「頭の良い人」は、億万長者になれない。

2015.7.18

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「良い会社」と「良い給料」と「良い人生」。

そんな「成功」を手に入れるために必須だと思われていた「頭の良さ」に関する、衝撃の真実をご存知だろうか?実は今、「“頭の良い人”ほど、儲からなくなり始めている」そんな事実があるようなのだ。

アインシュタインはかつて、こんな名言を残している。「『頭の良い人』は、問題に直面してもそれを解決することができる。『賢明な人』は、問題に直面すること自体を未然に防ぐことができる。」(A clever person solves a problem. A wise person avoids it.)

ここでいう「賢明(wise)」とは、つまり「分別のある」こと。これこそが今、「儲けるため」の新しい方法になっているようなのだ。

買う「社会貢献」

「あなたが水1Lを購入すると、清潔で安全な水10Lが途上国に寄付される」そんな「コンビニで買える社会貢献」で話題になった、ミネラルウォーターブランド・ボルヴィックの「1L for 10L(1リッター・フォー・10リッター)」キャンペーン。ユニセフとのコラボレーションで実現したこのプログラムは、日常を生きるだけで精一杯。自分の生活に必死すぎて、遠く離れた他人の幸せについて考える余裕のない薄情な私たちに「選ぶだけでカンタンにできる社会貢献」に参加するキッカケを与えてくれた。

今このような「企業のビジョン」と「NPOやNGO団体」を繋げることで、企業のイメージアップや販売促進を図りつつも、社会貢献を行うというマーケティング手法。「コーズマーケティング」が、世界的な広がりを見せつつある。

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世界で最も「コーズマーケティング」に成功している企業の例としては、アメリカの『TOMS Shoes(トムス・シューズ)』が挙げられる。キャンバス製のシンプルな靴をメインに販売する同社は、「1足の靴が売れると、発展途上国の子どもにもう1足靴をプレゼントすること」を創業以来徹底しているのだ。

「ごく普通の消費活動」を行うだけで、自動的に「社会貢献」ができる。そんな仕組みを生み出したトムスの靴は、現在日本をはじめとする世界各国で、若者の愛用者を増やし、創業からわずか9年で世界中に店舗を持つ「グローバルブランド」に成長。「シンプルでスタイリッシュなデザイン」と「買うだけで社会貢献ができる」という手軽なシステムで、「若者が“普通に”社会貢献をする」ムーブメントを作りだしているのだ。

日本も続け!“分別ある”ビジネス

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Photo by Tomoko Suzuki

ボルヴィックやトムスの例に続けと、今回大々的に「社会貢献」と「ビジネス」を繋げた日本のメーカーがある。カカオ豆からの一貫製造を日本で最初に始めたチョコレートメーカー、森永製菓だ。

同社は、児童労働の撤廃を目指して活動する国際協力NGO団体『ACE(エース)』とタッグを組み、日本の大手菓子メーカーとしてはじめて「国際フェアトレード認証」を取得したチョコの通年販売を行う。

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Photo by Tomoko Suzuki

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Photo by Tomoko Suzuki

『1チョコ for 1スマイル』と名付けられたこのキャンペーンは、特別月間に対象のチョコ1箱が購入される度に、1円がカカオを生産する途上国の子ども支援に寄付される仕組みだ。

ACEの代表を務める岩附由香さんによると「ガーナのチョコレートの原料を作るカカオ農家の多くは、小規模で生産性が低く、手間のかかる農作業に子どもがかり出され、教育が受けられない」という。

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Photo by Tomoko Suzuki

今回のキャンペーンは、そんな「チョコレートにつきまとう問題」が起きないために事前に予防する。「分別ある挑戦」でもあるのだ。

「社会にも、企業にも、消費者にも良い」そんな「コーズマーケティング」を利用したキャンペーンを頻繁に見るようになった背景には、現在若者を中心に高まる「社会貢献意欲」があると岩附さんは語る。

「今の小・中・高校の教科書には、『グリーン消費』や『フェアトレード』に関する内容が普通に出てくるんです。東日本大震災の影響もあってか、今若者の間では“社会貢献”をするということが“特別なこと”ではなく、“当たり前”のこととして根付き始めているんです。」

そんな時代の流れと一致したコーズマーケティングだが、あくまでこれは「新しいマーケティングのトレンド」としては終わらないようだ。

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Photo by Tomoko Suzuki

「森永の会社のビジョンは『世界の子どもたちに貢献できる企業になる』というもの。結局このコーズマーケティングが流行っていても、これを継続して実践できるのは“会社のビジョン”と解決すべき“社会問題”が一致している場合だけなんです」

そう説明する岩附さんは、次から次へと凄まじいスピードで生み出されるマーケティング手法の中で、あえてこの「コーズマーケティング」を戦略の一つとして選ぶ企業には、「元々『儲け』ではなく『人のため』という揺るぎないビジネスの軸がある」という。そのような企業でなければ、どんなに「流行り」といえども継続的に行っていくことができない。それこそが、このコーズマーケティングが「私たち消費者の心を動かすことができる」最大の理由なのかもしれない。

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Photo by Tomoko Suzuki

「頭の良い人」が儲からない時代

「“買う人”が何を買うかで、“企業”は何を作るかを決めます」

岩附さんがそう訴えるように、企業はビジネスである以上「売れるモノ」を多く作るのは当然だ。しかし今、「良い行いをする企業」に価値を感じるようになった消費者が確実に増えているのも事実。そして、そんな評価の厳しい消費者を前に、ただ「短期的な利益を追求してビジネス」を行えば「モノが売れる時代」。つまり「頭の良い人が儲ける時代」はとっくに終わり迎えているのだ。

「賢い消費者の関心」と「その消費者の心を掴めるビジョンを持った企業」、そしてその「企業のミッションを体現できる活動を行うNGOやNPO」。この3者がタッグを組むことで初めて成立する「コーズマーケティング」は、従来の企業側が一方的に仕掛ける戦略ではなく、皆の協力を得てはじめて成り立つ戦略なのだ。

「分別のある良い行い」をする人が億万長者になる時代。

そんな時代を夢物語に終わらせないコーズマーケティングの静かなるブームは、「企業が拡大すればするほど、社会貢献も拡大する」。そんな「誰もがトクしかしない新しい経済システム」を日本に創り出す、大きなキッカケになっていくのかもしれない。

詩人 谷川俊太郎さんがACEのためにオリジナルで書き下ろした詩、『そのこ』。

※動画が見られない方はこちら

ACE

Website

ACE(エース)は、世界中のすべての子どもの権利を守られ、希望を持って安心して暮らせる社会を実現するため、市民と共に行動し、児童労働の撤廃と予防に取り組む国際協力NGOです。

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※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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