2秒に1人、世界のどこかで子どもが子どもを出産している。日本人も他人事ではない、社会の陰に隠れた“若年妊娠”の事実

2017.6.21

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赤ちゃんのお人形がプリントされている箱を手にし喜びに満ちた少女の動画。実はこれ、人々に「ある社会問題」を投げかける動画として話題になっているのだ。

※動画が見られない方はこちら

プレゼントされたベビードールの箱を嬉しそうに開ける少女。しかしそこに入っていたのはベビードールではなく「妊娠検査薬」。同封されたカードに書かれた「2秒に1人、世界のどこかで少女が出産しています」という文章を読み絶句する少女。そして動画の最後に少女が残した言葉「女の子が子どもを産むことができるの?」

日本では若いうちに妊娠、出産をすることを「子どもが子どもを産んでいるようだ」という。はたして本当に「子ども」が「子ども」を産むことはできるのだろうか?

突如終わりを告げる「子ども時代」

少女の動画をアップしたのはNGO団体「Save The Children」。1919年にイギリスで創設され、「すべての子どもにとって、生きる、育つ、守られる、参加する“子どもの権利”が実現されている世界」を目指すことを目的とし、現在では日本を含む29ヶ国の独立したメンバーが連携し、約120ヶ国で子ども支援活動を展開している。

このSave The Childrenが提示している問題の1つが「失われた子ども時代」。

8 Childhood Enders(子ども時代を奪う8つの要因)

・Child Dies(死亡)
・Child is Out of School(教育を受けられないこと)
・Child Brides(早すぎる結婚)
・Child is a Victim of Extream Viorence(激しい暴力の被害)
・Child is a Severely Malnourished(栄養不良)
・Child Labor(児童労働)
・Child has a Child(早すぎる出産)
・Child is Displaced by Confrict(戦闘への参加)

※日本版はChild is Displaced by Confrictを除く7つ

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Photo by セーブザチルドレン

児童労働や少女の強制婚姻、病気や暴力による死亡など、8つのケースを15歳以下の子どもたちが「子ども時代を終える」要因として取り上げ、その現状を世界中に訴え、問題解決へと取り組んでいるのだ。(参照:Save The Children

そのキャンペーンの1つとしてアップされているのが動画シリーズ「An Unboxing Surpriseかつてない衝撃の開封動画」だ。手にしたおもちゃの箱を大喜びで開封する子どもたちだが、そこに入っているのはおもちゃではなく銃の実弾や重たく鋭利なつるはし、妊娠検査薬。安全な環境でおもちゃを手にする子どもたちがいる一方、時を同じくして彼らと同じ年頃の子どもたちが実際にこれらの道具を手にしなければいけないという事実があることを訴えかけている。

子どもが子どもを産むこと

「8 Childhood Enders」の1つが「Child has a Child(早すぎる出産)」。冒頭の動画で少女が放った一言「女の子が子どもを産むことができるの?」という疑問の答えは「イエス」であり「ノー」である。

Save The Childrenの調査によると世界では毎年約1700万人の「女の子」が子どもを産んでおり、そのうち1600万人が15~19歳、残りの約100万人が15歳以下だという。また、その内の90%が発展途上国に住む少女たちであり、10代で子どもを生んだ彼女たちは健康や教育、経済的なリスクを背負いながら自分の「子ども時代」を捨て親としての責任を果たすことを強制されるのだ。

10代での妊娠は、避妊の方法を知らない、避妊具を手に入れることができない。強制的な性行為が原因であり、悲しくも望まない妊娠であるケースがほとんど。しかしこの問題、決して貧しい国だけの問題ではない。アジアやアフリカの貧しい地方都市での「少女の強制婚姻」との結びつきが強いのが「若年妊娠問題」の特徴ではあるが、比較的裕福な国やラテンアメリカ、カリブ海諸国での少女たちの「婚外出産」も見逃せない問題となっている。(参照:Save The Children

確かに「女の子」が子どもを産むことはできる。しかし、新しい命を授かった瞬間、彼女の「子ども時代」は強制的に終わりを迎え「女の子」ではいられなくなっていしまうのだ。

日本にも潜む若年妊娠の現状

10代での妊娠が問題視されているのは海を渡った遠い国の話だけではない。私たちが暮らすここ日本でもまさに「望まない妊娠」をしている少女たちがいるのだ。

2016年に日本性教育協会が発表した資料によると2014年の10代(19歳以下)の母からの出生数は13,011 人、うち43人は14歳以下の母からの出生であり、これは2014年の出生数100万3539人(参照:厚生労働省)の約10%である。この数字だけで見ると「10%か」と思う人もいるかもしれないが、特筆したいのは10代の人工妊娠中絶の数は17,854 件。そう、10代での妊娠では出産よりも中絶の道を選ぶケースが上回り、望まない妊娠が多いことがよくわかる。

発展途上国と違い避妊具が比較的手に入りやすい日本での若年妊娠の要因として挙げられるのは実用性のない「性教育」である。小学校や中学校で学んできた性教育について思い出してみてほしい。私たちが学習してきたのは「生殖器の発達」や「思春期の心の変化」などであり、性交にや妊娠、避妊や中絶など私たちが実際の生活で経験することについてはほとんど触れていない。

2009年にユネスコが発表した 「国際性教育ガイダンス(International technical guidance on sexuality education)」では人間関係や価値観、性行動といった6つのコンセプトを年齢に応じて段階的に教育するシステムを推奨している。単に知識を詰め込むだけでなく心理的発達や性的自己決定能力を育てる「実用的な教育」がもっとも効果的であると多くの研究結果が裏付けており、すでにいくつかの国では必修化されている。残念ながら日本では未だ、この教育システムは導入されていないが、教師や保護者など周りの大人たちが正しい知識やコミュニケーション方法を学び、「性教育」という言葉を恐れず、人生の先輩として真っ直ぐに向き合うことが必要なのである。(参照:日本性教育協会

日本では「性」について話すことは「恥ずかしい」とか、「下品」だと思われがちである。しかし、「性」を正しく学ぶことは「私たちの命」を学ぶことなのではないだろうか。子供と「性」を遠ざけるのではなく、「自分の人生を生きるための教育」として子どもたちが自分で正しい選択をできる手助けをするのが本当の「性教育」であり、「子どもが子どもでいられる時間」を守る方法なのだ。

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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