「目の前の世界をひねり、自らのものに」ブラジル出身の若きアーティストが“国境なきコラージュ”で生み出す世界 | GOOD ART GALLERY #024

2020.1.27

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男女が抱き合っているイラスト、切り取られた新聞紙の見出し、潰されたタバコの空き箱、いつの時代にか撮られた集合写真、破られたDHLのプラスチック袋。「単語(アイテム)」を連ねることで生まれる「文章(ストーリー)」が彼の作品には存在している。

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今回GOOD ART GALLERYで紹介するのはブラジル・サンパウロ出身、日本で育ったコラージュアーティスト、Yabiku Henrique Yudi(ヤビク・エンリケ・ユウジ)だ。2017年11月に開催されたオカモトレイジ氏らが主催する合同展「YAGI」に出展、大きな反響を呼び、その後はValentinoなどの有名ファッションブランドをはじめ、多くのアーティストのビジュアルアートワークを手がけている。2019年11月には、人気漫画『ONE PIECE』を新たな形で表現するプロジェクト「BUSTERCALL」でNEUTとのコラボレーション作品も発表した。

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“Back in the day”
ONE PIECEは僕にとって11年前にブラジルから日本に移住してきた時に、日本のカルチャーやユーモアを理解するための大事なツールでした。また、本作で使用したルフィのワンシーンは、“未踏の地”日本に移り住んだばかりの11歳の僕の気持ちを代弁してくれています。当時のことを思い出しながら、作品にストリートカルチャーを落とし込み、コラージュで表現しました。(ヤビク・エンリケ・ユウジからの本作へ向けたコメント)

拾い物、写真、雑誌、絵画などをかき集め、自らの直感のままに制作を行なっているという彼。日本、アジア、東洋、西洋、国境も関係なし。ファッション、アート、音楽、映画、カルチャーも関係なし。「あえて既存のものをミックスしたり崩したりして、そこから新しい世界観を構築する」スタイルで、独自の世界を広げていく。

ーまずはじめに自己紹介をお願いします。

Yabiku Henrique Yudi(ヤビク エンリケ ユウジ)です。年齢は22歳で出身はブラジルのサンパウロです。

ーアーティストになった経緯を簡単に教えて下さい。

小さいときから絵を描いたり物を作るのが大好きでしたが、飽き性な性格なので長続きしないタイプでした。3年前、文化服装学院を休学していたときにたまたま趣味で始めたコラージュアートにとても魅了されて、制作に没頭するようになりました。2017年にオカモトレイジキュレーションによるエキシビジョン「YAGI」での出店がきっかけで仕事のオファーを受けるようになって、本格的にコラージュアーティストとしての活動を始めました。

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ー方向性を決めずに感性だけで制作しているそうですが、今までに作り上げてきた作品を振り返って、感じる共通点はありますか?

基本的に作ったあとは作品を見ないので共通点を意識したことは特にないのですが、作品のほとんどはそのときの気分で素材を選んでアナログで作っているのもあって、あらかじめ計算して作ることは難しくて、その場の直感を頼りに制作をしています。作品によっては1時間で完成したり、逆に止め時が本当に分からなくなるときもあって、数日かかる場合もあります。言葉にして説明するのはとても難しいのですが、自分のなかでなんとなくこんな感じになったら完成っていうのがあって、今までに作り上げてきた作品を振り返ると、それが唯一の共通点だと思います。

ー感覚的に作品作りをするうえで、自分のなかでのルールなどがあれば教えて下さい。

出来るだけ余白を残して、最低限の写真や文字、グラフィック、材料等で制作することを常に心掛けています。余白のところはペインティングしてて、テクスチャー感を出したりしています。最近は余白のところの方が謎にこだわりがだいぶ増えて、コラージュよりも時間がかかったりするときもあります。とにかくパッと作品を見た瞬間にある程度のまとまり感があって、どこかで違和感を感じさせたり自然に頭のなかで自分なりのストーリーが思い浮かぶような作品が仕上がるとかなり上がります。

ーアーティストというと、一見ゼロから何かを生み出すというイメージを持っている人も多い気がしますが、ヤビクさんの「既存のものから新しい何かを生み出すスタイル」にはどうやってたどり着いたのでしょうか?

もともとファッションとアートが好きだったので、高校を卒業して文化服装学院に入学しました。在学中にはデザイン画などで受賞することもあったりしたのですが、なかなか「これぞ!」っていう自分のスタイルが掴めず、ファッションや絵で自分を表現するのは難しいと思いました。当時、将来について悩んでいたこともあって、何かしらの武器や目標を見つけるために休学することを決めました。コラージュアートを作るようになったのはその休学中でした。あえて既存のものをミックスしたり崩したりして、そこから新しい世界観を構築するというスタイルは新鮮でめちゃくちゃ楽しくて、それまでの制作のなかで一番ワクワクしてやってたのを今でもはっきりと覚えています。ほぼ毎日と言っていいくらい制作するようになって、自然と没頭するようになりました。今年から本格的に絵も描きたいし、写真も撮り始める予定なのでそのなかでまた新しいスタイルが見つけられたら嬉しいです。

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ー今までコラージュ用に拾ってきたもので一番興奮したものは何ですか?

コラージュアートを始める1年ぐらい前に、原宿の喫煙所でイタリアのMarlboroを見つけて、何に使うかはわからないけどとりあえずカッコイイから持ち帰ったタバコの箱が思い出深いです。あとにそのタバコの箱は YENTOWNのkZm君のTシャツをデザインしたときに作品に取り入れて、とても気に入ってる作品の一つです。

ー「ごちゃごちゃとしたサンパウロが今の感覚に結びついている」と他のインタビューで話していましたが、故郷サンパウロがどう作品に影響していると思いますか?

僕が住んでいたサンパウロ州は南米最大の都市であり、サンパウロ州の中でも都心部に住んでいました。移民が多いこともあってさまざまな文化が混じり合う多国籍な環境で育てられました。街中はとにかくカラフルなところがあったり、そこからちょっと歩けば急にオフィスビルや美術館などの文化施設が密集したりしてて、めちゃくちゃミックスされてるけど何故か違和感なく成立してる街並みがとても好きでした。作品がカラフルだったり、素材がごちゃごちゃしてるけどなぜかまとまって見えるのは、サンパウロがどこかしらで今の感覚に結びついたと思ったりします。

ーサンパウロに東京が加わっていることによってどんな変化がありますか?

サンパウロに比べると東京の方がアートやファッションは発展しているし刺激的です。東京の友達のほとんどはアート関係やファッション関係の人だったりするので、常にアートとファッションは身近に感じられるものでもあります。

ー日本のアニメ、アメリカのPlayboyなどをはじめさまざまなカルチャーが作品に見られますが、特に気に入っているものは何ですか?(最近ハマっているものでも構いません)

特定のカルチャーが好きというわけでもなく、出来るだけ幅広くいろんな物を見るようにしているので、そのとき聞いている音楽や好きな映画、カルチャーからインスパイアされて作品に落とし込んだりします。最近だと、日本の美意識の一つである「侘び・寂び」にとても魅力を感じます。言葉の意味や歴史について調べれば調べるほど面白くて、今年は「侘び・寂び」というコンセプトの作品を作りたいです。

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ー新しいプロジェクトを違う屋号で始めるそうですが、それについて教えていただけますか?

まだ具体的な話は出来ないのですが、今年は平面や立体を問わず幅広く作品を展開して新しいものづくりに挑戦する予定です。もう既に新しいプロジェクトに向けて動き始めていて、自分にとって今年一年はとても大事な年になると思います。

ヤビク・エンリケ・ユウジ

WebsiteInstagram

1997年生まれ。ブラジルのサンパウロ出身で11歳のときに日本に移住。すべて直感に基づき作る過程で、自分なりのストーリーを持たせて表現するコラージュアーティスト

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BUSTERCALL

WebsiteInstagram

#BUSTERCALL  #ONEPIECE  #バスターコール  #ワンピース

日本を代表する人気漫画作品『ONE PIECE』を新たな形で発信するプロジェクト。国内外の200人以上のアーティストが参加し、各々の『ONE PIECE』を表現した。2019年11月2、3日はアメリカ・ロサンゼルスで開催された、世界最大級のストリートカルチャーの祭典「ComplexCon in Long Beach 2019」に「BUSTERCALL ART GALLERY」として初出展。本プロジェクトの参加アーティスト作品約200点が一挙に展示された。

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