余った食べ物は“アプリ”でお隣さんとシェア。食品廃棄を減らす「21世紀のご近所付き合いの形」

Text: Noemi Minami

Photography: ©OLIO

2017.6.28

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同じアパートに何年も住んでいるのにご近所さんの顔も知らない…。これは都市ではよくある話ではないだろうか。親の世代は「寂しい社会になったもんだ」というけれど、子どもの頃から「知らない人に話しかけられたら逃げなさい」と学校でも教えられてきたし、どうしたらいいのか分からないという人も少なくないだろう。

しかし近所の人と仲が良くても損はないことは確かである。安全面でもそうだろうし、単純に自分の住んでいる地域の人と付き合いが深まれば楽しい上に、地域への愛着も湧く。

日本だけでなく、イギリスでも近年の「ご近所さん離れ問題」は同じようで、ある女性起業家二人がご近所さんと出会えるアプリを立ち上げた。しかも、「食料廃棄の問題」に挑戦することで出会えるアプリを。

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フードシェアリング革命

食料廃棄の問題に挑戦することでご近所さんに出会えるアプリとは、無料のフード・シェアリングアプリ「OLIO(オリオ)」。このアプリを使えば、賞味期限が切れそうなお店の食材や、パン屋さんで残ったパン、家庭で育てた食べきれない野菜、買いすぎた食材などを近所の人と共有することができるのだ。

利用方法は簡単で、アプリに食べ物の写真をアップし、説明といつ渡せるかを記載するだけ。食料が欲しい側は近くのロケーションから欲しいものを選び、アプリ上でプライベートメッセージすればいい。さらに便利化するためにOLIOのピックアップボックスも設立し始めている。

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毎年約10万円をゴミ箱に捨てるイギリス家庭

この会社の設立者はTESSA COOK(テッサ・クック)とSAASHA CELESTIAL-ONE(サーシャ・セレスチアル=ワン)。

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左がテッサ、右がサーシャ

数年前、スイスに住んでいたテッサは、母国イギリスに戻るために引っ越しの準備をしていた。その時、まだまだ食べれる新鮮な食べ物が家に残っているのに、近所の人と面識がないため急に渡すのも変だと思い、泣く泣く食べ物を捨てなくてはならなかったことを悔やんだという。その「食べ物を無駄にした」という嫌な気持ちを糧に食料廃棄の問題をどうにかできないかと考え始めた。

そこで食料廃棄の現状を調べてみると、世界の3分の1のまだ食べられる食料が毎年ゴミになっていて、イギリスでは1年で平均700ポンド(約10万円)分の食べ物が一般家庭のゴミになっていることを知る。これにショックをうけた彼女は自身の経験から、近所の人が食べ物を共有できるフードシェアリングアプリの設立を思いついたのだ。

イギリスに帰国後、このアイデアを周りの人に話しても誰も本気にしてくれなかったが、サーシャだけは違った。ヒッピーな両親のもとで幸せだが貧しい家庭で育った彼女は、日々食料廃棄の問題に心を痛めていたという。地球のために、人のためになるようなビジネスに関わりたいと心に決めていたサーシャは、テッサのアイデアを聞いて「これだ!」とすぐに確信し、二人で協力してOLIOを創設、アプリをローンチした。

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OLIOへの世間の反応は予想を上回るポジティブなものばかりで、現在ではユーザー数12万人にも及び、17万5千もの食べ物がこれまでシェアされた。これはなんと「8万食分」にも及ぶ量だ。さらに英国最大級のチェーンのスーパーであるSainsbury’sと協定も獲得し、さらなる拡大が期待できるだろう。

現在は、徐々に食べ物以外にもコスメや電気、洗剤などのプロダクトも対象にしはじめ、今後もうまくいけば、ローカルなコミュニティ内での物々交換が定着するかもしれない。地域や環境、資源に優しい上にコミュニティを育てる可能性を秘めた画期的なアプリなのだ。

買い続けることへの不安

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食料廃棄の問題は日本人にも決して他人事ではない。それどころか、日本は世界でも1、,2位を争う「食料廃棄大国」である。(参照元:HEALTH PRESS)テッサやサーシャの起業のモチベーションとなった「もったいない精神」だって日本の文化なら当然、理解できるはずだ。

OLIOはまだ英語バージョンしかないが、日本でもダウンロードして利用することが可能。食べ物を無駄にする代わりにご近所の人と知り合って、分かち合い、コミュニティを築きながら、同時に地球の明るい未来に貢献できたら、素敵ではないだろうか。

OLIO

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※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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