「25歳で大学卒業なんて、ざら」。日本の常識が世界の常識ではないと気付かせてくれる国、スウェーデン|スウェーデンで日本人として生きることとは VOL.2

2018.1.4

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日本で大学入学は18歳、そして卒業は22歳。そう決められているようなものだから、もし“決められた年齢”より1歳でも上だったら、すぐに「浪人したの?それとも留年?」と聞かれてしまう。

だから日本でその年齢を超えても学校に通っているという人の数はほかの国と比べると少ないのだ。けれど、今回紹介するスウェーデンは、大学以外に成人向けの教育機関が充実しており、年齢を気にせず学び続ける人も少なくないのだという。

Be inspired!は今回、スウェーデンに住んだことのある若者6人にインタビューを実施し、スウェーデン事情に加え、日本がスウェーデンから学べることがないか質問した。本記事ではその回答の後編を紹介する。

M(23歳、会社員)

Photo by 撮影者

ーどれくらいスウェーデンに住んでいましたか?

10ヶ月ほどいました。

ースウェーデンのどこに住んでいましたか?そこはどんな場所ですか?

スウェーデン第二の都市Göteborg(ヨーテボリ)から電車で50分、バスで10分の小さな町です。自然豊かで静かなところでした。

ースウェーデンで何をしていましたか?

スウェーデン語を学ぶために留学していました。

ースウェーデンの好きなところは?

自然が美しいところ、家族を大切にするところ、あたたかい人や家

ースウェーデンの嫌いなところは?

これといって思い浮かびません。秋の雨季と冬の寒さ、暗さは辛かったです。

ースウェーデンで「日本人だから」「アジア人だから」などの理由で差別を受けたことはありますか?受けた場合、それはどんなものでしたか?

特に受けたことはありません。さまざまな人種がいるのは、ただただ普通という認識があると思います。良くも悪くも、どんな人に対しても態度は対等で、ドライです。特別扱いはされません。

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ー日本がスウェーデンから学べることはなんでしょうか?

高校を卒業した人や新たなキャリアを身につけたい人向けのfolkhögskola(フォルクフーグスコーラ)と呼ばれる成人教育機関があり、大人になっても何回でも学び直せるということ。私もそのタイプの学校に通っていました。友人にはバイトをしてお金を貯めては大学に行ったり旅をしたりっていう生活をしてる人が多く、その自由さって大事だなぁとも感じていました。

あとは穏やかにゆっくりと過ごすことの大切さ、嫌なことは嫌とはっきり言うこと。

ースウェーデンが日本から学べることはなんでしょうか?

あまり思いつきません…。

ースウェーデンなど北欧諸国が「北欧」と一括りにして語られがちなことについてどう思いますか?また一括りにして語られがちなのはなぜでしょうか?

しょうがないと思います。そもそも北欧諸国の情報が少ないところに、「北欧」という名前が全面的に使われ始めたので。言語も文化も、国によって似ているところもあれば、まったく違うところもあります。大きな括りから興味を持ったら、そこから少しずつ違いを見つけてもらえると嬉しいなと思います。

中山 貴美子(24歳、学生)

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ーどれくらいスウェーデンに住んでいますか?

高校2年生のときに1年滞在し、現在はスウェーデンの大学院に通い始めて4ヶ月が経ちました。

ースウェーデンのどこに住んでいましたか?そこはどんな場所ですか?

交換留学先だったスウェーデンの南にある小さな街スカノールは、サマーハウスが立ち並ぶ比較的裕福な地域です。スウェーデンというとビーチのイメージはあまりないと思いますが、夏になると多くのスウェーデン人が訪れます。現在住んでいるUppsala(ウプサラ)は学生街。留学生を多く受け入れる大学のため、国際的で言葉はスウェーデン語だけでなく英語も毎日のように耳にします。

ースウェーデンで何をしているのですか?

ウプサラ大学の修士課程に在籍していて、国際環境歴史学という生態学を歴史的観点で研究しています。

ースウェーデンの好きなところは?

スウェーデンの好きなところは、個人のやり方を通そうとしても許されるような、いい意味でオーガナイズされていないところ、そして女性がとても住みやすいところでしょうか。私は大学を出るのに4年半かけましたが、25歳以上になってからやっと卒業するのもざらにある話で、自分のペースでやりたいことを探したり学んだりできる環境がより多様性を生んでいる気がします。

また、ジェンダーの話ですがウプサラへ来て一週間後ほど経ったときに自転車を安く譲り受けました。譲り受ける前に「マウンテンバイクだから、女の子にはどうかと思うけど大丈夫?」と聞かれたんです。彼もまた留学生でスウェーデン人ではなかったのですが、スウェーデン人の男の子にこの話をすると「ありえない」「マウンテンバイクのどこが男の子っぽいの?」など批判的でした。

それから、スウェーデンはどことなく日本と似ているように思います。以前3年ほどサンフランシスコとオークランドに住んでいましたが、それと比べてスウェーデンは日本的に感じます。人の振る舞いや、話し方、マナーなど違和感を感じずに過ごせます。

ースウェーデンの嫌いなところは?

冬が長く、寒くて暗いことでしょうか…。

ースウェーデンで「日本人だから」「アジア人だから」などの理由で差別を受けたことはありますか?受けた場合、それはどんなものでしたか?

初めてスウェーデンに来たときは、スウェーデン語はもちろん英語も話せませんでした。それでコミュニケーションの取り方に苦労していて「日本人だから静かでシャイなんだ」とずっと勘違いされていました。通っていた高校は、知る限りアジア人は私一人で、当時スウェーデンが移民を積極的に受け入れ始めたこともあり、外見で留学生ではなく「移民」として見られていたのです。これを個人的に差別と受け取ったことはありません。スウェーデン人の友人で日本に留学したときに街を歩くと「日本人の視線をいつも感じる」と話していたのですが、同じようなことです。

人種だけではなく、ファッションなどでも見た目が違うということで、視線を集めてしまうのは避けられないなと思います。ただ、地域によってとても異なり、今住むウプサラでは留学生に慣れているため、めったにそんな視線を向けられることはないと思います。

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ー日本がスウェーデンから学べることはなんでしょうか?

ワークライフバランス、女性が働きやすく生活しやすい環境づくり

ースウェーデンが日本から学べることはなんでしょうか?

特に思いつきません。

ースウェーデンなど北欧諸国が「北欧」と一括りにして語られがちなことについてどう思いますか?また一括りにして語られがちなのはなぜでしょうか?

多くのヨーロッパ諸国も同じかもしれませんが、スウェーデン人が歴史を語るとき必ずほかのスカンジナビア諸国との関係の移り変わりも話します。フィンランドの一部地域ではスウェーデン語が使われていたり、私が以前住んでいた南の地区は「スコーネ地区」と呼ばれ以前はデンマークに属していたりしました。サーミ*1が住むラップランドは、実際ノルウェーやフィンランドの土地に広がっています。

Instagram:@earthykiki

(*1)スウェーデン北部、ノルウェー、フィンランド、ロシアの北極圏地域に住む先住民族

平田 大翔(24歳)

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ーどれくらいスウェーデンに住んでいましたか?

1年間いました。

ースウェーデンのどこに住んでいましたか?そこはどんな場所ですか?

Hudiksvall(フディクスバル)というStockholm(ストックホルム)から高速列車で2時間半の駅からバスで15分ほどのところに住んでいました。 緯度ではスウェーデンのちょうど真ん中辺りで、森と湖と牧草地が広がる自然豊かな田舎。寮の窓からオーロラが見えました。

ースウェーデンで何をしていましたか?

フォルクフーグスコーラという、日本でいう専門学校のような位置付けの学校で写真の勉強をしていました。

ースウェーデンの好きなところは?

スウェーデンは「人」が良いと思っています。 具体的にいうと、

①自然を心から愛しているところ

出会った人たちはみんな、森、湖、太陽、花、果物、草原といったものに触れる時間を大切にしていました。これは厳しく長い冬があるからこそなのかもしれませんが、冬が比較的短く暖かい日本であっても、自然の素晴らしさは同じだと気づかされました。

②人に興味を持つところ、コミュニケーションを大切にするところ

食事中、たとえパーティ中であっても、必ず「自分の持っているおもしろい経験」が話題にのぼりました。みんなが本当に人に興味を持っていることや、人が好きなんだということが伝わってきて、とても居心地がよかったです。人が何をおもしろいと思うか、どんなことを考えているのか、そういうものを楽しめる人たちが多かった印象です。

③合理性と同じくらい、面倒で根源的なことも大切にするところ

大多数の人がモノには機能性を求め、家事などを自動化して余暇を増やそうとしています。その一方で、休暇には田舎のコテージに泊まりに行き、不便も多い生活を送っていました。きっとそうすることで、現代的な生活の快適さを再認識できるし、人間としての根源的な営みで充実感も感じられるんだと思います。その両方を欲しがってしまう、人間の厄介なところを認めて生きているように感じてとても好きでした。

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ースウェーデンの嫌いなところは?

スウェーデンだからこそ嫌い、は特にないですね。嫌なこともたくさん経験しましたが、大抵は日本でも起こりうることでした。

ースウェーデンで「日本人だから」「アジア人だから」などの理由で差別を受けたことはありますか?受けた場合、それはどんなものでしたか?

差別はまったくなかったですが、たとえば最寄りのスーパーで明らかにスウェーデン生まれじゃない僕の顔立ちを見てか、手ぶらで生活感丸出しの格好で買い物しているにもかかわらず、まず英語で案内をされたときなんかは少し悔しかったです。気を使って親切心から英語で話しかけられているのはわかるので、無下にはできないんですが「僕だってスウェーデン語喋れるんだぞ!」と(笑)

ー日本がスウェーデンから学べることはなんでしょうか?

スウェーデンと比べると日本は、外面や世間体を気にしすぎていると感じます。体型や容姿、服装などについて他人にとやかく言うことはまずなかったですね。もっとスウェーデン人のように他人の「人柄」に興味を持つようになればいいなと思います。そうすれば、もっと自由に正直に、そして素直に生きられそうですよね。

ースウェーデンが日本から学べることはなんでしょうか?

スーパーで売ってるものの単位量が減るといいなと思います(笑)特に乳製品と精肉は量が多い印象です。一人暮らしには優しくないですね。

ースウェーデンなど北欧諸国が「北欧」と一括りにして語られがちなことについてどう思いますか?また一括りにして語られがちなのはなぜでしょうか?

大きな違和感を覚えますが、同時に、仕方ないと思っています。僕だって最初は「マイナーな言語を勉強したい」という気持ちでスウェーデン語を始めていますし、そういう括り方をした自分を恥じましたが、それだけ日本では情報が少ないってことなんでしょうね。情報が少ないから、属性で括るしかないんだと思います。今回のこの企画が、そういう状況を打開する一端となることを願っております。

日本はどうしたら「多様性」を生めるのか?

インタビューでの「自分のペースでやりたいことを探したり学んだりできる環境が、より多様性を生んでいる気がします」という中山さんの言葉が印象的だった。平田さんが言っていた、スウェーデンの人たちが「人間の厄介なところ」を認めて生きているという話とも通ずるように感じられる。

日本で暮らしていると「年齢主義」の学校制度や就職制度、あるいは企業の年功序列が当たり前だと思ってしまうかもしれないが、それは世界の“常識”ではない。そんな事情を一つ知るだけでも、自分自身の生き方に対する考えが変わるのではないだろうか。

前編はこちらから。

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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