「LGBTとか、同性婚だけじゃない」。18歳の彼女がストレートの人にこそ自分の“性”を考えてほしいと思うわけ|Lost in Sexuality vol.1

Text: SHIORI KIRIGAYA

Photography: Ahida Agirre unless otherwise stated.

Special thanks: Waku Fukui

2019.4.23

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Lost in Sexuality

4月の特集は、「Lost in Sexuality」。

「セクシュアリティにルールはない。迷ってもいいし、変わってもいいし、何か一つに決めなくていい」。

そんなことを伝えるため、NEUTはセクシュアリティがわからなくなった人や、それが変化することのある人、セクシュアリティのカテゴリーに対して疑問を抱く人のストーリーを届けます。

▶︎プロローグ

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「恋愛の対象にするなら男性だと思うけれど、恋愛についても全然興味が湧かないし、『かっこいいと思う人は?』って聞かれても“恋愛的な視点”でってなると答えられない。もう一度考えてみたけど、レズビアンでもないし、クエスチョニングってわけでもないな」。

今回取材した現在18歳のTaeは、以前そんなことを話していた。自分のセクシュアリティ(どんな性別の相手を恋愛や性の対象にするか)を深く問い直してみたなら、多くの人が何らかの壁に直面するのかもしれない。

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Tae

“女”という性別ではなく、個人としてみられたい

Taeは先月高校を卒業したばかりで、今は昨年から始めた自身の音楽イベント「AT HEAVEN」のオーガナイズや、友人とのアート作品の制作などの活動に勤しんでいる。そして幼い頃からファッションが好きな彼女。自身のファッションアイコンは男性であったことが多く、雑誌を通して知ったスケーターファッションに憧れたこともあった。だが男性ものであるか女性ものであるかを強く意識することもなく、あくまでも自分に似合うものをという基準で着る服を選ぶ。服装に限らずユニセックスあるいはジェンダーニュートラルな生き方やスタイルが好きな彼女の姿勢は、セクシュアリティに対しても同様だった。

セクシュアリティって恋愛とか性の対象で決まるけど、私はそれがはっきり言えないと思ったとき、服でいうとメンズとかレディースとかじゃなくてユニセックスとかそんな感じがいいって考えたんですよ。

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そんな彼女は過去に男性と交際したことがあったが、その後何かのきっかけがあったわけでもなく誰かに恋愛感情を抱くことがなくなっていた。それは高校に入学してから、学校が自由で充実していたからかもしれないし、自分自身が若くて経験が浅いからかもしれないとも考えた。趣味を通して知り合った世界の人には歳上が多くて、恋愛対象だと思いづらいからというのもある。忙しいから、もしくは好きなものに対する熱量のせいとも考えたが、いくら暇なときであっても恋愛的に誰かに惹かれたり恋愛をしたいという気持ちになったりしなかった。かといって家族を持ちたいという思いはあるし、人が嫌いかといえばそうではなく、むしろ「人に興味しかない」というほど。

そこに「男と女」という構造があって、女っていう対象としてみられることにすごく違和感がある感じです。よくある恋愛ドラマにもときめかないし。

個性のある自分個人としてではなく「女性」というくくりでみられること、また“女の子っぽさ”を求められることに対して彼女は拒否反応を示すという。社会的に未だ支配的な男女観への疑問と、マスに向けて作られた「恋愛的なもの」に共感ができないということが、そうさせている側面もあるだろう。

他人に恋愛感情を抱かない「アロマンティック」という、恋愛的な指向が近頃知られてきている。どんなセクシュアリティかにかかわらず、恋愛感情を抱かないことをさすものだ。彼女は恋愛や性の対象とするなら男性というため、ストレートであり少なくとも今は恋愛感情を抱かないのだと考えることもできる。

「LGBT」だけの問題ではないと思う

彼女の通っていた高校では、セクシュアリティについて考える授業があった。それにはもちろん意味があったが、極端に「LGBT」のようなカテゴリーやニュースでもよく取り上げられる同性婚に焦点が当てられていたことには疑問を抱いた。それだけがセクシュアリティの問題ではない、と彼女は考えたからだ。生徒が関心を持った社会問題を調べてレポートにまとめてプレゼンテーションをする授業でも、同様のトピックについて発表する人が多かったという。

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セクシュアリティってLGBT、LGBTっていうけど、それだけじゃなくてストレートの人にも自分の持っている性っていうのがどういうものか、ナチュラルに見直してみてほしいって思っていて。

「他者について知ったり勉強したりするのも重要だし、すごくいいと思うのだけど」と前置きしながらも、性を「LGBT」というカテゴリーに入る人たちだけの問題だというようなとらえ方をするのは危険だとTaeは話していた。それも、たとえば発表していたクラスメイトらが当事者の主張を知ることなく、憶測や自分の意見だけで話してるように思えたことがあったからだ。セクシュアリティの多様性を伝えるうえで、ストレートと一口に言っても多様であることを考えるきっかけを作り、問題を自分のこととしてみる視点を養うことは、今後セクシュアリティに関する授業を行うにあたって必要だろう。

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さらにセクシュアリティの問題に限らないが、それぞれの個人がマジョリティとマイノリティの要素を合わせ持っていることが少なくないと意識すべきだと彼女は話す。

どっちの立場にもなり得るということを自覚するのってめっちゃ難しいけど、そう考えられる人が増えていってほしい。そうできればみんなもっと優しくなれて絶対“差別の言葉”とか生まれないって思う。

カテゴリーに対する戸惑い

セクシュアリティをカテゴライズすることは、特定のセクシュアリティが存在することを社会に認識させるうえで大きな意味を持つ。カテゴリーの存在を知ることで属するところがあることや、自分と同じような人がいるとわかることで安心できる場合も大いにあるだろう。しかしながら、それが存在していることによる混乱も同時にあると彼女は指摘する。

セクシュアリティを深く考えることで自分も迷ったし、そこでカテゴリーに当てはめないといけないって言われるとちょっと戸惑う感じもあって。私はわりとカテゴリーよりも、個としてものを考えることが多いですね。

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最近声高に「LGBT」を取り上げている大人たちと比べたら、2000年代に生まれ、ジェンダーやセクシュアリティの授業が取り入れられてきた自身の世代は、柔らかいものの見方ができているような感覚があるとTaeは言う。

特定のカテゴリーに当てはめない、あるいは迷っている状態をさす「クエスチョニング」というカテゴリーが知られてきている。また誰もが何らかのセクシュアリティのカテゴリーをアイデンティティとして持ち合わせているわけではなく、そもそもカテゴリーに表れるような傾向がある程度あっても、その度合いは人によって差があるということも認知され始めている。そのようなセクシュアリティへの理解がまず十分に得られたなら、Taeが話していたような、大分したカテゴリーではなく個人の性質の違いとしてそれがみられるようになっていくのかもしれない。

私はどれに当てはまるのかなって思ったけど、別にあてはまらなくたっていいし、わかんないならわかんないでもいいかって。そこを決める必要はないって思うけど、もし書くならいろいろ考えてストレートなのかなってくらい。

Tae

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2000年生まれ
高校3年の夏に下北沢garageにて音楽イベント《AT HEAVEN AT GARAGE》を自主企画で開催。
イベント主催の他、フィルム写真や陶芸などの作品制作も行う。
今年の夏 6月29日に2度目の自主企画《AT HEAVEN AT GARAGE 2》を開催予定。

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AT HEAVEN AT GARAGE 2

Website

act
the hatch/オワリズム弁慶/RIKI HIDAKA/and more…

open/start未定
前売¥2500/当日¥3000(D代別¥500)

info
GARAGE:MAP
東京都世田谷区北沢3-31-15 B1F
03-5454-7277(15:00~22:00)
info@garage.or.jp

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