっとした遠慮など、誰もが見過ごしがちな日常の断片を、xiangyuがユニークな視点で掘り下げている。その創作の源にあるのは、鋭い観察力とユーモア、そして“遊び心”を忘れない姿勢だ。7月2日にリリースライブを控える今、本インタビューでは、アルバム制作の裏側や日常からインスピレーションを得るプロセス、そして彼女が“今を生きる私たち”に届けたいメッセージを聞いた。

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万人向けじゃなくても、自分を信じて作りきった一枚

NEUT:1stアルバム『遠慮のかたまり』をリリースして約1ヶ月半ほど経ちましたが、今の率直な気持ちはいかがですか?

xiangyu:SNSでDMやコメントを頂いたり、久しぶりに会った友達に「アルバム聴いてるよ」とか「アルバム良いね」とか、そういう声が届いていて、ちょっとずつですが着実にいろんな人に聴いてもらえている実感があります。そうした声がすごく嬉しくて、自信にもつながっています。

NEUT:1stアルバムをリリースしてから、これまでに届いた反響や印象的だった声はありますか?

xiangyu:“聴けばいつもの何でもない景色がオモシロに変わる。xiangyuの楽曲は自身の好奇心とユニークな言語感覚がキレのあるトラックに結びつき、エッジィで人懐こいというめったに聞かない領域にたどり着く”というレビューを、ある雑誌で書いてくれたライターの方がいたんです。自分なりの視点で世の中を見つめ、「今、私はこういうことがやりたいんです」という思いを込めた作品だったので、私の考え方やスタイルをわかってくれる人がいてくれたことが嬉しかったです。

NEUT:初のアルバム制作だったと思いますが、ご自身の中で変化や成長を感じたことはありますか?

xiangyu:今回のアルバムを通して、自分が面白い・楽しいなって感じることやものが、すごくニッチであるというか、万人に伝わりにくいことなのかもしれないなって思いました。それでも、アルバムを聴いてくれた方からの声がたくさん届いて、やっぱり自分を信じて突き詰めることが、すごく重要なことだって改めて思うことができました。

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NEUT:普段の生活の中で、“これは曲にしなきゃ”と思う瞬間にはどんな気づきがありますか? 実際に楽曲に落とし込むまでのプロセスについても教えてください。

xiangyu:作品のネタ作りを意識して生活しているわけではないですが、自分が面白いとか楽しいと思える方向を常に選んで進むようにしています。その先に、今回のアルバムのアートワークを担当してくれた現代美術家の光岡幸一さんとの出会いがあったり、彼との出会いによって、「遠慮のかたまり」という面白いテーマが落ちていたんです。なので、自分が常に面白いと思える道を選べるように、その匂いを嗅ぎ取れる嗅覚を磨き続けています。

NEUT:常に面白いと思う道の先に落ちていたxiangyuさんのツボをくすぐる”何か”が楽曲になるわけですね。

xiangyu:そうですね。私、そこに落ちていた面白い出来事や会話・光景を日記みたいに書き溜めているんです。それこそリリックや曲のテーマになるなんて考えているわけではなく、癖のような感じで。今回のアルバムも、光岡幸一さんとの会話で知った「遠慮のかたまり」という言葉をテーマにアルバムを作ろうって構想はありましたが、本当に全てが食べ物の曲になるとは思っていなかったです(笑)。やっぱり私は、「NO FOOD NO LIFE」なんだなって思いましたね。

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日常の些細な瞬間に思い出してしまう、xiangyuの音楽

NEUT:本アルバムについてxiangyuさんは「全力でふざけ倒したおちゃら系フードアルバム」と公言していますが、xiangyuさんが「一番好きな食べ物」は何ですか?

xiangyu:今は、暑いからタイ料理。季節や気温によって、好きな食べ物って変わりますよね。このアルバムを作っている時はポテトでした。ケチャップ&ポテト。

NEUT:「遠慮のかたまり」の光景が実際に食卓にあったら、xiangyuさんは食べますか? それとも、やっぱり遠慮しちゃいますか?

xiangyu:一番ずるい答えかもしれないですが、私はそこにいるメンバーによります。今、インタビューをしてくれている編集さん、ライターさんとのご飯会であれば、私は食べたい食べ物だったら食べちゃうと思います。すみません(笑)。でも、先輩だけの会食だったら、「最後、食べてください!!」って言っちゃうと思いますね。って言っちゃうと思いますね。ちなみに光岡さんは、このアルバムが完成してから、ご飯が残っていたら、もう食べざるを得ないと言ってました(笑)。

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NEUT:xiangyuさんと言えば、落とし物がテーマの「OTO-SHIMONO」のEPをリリースしてから、SNSで落とし物の写真にメンションされるという、独自のコミュニケーションがありますよね。「遠慮のかたまり」でもそういうSNS上のコミュニケーションってありますか?

xiangyu:SNSでのメンションはもちろんですが、友達や先輩とご飯に行った時にも、1つだけ食べ物が残っていると「ほら、シャンちゃん!! 遠慮のかたまりだよ!!」って言われることがすごく増えましたね。「遠慮のかたまり」という光景って、無意識の産物であるはずなのに、みんながそこに対する意識を持ちはじめたことがすごく面白いんです。

NEUT:確かに、自分も写真を撮るようになっている気がします(笑)。

xiangyu:今回の「遠慮のかたまり」もそうですが、落とし物や『ミラノサンドA』とか、街中にある何かの写真を撮って、 メンションされるというSNSでのコミュニケーションがなぜか多いです(笑)。

NEUT:意識はしていないのかもしれないですが、きっとそういう日常の光景の楽曲が多いからですよね(笑)。

xiangyu:あ、そうですね。そういうことですよね。なぜかめっちゃメンションされるなって思っていました(笑)。でも私は、音楽を通してたくさんの人たちとコミュニケーションを取りたいなって思って活動しているので、すごく嬉しいんです。やりたいことが実現できているというか。

NEUT:これって、すごいことですよね。食べ物を食べている時や、道を歩いている時など、日常生活の中でxiangyuさんを思い出す瞬間がたくさんあるってことですよね。

xiangyu:そうですね。日常の些細な瞬間に、xiangyuのことを思い出してくれるってすごく嬉しい現象ですね。あちらこちらにxiangyuがいて、それをSNSを通してコミュニケーションを取れるってすごく独特ですが、ありがたいです(笑)。

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共鳴したアーティスト・NAZEとのコラボが実現

NEUT:7月2日に開催される『遠慮のかたまり』のリリースライブでは、どんな空間や雰囲気をイメージしていますか?来場者にどんな時間を届けたいですか?

xiangyu:まずはこの日はDJ、ギターのGimgigamさんと、パーカッション演奏者の宮坂遼太郎さんの3人編成なので、リリースした音源とは全く違ったライブアレンジになると思います。なのでそのパフォーマンスを楽しみにしていてもらいたいです。あとは新しい試みとして、現代アーティストのNAZEさんのカスタムブースがあるんです。

NEUT:NAZEさんのカスタムブースでは何ができるんですか?

xiangyu:下記の投稿に写っているバッグもNAZEさんのカスタムなんですが、自分の持ってきた洋服や小物に絵を描いてもらったり、シルクスクリーンでいろんなモチーフを刷ってもらうことができるんです。その日は、私の新しいライブグッズのTシャツの販売もあるので、そのTシャツをゲットしてカスタムするのもオススメです。私も、NAZEさんにカスタムしてもらった衣装を着てライブをする予定です。

6月21日に開催されたPOPUPでNAZEがカスタムしたxiangyuのバッグ

NEUT:なぜ、NAZEさんだったんですか?

xiangyu:私は、昔から街中に落ちているゴミを拾って作品を作ったり、そこからインスピレーションを受けて楽曲が完成したりするのですが、NAZEさんもそういう一見ゴミに見えたり、一見必要なさそうなものを、ダイヤの原石のように捉えて、自分の手を加えて、作品に昇華している人なんです。表現方法は違いますが、そこにすごく共感していて、そんなNAZEさんの作品やスタイルがすごく好きで、いつか一緒に何かやりたいなって思っていたんです。

そんな中先日、私の突発的な発想でリヤカーを作って、そのリヤカーを引っ張って中野から三軒茶屋まで歩いてリリースライブのチケット付CDを販売する企画を行ったんです。そのゴールがNAZEさんが手掛けてる三軒茶屋の『NA.N.DE』で、そこでその夜にポップアップも開催したんです。そこでNAZEさんがカスタムブースを開いてくれて、それが大好評だったこともあり、7月2日にも出店してもらえることになりました。

6月21日に行われたリヤカー企画の様子

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ずっとふざけてる人が、ひとりくらいいてもいい

NEUT:最後に、そんな突発的に勢いで様々なことを、“遊び心”を持って実現し続けるxiangyuさんから、同じ時代を生きる人々へ届けたい言葉があれば、ぜひお願いします。

xiangyu:私は、世の中のいろんなことに意味がなくてもいいなって思っているんです。これが面白いとか、これが好きとか、自分の心が動くことに説明ができなくても、自分の小さな感情の発火するポイントをちゃんとキャッチして、自分を飽きさせないように、生活したいなって思っています。去年より今年の方が、それを強く思っていて。

NEUT:去年より強く思うキッカケはあったんですか?

xiangyu:世の中で1人ぐらいずっと超ふざけている人がいても良いのかなって思ったんです。くだらないなぁ、しょうもないなぁって思うことに、いつまでも笑い転げていてもいいよなぁと、このアルバムを作りながら強く思うようになりました。

NEUT:そういう自分自身のために心掛けていることで、一緒に笑ってくれる人が増えたらいいですね。

xiangyu:はい。なので7月2日のライブも来てくれた人に、楽しんでもらえるようなパフォーマンス・空間を作れるように頑張りたいです。自分が全力で遊んだアルバムなので、聴いてくれた人が、何かチャレンジしようと思えたり、前向きな気持ちになったりしたらこんな幸せなことはないです。

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「遠慮のかたまり」リリースパーティー『ore!』

Website

日時:2025年7月2日 (水)
場所:表参道WALL&WALL
開場:18:30 / 開演 19:00
出演者:xiangyu(DJ/Gt: Gimgigam Per: 宮坂遼太郎)、TAMTAM
【チケット情報】
前売入場券:¥4,000 +1drink ¥700
<販売期間:4/25 20:00~7/1 23:59>
当日券:¥4,600+1Drink¥700

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xiangyu / シャンユー

Instagram / Website

2018年9月からライブ活動開始。 日本の女性ソロアーティスト。読み方はシャンユー 。 名前は本名が由来となっている。 2023年11月1日Gimgigamをサウンドプロデュースに迎えAmapiano、Gqomなどを 取り入れたEP「OTO-SHIMONO」をリリース。 また、音楽のみならずxiangyuとファッションブランドPERMINUTEの デザイナー半澤慶樹で主宰する川のごみから衣装を創作するプロジェクト“RIVERSIDE STORY”を立ち上げ、渋谷川編と題し2022年9月に初の個展を恵比寿KATAにて開催。 2022年7月に上映の映画『ほとぼりメルトサウンズ』では、xiangyu自身が主演・主題 歌を担当した。また、同年11月には初の書籍「ときどき寿」を小学館から発売。2024年11月13日に公開した釧路市アイヌ文化を題材にした短編映画『urar suye』に主人公役にて出演、日本国際観光映像祭2025にて旅ムービー部門最優秀賞を受賞。2025年4月には七尾旅人、Kuro(TAMTAM)を迎えたアルバム「遠慮のかたまり」をリリース。

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