「言葉で表せないことを写真で」。自身のセクシュアリティと向き合うプロジェクトを始動させた若手写真家|Lost in Sexuality vol.3

Text: SHIORI KIRIGAYA

Photography: Ryutaro Izaki unless otherwise stated.

2019.4.23

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Lost in Sexuality

4月の特集は、「Lost in Sexuality」。

「セクシュアリティにルールはない。迷ってもいいし、変わってもいいし、何か一つに決めなくていい」。

そんなことを伝えるため、NEUTはセクシュアリティがわからなくなった人や、それが変化することのある人、セクシュアリティのカテゴリーに対して疑問を抱く人のストーリーを届けます。

▶︎プロローグ

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22歳の写真家Hideya ishimaにとって、写真は生きる術である。一年半前に偶然友人にフィルムカメラをもらったことは転機といえるかもしれない。すぐさま写真にのめり込み、現在ではファッションブランドのコレクションの撮影などを多数行う。そんなHideyaがセクシュアリティに関する、とあるプロジェクトを始めたと聞き、NEUTは会いに行った。

セクシュアリティについてのプロジェクトとは別に、先日Hideyaは初めての「ヌード」の撮影を行った。本記事ではそのヌード写真を一部使用している。男性的な視点から女性を撮るようなヌードとは異なる、人間の美しい面や質感に焦点を当てるものを目指し、今まで“性別”について考えるなかで知った、性別を超えたところに人間の価値があることを再確認しながら撮られた。モデルを務めた友人の男性には“中性的”な自分自身を重ねたという。

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言葉で表現することは苦手

Hideyaは丁寧に言葉を選びながら話してくれた。幼い頃からHideyaは、家庭での悩みや自身の“性”に対する違和感を抱えており、それを誰かに話せる環境にいなかったため本人に言わせれば「言葉にする意味」がなく、当時は殻に閉じこもり一人で絵を描くことで言葉にできない感情を発散させていた。その「絵」というものを言葉で説明するなら「自分の姿」であり「空想的な感情」。現在のHideyaを支えている写真でも同様に、それらを写し出すことを目指し、モデルや自身と向き合う。現像した写真を見て、もっと向き合えたんじゃないか、もっと写せたんじゃないかと悔しさを覚えることもある。

アートワークで表現できるものは何にも縛られない自由な自分の姿で、それを汲み取った写真にも自分の情緒が出てくると思っています。なぜ撮るのか、なぜ写真にしたのかという自己解釈があるので、僕からみた僕の写真は現段階では自分です。

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Photography: Hideya ishima
Model: 朝倉滉生

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Photography: Hideya ishima
Model: 朝倉滉生

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Photography: Hideya ishima
Model: 朝倉滉生

カメラ越しのモデルとの距離感は、対面で彼らと向き合ったときとは異なる。カメラを手にすることのある人なら、少なからず同様の感覚を持つことがあると思われるが、Hideyaにとってのそれは至極特別な感覚だ。

精神的には近くて、肉体的には遠い距離にいることがいいですね。カメラにおさめているというよりは、全身で受け止めているという感覚が近いと思います。

言葉は自分を知るうえで役に立った

一年ほど前、インターネットでセクシュアリティについて調べていたHideyaは「Xジェンダー」や「アセクシャル」という概念を知る。それは自分の“性”に対する感覚に名前がつくような思いだった。Xジェンダーは幼い頃から覚えていた人が男女という二つの性別にわけられることへの違和感を、アセクシャルは他人に対する性的欲求や恋愛感情を抱かなくなっていた自身の状態を説明するような言葉であった。

男女のどちらでもないという立場をさすXジェンダーのなかでも、Hideyaの場合は時期やタイミングによって自身の自認する性別が変わるため、「不定性」と呼ぶのが近いという。カテゴリーの存在は、そんな自身をある程度理解するのには役に立った。言葉を知ってから、同じXジェンダーを公言する人と会って話す機会を作り、そこで得たものも大きかった。

言葉は自分が何なのか知るきっかけとか、似た感覚を覚えている人と出会うきっかけにはなるんですけど、同じXジェンダーにも種類があると思っていて、Xジェンダーだからこれということじゃなくて、一人ひとり本当に違うものだから。

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Photography: Hideya ishima
Model: 朝倉滉生

Xジェンダーだけでなくアセクシャルといってもさまざまだ。そこでHideyaに自身にとってのアセクシャルの意味を聞いてみた。以前は性的な感情が湧くこともあったものの、ここ一年くらいはまったくそのようなことはないという。

自分でもうまくこれだって説明することは難しいですが、性的欲求や恋愛感情を抱かない状態だと思います。「人として好き」とかはあって、以前は「この感情が恋愛感情なのかな?」って思うことがあったけど、他人と比べてみて違うと気づきました。

自分と向き合うアートプロジェクト

写真を始める直前のHideyaは、美容学校を卒業したのち、美容院で働いていた。長い時間外労働をともなう業種なのは知られているが、男性にばかり力仕事がまわってきたり、きついことを言われやすかったりするなど男女で扱いが違うことや、そこで似たような日々を繰り返すことは耐え難かった。その経験も自身を写真へと駆り立てたのかもしれない。

一般社会だと、何歳だから、こういう仕事だから、男だからっていうのでわけられて。男だからとか若いからこういう扱いをしていいっていうのがある気がして。

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Hideyaは現在、敬愛するイラストレーターと共同で企画したプロジェクトに取り組んでいる。自身が好きだという「自然」をテーマに開催した前回の展示期間中に、ほかに自分の好きなものは何か考えたところ、自分の“性”にとらわれずに観られる映画や小説で、それらに通ずる“性”について写真にするなら今だと思ったのだ。したがって次の展示のテーマは「セクシュアリティ」に決めた。写真とインタビュー、イラストレーションを使って構成される展示では、同テーマについて何が正解なのかではなく、来場する一人ひとりが自分自身と向き合って考えられる場所を作り、ストレートを自認する人にも伝わるやすいものとすることを目指している。

現在近しい人から始めているというインタビューについても聞いてみると、取材対象者に対してHideyaから一方的に質問をすることはないという。相手の話を引き出すつもりはなく、自身のことをまず話し、会話をしながら相手に自分にはなかった感情がみえたとき、それがどんなものなのか聞くという具合だ。「互いが自分と向き合いながら、互いとも向き合っている感じ」だとHideyaは話す。Hideyaだけでなく、相手も自身について知らない側面があることは少なくない。

自分のことって一番わからないんですよ。時期によって揺れるし、確信できるものではなく「そうかもしれない」という感じに過ぎないから断言できない。「自分はこうって思うんだよな」っていうくらいが心地いいですね。話すなかで今まで自分が気づいてなかったことが、そうやって口から出るのはおもしろいなって思います。

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Hideya自身の写真への熱量はかなりのもの。寝ることも食べることも忘れてしまうくらいに熱中してしまう。同プロジェクトはまだ始まったばかりで、セクシュアリティの悩みをざっくばらんに話し合える相手をHideyaは募集している。なかでも特に自身と同じ、Xジェンダーを自認する人ともっと話してみたいという。興味のある方は、本人またはNEUTに連絡してほしい。

Hideya ishima

Instagram

1997年 静岡県生まれ
2018年より東京にて写真家として活動

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