「企業が少しでも生活者に対してできること」を考える、世界のアーティストとのコラボレーションプロジェクト For Earth For Us

Text: MAKOTO KIKUCHI

Photography: ANNE YANO unless otherwise stated.

2021.6.8

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 「For Earth For Us」は、西麻布にあるCALM & PUNK GALLERYの運営などを手掛けるガスアズインターフェイス株式会社が立ち上げたプロジェクトだ。「クリエイティブの力でより良い社会を築き上げる」という考えを軸に、さまざまな社会問題に取り組むアーティストと企業の架け橋となるような活動を行なっている。その第一弾として今年3月、サステナブルな衣服の生産技術を持つ日本環境設計が運営するBRING™とのコラボレーションTシャツとエコバッグが発表された。

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 環境問題の関心が高い国外のアーティスト3名が参加したこの企画。このプロジェクトの裏にある思いを探るべく、ガスアズインターフェイス取締役の津田豪(つだ ごう)と企画を担当するサリス玲耶(さりす れいや)にインタビューを行なった。

アート×社会問題×企業

 「クリエイターの創造性と企業や社会のニーズを繋ぐ」をテーマに、国内外のクリエイターと企業を繋げた商品開発、販促、ブランディングの支援のほか国内外のアーティストを独自の視座で発掘し、 紹介する空間であるCALM & PUNK GALLERYの運営を行うガスアズインターフェイス。他にも、今年で発行から25周年を迎える現代の最先端のアートを紹介する媒体としてファンの支持を集める『GASBOOK』の出版などさまざまな取り組みを行なってきた。
 現在、取締役を務める津田が「ソーシャルグッド」を意識するようになったのは2019年末頃。自身のメンタルヘルスを崩し、生きている感覚も分からなくなる日々を過ごしたのがきっかけだった。そのときに「自分の存在を感じるために、何か人のためになることがしたい」と強く感じたと津田は言う。そして仕事に復帰してすぐに取り組んだのが、コロナ禍での企業に向けての人を元気づけるような作品を描いている作家とのアートプロジェクトの提案だった。そこでいくつかの仕事を通して、直接的に商品を売る支援ではなく、世の中のために少しでもなることで、生活者やクライアント、作家に喜んでもらえ、さらにそれがビジネスになるという、これまでにない体験を得る。

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津田豪

 ここ数年でSNSを中心にさまざまな人権問題や環境問題といった社会的事象が多く取りあげられるようになり、アクティビズムに興味を持つ若者が圧倒的に増えた。今回新たに立ち上がったプロジェクト「For Earth For Us(以下、FEFU)」の名付け親であるサリスもまた、学生時代から社会問題に興味を持ち、自らのSNSで情報を発信するなどしていた一人だ。大学卒業後の就職先として、アクティビズムやソーシャルジャスティスに関わっていけるような居場所を探していたサリスは、ガスアズインターフェイスの「アートで人を元気づける」という姿勢に興味を持ち入社を決めた。

サリス:積極的に社会問題に取り組む企業もあれば、まだビギナーレベルで表面的だけど少しずつソーシャルグッドを取り入れている企業もある。社会問題に対する知識や興味を強く持った人たちを必要としている企業が増えてきていると思うんです。そういう強みを持ったクリエイターが今まで表現したいと思っていたことを、純粋な形で実現させることができたら理想的だなと思いました。

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サリス玲耶

環境問題をユーモアとノスタルジアを交えて伝える

 FEFUの第一弾となるコラボアイテムのデザインには、メルボルンを拠点に活動するイラストレーターのザック・フェイ、ロンドン在住のアーティストであるリリー・コング、Instagramをプラットフォームに環境問題・ソーシャルジャスティスについて発信する「クライメイト・クラブ」のアダプトが参加した。環境問題への意識が高く、作品を通して見る者に環境保護の大切さを真剣に伝える彼らだが、アートそのものは思わずクスッと笑ってしまうような、ポップで可愛らしいスタイルが特徴だ。

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ザック・フェイ

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リリー・コング

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アダプト

 

 「これまで環境問題に興味がそこまでなかった人も入ってこれるような入り口を用意したかった」と津田は語る。一方サリスは、今回この3人のアーティストを選出した理由の一つとして、アクセシビリティ(近づきやすさやアクセスのしやすさ)を挙げる。

サリス:環境問題はヘビーなトピックだけど、毎日取り組まなきゃいけない日常生活に直接関わる問題でもある。だからこそユーモアやノスタルジアを交えてちょっとワントーン落としたテンションで伝えているもののほうが、見る人にスッと入っていきやすいのかなと。もちろん時々ヘビーに考えなきゃいけないときもあるのですが、最初のステップとしてはそのくらいのほうが入り込みやすいのではないでしょうか。とにかくいろんな人を巻き込んじゃいたいんです。気付いたら『あ、私めちゃくちゃエコになってるじゃない』みたいな(笑)

 GASBOOKプロジェクトでは、書籍や展覧会のキュレーションなどメディアを横断して気鋭のアーティストの作品を紹介してきた。Tシャツも重要なメディアとして捉えて展開してきたので自然な流れだったと津田は言う。

津田:Tシャツには着る人の主張を伝える役割がありますよね。ロック音楽が好きな人がロックバンドのTシャツを着ていたり、サンリオ好きの人がキティちゃんのTシャツを着ていたり。自分が信じているものや好きなものを反映しやすいんです。今回のTシャツを着ることがアクションに起こすキッカケになることもあるかもしれないし、そのTシャツを見た人がそれに反応して少しでも環境問題に興味を持つようになれば嬉しいです。

 今回のプロジェクトに賛同した第1弾のコラボレーションパートナーである、衣料やプラスチックのリサイクル開発を行なう日本環境設計が運営するブランドBRING™は、「あらゆるものを循環させる」というコンセプトのもと、古着を回収、ケミカルリサイクルし、新たな製品へと生まれ変わらせるという技術でサステナブルな服作りをしている。年間9200万トンという膨大な量の衣服が廃棄されているという現状に目を向け、「衣服を循環させる」ことを可能にする取り組みだ。
 ファッション業界は現在、深刻な環境汚染の問題に直面している。そのことに意識を向ける消費者は少なくなく、欧米ではファストファッションブランドが衰退し、自由に古着を売買できるフリマアプリがZ世代やミレニアルズを中心に大人気だ。サリスもインタビューのなかで「廃材を再利用することは今後のファッション産業のなかでスタンダードになるべき」だと話していた。

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ソーシャルグッドとは何かを一人一人が考える

 

 「サステナビリティ」が声高に叫ばれる一方で、環境に配慮していると見せかけて実際はそうではない、メーカーやブランドの欺瞞、いわゆる「グリーンウォッシング」が問題となっている。そうした企業に加担しないため、FEFUが大切にしているのが「透明性」だという。

サリス:サステナブルなメッセージを表面的に打ち出して商品を売ろうとしたり、顧客を増やそうとするのがグリーンウォッシングと呼ばれるもの。それを避けるためには、正直な表現や伝え方が大事だと思っています。『私達はこういうことをやっていて、今後こういうことをしていきたい』と包み隠さず言える企業と、社会をより良くしたいという強い思いを持った作家さんを繋げていきたい。それはもちろんステップバイステップで、時間がかかる作業だけれど、夢ではないと思うんですよね。

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 実際、FEFUの活動はすでに商品開発の枠を超えている。最近ではFEFU監修のもとサステナビリティを意識した他企業のプロジェクトにメインビジュアルを制作するなど、プロジェクト自体が自然と広がりをみせてきているのだと言う。
 現在FEFUを運営するのは津田とサリスの他、プロジェクトに賛同する他の社員たちだ。「会社自体は小さい組織なので、手一杯の人がいれば自ずと助け合っていくという構造になっています」と津田は言い、言葉を続ける。

津田:「ちょっと面白いのが最近FEFUっていうのが、世の中を良くしようとすることの総称みたいに社内で使われるようになっていて。この前も会社でプラスチックの分別ができていないときに『これFEFUじゃないよね』みたいなやりとりがチャットでありました(笑)。このプロジェクトの一員でいるってこういうことだよね、とソーシャルグッドとは何かを一人一人が考えるように自然となってきたんです。その輪がどんどん広がっていけば嬉しいですね」

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For Earth For Us by ガスアズインターフェイス

ガスアズインターフェイスは世界中のクリエイターの創造性と企業や社会のニーズが出会い、これまでカタチになっていなかったアイディアや想いをクリエイティブの力で現実にするプラットフォームです。そこから創り出された新しい価値や枠組みから、新たな表現の場や創造性溢れる商品やサービスを生み出し、生活を豊かにしていきたいと考えています。あなたのビジョンがカタチになるプラットフォーム、そういった場所を目指しています。
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