日本初公開。国家に“禁じられた音楽”をレントゲン写真に閉じ込めたクリエイティブなソ連の若者たちの生き様

2019.4.26

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あなたはどんな時に、何を使って音楽を聴いているだろうか?スマートフォンやテレビ、ラジオ、パソコンなどそこらじゅうに莫大な量の音楽が溢れ、私たちはいつでもどこでも好きに音楽を楽しめる。もしかしたら電車の中でこの記事を読みながら、スマートフォンで音楽を聴いている人もいるかもしれない。

しかし、今から数十年前、好きな音楽を自由に聴くことのできなかった若者たちがいた。

※動画が見られない方はこちら

「BONE MUSIC展 紹介ショートムービー」

第二次世界大戦が終わり、1940年代から1960年代、冷戦中のソビエト政府は敵国の思想がソビエトに流入することを恐れ、全てのカルチャーに検閲をかけていた。音楽ももちろんその対象だ。アメリカのロックやジャズをはじめ、ソビエトから亡命した作曲家の作った曲までもが「退廃的」「非建設的」と位置付けられ、演奏したり鑑賞したりすることが禁止された。

そんな中、政府にとっては皮肉にも10代から20代のサブカルチャー好きの若者の間ではロックやジャズが流行していた。もし見つかれば刑務所行きという状況で、どうしても最新のロックやジャズが聴きたかった彼らは、レコードを密輸し始めた。

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ボーン・レコード Ⓒ Photography : Xray Audio Project / Paul Heartfield

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ボーン・レコード Ⓒ Photography : Xray Audio Project / Paul Heartfield

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ボーン・レコード Ⓒ Photography : Xray Audio Project / Paul Heartfield

密輸したレコードを複製しようと考えた若者たちだったが、当時レコードの原材料となるポリ塩化ビニルは不足し、レコードを複製するのは簡単ではなかった。そんな中安価にレコードを複製しようと考えた若者たちが代替品として思いついたのがレントゲン写真だった。病院から使用済みのレントゲン写真を入手し、自作のカッティングマシーンを使ってレコードのように円形にカットし、最後に中心にタバコの火で穴を開けてレコードのように仕上げた。こうして生まれたのが「ボーン・レコード」だ。

そして今回、2014年にロンドンにて初めて開催されたボーンレコードの展覧会「BONE MUSIC展」が、日本に初上陸。キュレーターのビンテージ・ボーンレコードや貴重な録音機となるカッティングマシーンが展示され、会場BGMとして当時の音源を聴くこともできる。

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過去海外での展示風景 Photo : Ivan Erofeev Ⓒ Garage Museum of Contemporary Art

キュレーターの1人であるスティーヴン・コーツ氏は「今の日本人にとって、音楽はとても大事な存在であるのではないかという気がしています。そしてこのプロジェクトにある”音楽とイメージ”の組み合わせを好きになっていただき、 ボーンミュージックの中にあるロマンティックなストーリーを理解してもらえればと思っています」と語る。

今とは違ってインターネットを通じて自由に音楽を聴くことのできない世界で、私たちと同じように音楽を愛する人々はなんとかして音楽を聴こうとした。BONE MUSIC展では、抑圧の中で生まれる力強いクリエイティビティを感じることができるだろう。

そして日本国内ではあまり体感しないかもしれないが、現在も、中国・エジプト・北朝鮮などの国では自由に音楽や映像にアクセスすることのできない人々が存在している。今もどこかでBONE MUSICは誕生しているのかもしれない。

BONE MUSIC展
〜僕らはレコードを聴きたかった〜

オフィシャルサイト


期間:2019年04月27日(土)−2019年05月12日(日)
時間:11:00 ~20:00 (入館は30分前まで)
※但し5月2日(木)はイベント開催の為、17時閉館
会場:BA-TSU ART GALLERY
東京都渋谷区神宮前5-11-5
チケット:前売料金¥1200 / プレミアムチケット(ボーン・ミュージック展 関連グッズ付き)¥2400 / 当日料金¥1400

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過去海外での展示風景 Photo : Ivan Erofeev Ⓒ Garage Museum of Contemporary Art
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