「ジャンク・オーガニック」がコンセプト。フードロスを活かした、食べ過ぎても“罪のない”お菓子屋さん、BROWN SUGAR 1ST. | TOKYO GOOD FOOD #014

Text: Ayah Ai

Cover: JUSTINE WONG

Photography: Jun Hirayama unless otherwise stated.

2017.11.16

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フェアトレード、ダイレクトトレード、オーガニック、ベジタリアン、ビーガン、ゼロウェイスト、昆虫食、未来食…。東京の街に日々増えていく、お腹をただ満たすだけではない「思想の詰まった飲食店」。

「海外からビーガンの友達が日本に来ていて、ビーガンメニューのあるレストランを知りたい」、「サードウェーブの先を行くコーヒーが飲みたい」、「フードロスがないレストランに行きたい」、「無農薬野菜が食べたい」、「友達や恋人と健康にいい食事をしたい」などなど。そんなニーズに答える連載です。

「食べることはお腹を満たすだけじゃない。思想も一緒にいただきます」。その名も『TOKYO GOOD FOOD』。フーディーなBe inspired!編集部が東京で出会える、社会に、環境に、健康に、あなたに、兎に角「GOODなFOOD」を気まぐれでお届けします!

それでは第14回目の『TOKYO GOOD FOOD』行ってみましょう!

WHERE IN TOKYO

今回は、原宿駅から徒歩10分ほどの場所にある、ピンクを基調としたキュートなお店、BROWN SUGAR 1ST.です。BROWN SUGAR 1ST.は、オーガニック食材の卸売、オンライン販売をメインの事業としながら、その商品を使ったオーガニックの手作りスイーツを店舗で販売しています。しかもその材料にはフードロスの問題も関連しているとか…。代表の荻野みどりさんに詳しくお話をうかがいました。

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WHAT’S GOOD

ーオススメの一品を教えてください。

やっぱりカップケーキですね。このカップケーキにうちのやりたいことが全部詰まっていると思います。

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Photo by BROWN SUGAR 1ST. TOKYO ORGANIC

2011年9月、娘を出産して4ヶ月の時に会社を創業しました。「子供に安心して食べさせられる物がもっと気軽に買えるようになったらいいのに」という思いから、自分で会社を立ち上げたんです。「お母さんの手作り」の感じを大切にしたくて、このカップケーキもお店のオーブンで毎日焼いています。

乳製品アレルギーの子やヴィーガン、ベジタリアンの人、どんな宗教の人もみんな一緒に美味しく食べてほしいから、卵や乳製品は一切使っていません。正直、ヴィーガンのお菓子って、日本だけでなく海外でも、私自身いろいろ食べてみましたが、本当に美味しいものってほとんど出会ったことがありません。よく見てみたらマーガリンを大量に使っていることも多く、ヴィーガン=ヘルシーではなかったりするんですよね。うちのカップケーキは、お菓子をずっと我慢していたヴィーガンの子やアレルギーをもっている人たちからも「超美味しい!」「感動した!」って言ってもらえることが多くて、それが本当にうれしいですね。

甘みも、アガベーシロップ(テキーラの原料でもある観葉植物からとれる糖分)とココナッツシュガーで出しています。この2つは血糖値の上昇がゆるやかで、体に優しいんです。いわゆるGI値が低い。はちみつやメープルシロップって意外と高いんですよ。今はGI値0って表示されている商品も出ていますが、それらはエリスリトールという人工甘味料が使われています。それも悪くないかもしれませんが、うちとしては、ナチュラルなものを使いたいと思って、この2つ以外の砂糖は基本的に使っていません。

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Photo by BROWN SUGAR 1ST. TOKYO ORGANIC

ーこのカップケーキ、フードロスの問題とも結びついているとお聞きしたのですが…

はい、そうなんです。「わが子に食べさせたいかどうか?」という視点でやっていると、未来の「食」についても想像するようになって、フードロス(食べものをムダに大量に棄てる社会)も子供たちの未来に残したくないと思ったんです。

卸売事業の中でフードロスが出る原因は本当に様々です。例えば、賞味期限には3分の1ルールというものがあって、製造日から賞味期限までの期間を3分割して、納入は3分の2まで、販売は3分の1までって決まっているんです。そうすると、賞味期限が十分に残っていて、まだまだ食べられるのに、サプライチェーンの流れに乗せられず、販売ができなくなってしまう。また流通面では、賞味期限が1日でも前後したら倉庫に入れないロジスティックのルールがあるんです。コンテナだから1万本とかっていう大量の商品を処分しないといけなくなったりするんです。あとは、ラベルのちょっとした汚れや、パッケージの凹みとか、中身は変わらないけど、買っていただけない場合もあります。

このカップケーキは、そんな、まだ十分食べたり使ったりできるけど普通の流通には乗せられなくなってしまった商品を、優先的に使って作っています。

…と、たくさん話しましたが、こういう想いを敢えて店頭で打ち出したりはしていません。単純に、おやつって甘くて美味しくて楽しくて気分が上がるじゃないですか。まずは可愛くて美味しくて幸せになる。それでいい。多くを語りすぎず、でも実はこだわっているよって。それをこのカップケーキは体現してくれてる。もう本当に大好きです(笑)。

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Photo by BROWN SUGAR 1ST. TOKYO ORGANIC

CONCEPT & PHILOSOPHY

ーどんなコンセプトでやっていらっしゃるんですか。

お店のコンセプトは「ダイニングキッチンのテーブル」。小学生の時、学校から帰って、ランドセルを置いておやつを食べて、また遊びに出かけていくじゃないですか。そのおやつを食べに帰ってくる場所みたいになりたいですね。みんなの「お母さん」という感じかもしれません。

野望としては、全国あちこちに、こういう手作りのお菓子でほっとできる場所を増やしていきたいです。うちの本業は食材の販売ですが、食材を提供しているだけでは、これから「お母さんたちの手作り」は絶対減っていくと思うんです。それは悪いことじゃないし、働く女性が増えれば必然です。それに今の社会は合理化を求めていく世界。機械化して合理化して効率的にする。その合理化をめざすプロセスでフードロスも生まれているわけですが。うちはその真逆を行きたいんです。

手作りって最も非効率で全然合理的じゃない。でもそういうところに温もりを感じたりほっこりする。うちはそういうことを大切にし続けていきたいんです。

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ー商品のほうのコンセプトはいかがですか。

商品のコンセプトは「ジャンクオーガニック」と「ギルトフリー(罪悪感なし)」(笑)。見た目はジャンクで、食べた感じもちゃんと甘いけど、中身はちゃんとしている。最近、コールドプレスジュースやファスティングなど「ガマンする」ものが流行っているけど私は絶対ガマンしたくない(笑)。だって食べることって喜びだから。

でも作り上げるのはどの商品も本当に大変です。香料を使わずにバナナやベリーの味を出すのってすごく難しいですし、先ほどお話しした「甘み」も、砂糖やキビ砂糖を使ったほうが安くできますからね。ショーケースに置いてあるドレッシングも増粘剤や乳化剤、化学調味料などの人工合成添加物を一切使っていないのですが、工場でドレッシングを作ると、普通、甘味料や増粘剤などがどうしても入ってしまう。何度も何度も粘り強くレシピのやりとりをして、ようやく出来上がった商品のひとつですね。

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CHANGE SOCIETY

ーお店を通じて、どんな風に社会を変えたいですか。

想いが強すぎるとどうしても対立軸になったり、ケンカになりやすいと思っています。オーガニックの世界も、スーパーさんやコンビニさんなど大手と敵対しがちです。でも、敵対したところで何が変わる?って思って…。私がやりたいのは、みんなの選択肢を広げていくこと。それなら大手は敵対する相手ではないと思っています。

それに、スーパーも問屋さんもメーカーさんも、話をすると皆さんいい人なんですよ。彼らは売上をあげなければいけなくて、「みんなが欲しいと言うもの」を作っているだけ。だから逆に言うと、売れるならオーガニックだって置いてくれるし、棚も増やしてくれるわけです。

うちも取扱店の開拓に初めはすごく苦労しました。でも少し売れはじめたら、すごい歓迎ムードになったんです。油棚の主力商品の調理油って客単価300円くらい。それが突然、一人のお客さんがみんな2000円近いものを買ってくれたから、油棚の売上が一気にあがったんです。それでオーガニックってすごいって思ってもらえて、置いてくれる商品数も店舗数も増えていったんです。今では北海道から沖縄まで、3000店舗以上に扱ってもらっています。

大手さんも、オーガニックとかナチュラルとか無添加のものをみんなが選んで買ってくれるようになれば、どんどん作っていきます。だから、叩くのではなくて、みんなをワクワクさせて、ニーズをあげるほうが、よっぽど有効なんじゃないかと思っています。

そして、みんなで一緒に問題の解決方法も考えればいいと思っています。だから、仲間のオーガニック食品メーカーの人たちには、先ほど話したような「まだ食べられる」フードロスが生じたときには、連絡して!相談して!っていつも伝えているんです(笑)。

複数社のそうした“ロス”を、ミステリーボックスのように可愛く梱包して「ヘルシースナッキングボックス」って名付けて、これからシェアオフィスや企業の休憩スペースに置いてもらう予定もあります。そこで手に取った人が気に入ってくれて、今度普通にスーパーやコンビニで商品を買ってくれたらいいじゃないですか。

フードロスの問題も、メーカーも問屋も小売店も、みんなどうにかしたいって言っているんです。だから、誰かを責めるのではなく、楽しみながら、おいしく、みんなで解決したいなって思います。

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おやつはガマンしたくない。味も妥協したくない。でも、できることなら、体に優しく、地球にも優しい物を選びたい。そんなあなたに、ぜひ一度足を運んでみてほしいお店。そして、楽しく美味しく、ワクワクしながら社会を変えようとしているBROWN SUGAR 1ST.さんの今後の展開も大注目です!

来週の『TOKYO GOOD FOOD』もお楽しみに!

BROWN SUGAR 1ST. TOKYO ORGANIC
(ブラウンシュガーファースト トウキョウオーガニック)

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#食べ物を棄てない日本計画

Address:東京都渋谷区神宮前3-28-8 1F
Tell:03-3478-6130
営業日:10:00~18:00(年末年始のみ休業)

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※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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