「毎朝電車で運ばれる“歩く機械”たちにも、本当は夢がある」。僕が『朝の電車』には社会の全てが詰まっていると思う理由|清水文太の「なんでも」#001

Text: Bunta Shimizu

Photography: Ahida Agirre

2019.2.6

Share
Tweet

こんにちは。NEUT Magazineでの連載が始まりましたね。

僕のことを知らない方のために改めて自己紹介をします。
清水文太(しみず ぶんた)です。 好きなことを仕事にしています。
スタイリングをしたり、こんなふうに文章を書いたり、デザインしたり。ダンスをしたり。
その中でも、いま一番ハマっていることは音楽です。MacBookAirのソフトで作曲している。曲と共に自らも成長しているような気がして、嬉しいです。

そこから将来、児童支援の活動をしたいんだ。

自己紹介が長くなってしまったが、これから宜しくお願い致します。

今回は、電車について話をしたい。

「電車?」と感じるかもしれない。けれど、僕は社会の全てが詰まった空間だと思う。

プラスな面においても、マイナスな面においても。

width="100%"
清水文太さん
インタビュー記事はこちら

僕が朝の電車に乗っていて憂鬱になるわけ

朝の電車は憂鬱で僕は苦手です。
理由は、おそらく乗車している人間の70%が「行きたくない」というオーラを放っている。つり革を力なく掴んでいる姿はベルトコンベアーで運ばれている機械のようだ。
きっと、そう見えるだけなのだけれど。

僕はその中に入れなかったネジの外れたドラえもんのような存在なのだろう。

皆んな、実はそれぞれネジが外れてたり、欠けてたりするはずなのに、見えないのだ。
見えないように、あの電車では心の目隠しがされている。

明らかに、目の前にいる60代くらいの男性に気づいているが、気づかないふりをする若者が席に座る。
普通に立てるはずなのに、あからさまに「席をください」と言わんばかりに若者の前に立つ。
どかないと「チッ」と舌打ちをしてアピールするのだ。
そんな若者はまた、気づかないふりをして流行りの音楽を聴きながらInstagramのストーリーをチェックする。
そんな中には、会話も表情も生まれない。空気さえ、生まれないこともあるのだ。
心と心の争いではなく、心と心がどんどん離れていくような、氷のような時間も味わえる。

その反対側では、生まれたばかりの赤ちゃんが泣いている。その子を連れたお母さんが、必死にあやして泣き止ませる。
その声に、苛立ちを見せまたまた舌打ちをするサラリーマンと、その子を見て笑顔を見せる別のお母さん。おばあちゃん。そして僕。

人間が人間を苛つかせるし、人間が人間を癒す。
無関心が無関心を呼んで、愛は愛を呼んでいる。

そんなことが、東京を走るあの十数両の電車では、行われているのだ。
そして、電車に運ばれた機械たちは、「社会に慣れる」ためのプログラミングを受けて再び家に運ばれる。
そこで、違和感を持ったドラえもんのような存在が、外に出る。社会の外側へ。

width=“100%"

本当は皆んな夢を持ったドラえもん

でも、きっと本当は皆んなドラえもんなのだ。
将来やりたいことや、苦しいこと、それを乗り越えるために進む。どんなに迷惑をかけても。
それを許してくれない場所が多いから。

中でも、電車が負のオーケストラを奏でる瞬間がある。
自殺だ。

「ふざけんなよ」の緊急信号が点き、「人身事故により、電車が止まっています」のサイレン。
僕が最近作っている、アンビエント音楽のようなものが聴こえる。
でも、もっと、暗くて、悲しい音と光の集まりだ。

僕はそんな時、手を合わせて30秒、目を瞑る。
電車が止まって帰れないことよりも、なによりも人が死んだことを弔うべきではないのか。
正直、電車が止まってムカつく感情もわかるのだ。

「どうして死ぬんだ。このタイミングで。人のことを考えろ」って。でも、死んだ人は、そんなことを考える間も無く死んだのだ。 それは、僕ら含めた社会の責任だと思う。
変えたい。

でも、そんな悪いことばかりじゃないんだ。社会って。

車窓を見て未来を眺める若者らが、スーツケースを持って夢を運ぶ。
その横にいる僕も、夢を持っている。黄色のコートを羽織って。

width=“100%"

新宿で歩く肩をぶつけても謝らない人たちと共に歩く。
機械が機械とぶつかった時の金属の音がするのだ。
カッ、カッ、カッチン。
そんな彼らにも、僕にも肩をぶつける。

だが、僕は進む。彼らも進む。身体のネジを忘れても、前に進む。
人生は勝手に進む。死ぬまでは。

「デザイナーになりたい」「消防士になりたい」「Youtuberになりたい」「インスタグラマーになりたい」
「音楽をやりたい」「絵を描きたい」

きっと、歩いている機械たちも、元々は皆んな僕らのような黄色のコートを羽織った、キラキラした人達だったのだ。そんなことを、きっと、考えていたのだ。そして、今も考えているはずだ。そう信じてる。

だから、またキラキラが見えるはず。
少しずつ、心の目隠しを外してあげたら。

僕らの活動や、仕事を通して。

さて、今日も電車に乗ろっと。
締め切りギリギリのこの原稿を出した後は、パソコンで日記代わりの曲を一曲作る。
楽しみだなあ。夢、広がるね。

目隠し、取ろっと。景色が、見やすい。

またね。

清水文太

Bunta Shimizu(清水文太)

TwitterInstagramInstagram(works)BlogOnline shop

17歳の時短期間でのスタイリストアシスタントを経験。児童館やたい焼き屋・八百屋での勤務もしていた。19歳にして水曜日のカンパネラのツアー衣装を手がけ、モデルとしてdoublet・Dolce & Gabbana・MIHARAYASUHIROのショーにも出演。その活動の他にも『装苑』やウェブマガジンでのコラム執筆のほか、渋谷TSUTAYAでのデザインディレクション、ギャラリーでのアート展示などを開催。鈴木えみやスチャダラパーBose・ファンタジスタさくらだ夫妻、千葉雄大などのスタイリングも。先月、AirAsiaとレーベル88risingに所属しているJojiとのタイアップ映像にてダンサーとして参加。スタイリング、クリエイティブ、アートなどの分野で多岐にわたる活躍を見せている。

width=“100%"
Share
Tweet
★ここを分記する

series

Creative Village