「言わなくても分かってよ」は通じない。畠山千明・ 遥とharu.と考える、パートナーとセックスについて話すことの重要性<前編>|Oops × NEUT Vol.2

Text: Natsu Shirotori

Photography: MARIKO KOBAYASHI unless otherwise stated.

2021.11.2

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Oops × NEUT
「EDに悩む、すべての思い合うふたりのため」に、新しい形のメディカルブランドを提案する「Oops」とNEUT Magazineのコラボレーションで、“性”について考える記事シリーズが2021年8月にスタート。全3回にわけて、記事を発信していく。
Vol.1 EDは男性だけの問題じゃない。既存の広告に違和感を感じた若者が立ち上げたポップなED診療サービスOops

 性の悩みは、人それぞれだ。身体の状態や健康に関する悩みから、セクシュアリティなどアイデンティティに関わる悩み、あるいはセックスについてなど。自分一人で解決できる悩みもあれば、他人との関わりのなかで生まれてくる悩みも多くあることだろう。
 「Oops」とNEUT Magazineのコラボレーション記事の第二回の今回は、読者から集めたそんな性に関するさまざまな悩みをテーマにモデルの畠山千明(はたけやま ちあき)とヘアスタイリストの畠山遥(はたけやま はるか)、そしてOopsでクリエイティブディレクターを務めるharu.に語り合ってもらった。夫婦でもあり、共に子育てをするパートナーでもある畠山夫妻は普段から、性に関する悩みをオープンに共有するようにしているという。ではいったいどのようにコミュニケーションを取れば、性に関する悩みを軽くすることができるのだろうか。
 前編では、3人の性に関する悩みへの対処法や、パートナー間でのコミュニケーションの方法などを教えてもらった。

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左からharu.、畠山千明、畠山遥

自分の体のことは、伝えなければ分かってもらない

 普段から夫婦間やパートナー間でも体の悩みや性の悩みを相談することがあるという3人。長く付き合っていく相手だからこそ、自分のことをよく知っていてほしい。だけどなんだか話しにくい。そんなふうに感じる人も多いのではないだろうか。3人はなぜ、そしてどのように体や性に関する悩みをパートナーとシェアしているのだろうか。

haru.:他のメディアなどでも記事を拝見して、千明さんと遥さんは普段から性の話をパートナー間でされているのはすごいなって思いました。自分の体の問題として一人で解決しがちな生理の話とかも共有されていますよね。

畠山千明:そうですね。夫婦だからというよりかは、一緒に暮らすパートナーだから言った方がいいのかなって。体調のことって言わないと伝わらなくて、自分一人で不機嫌になってもよくないと思うんですよね。

畠山遥:自分としても、なるべく理解はしたいんですけど、自分の身に起きていることではないからどれくらいの辛さなのかを把握し切るのは難しいなと思います。だから、その埋め合わせとして、実際にコミュニケーションしながら伝えてもらった方が、自分のなかのクエスチョンマークが萎んでいく感覚がありますね。

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haru.:「パートナーなんだから言わなくても分かってよ」という意見もあるじゃないですか。そもそも原因を伝えていないのに、感じ取ってくれないことにイラついてしまう、みたいな話はよく聞きます。そうではなくて、お二人が伝え合うようになったのはどういう経緯ですか?

畠山千明:うちの場合は、子どもができたことが大きいかもしれません。妊娠・出産して、ホルモンバランスが崩壊したり、ヒステリックになって落ち込んでしまったりしたんですよね。そうすると、怒る母と、情緒不安定な赤ちゃん、そして仕事で疲れてどうしたらいいのか分からない父みたいな感じになってしまって、このままじゃ家族を運営するのは難しいぞって気付いて。そんな失敗があってから話し合うようになりましたね。

畠山遥:結婚から7年経ったけどいまだにアップデート、アップデートで改善を重ねつつだよね。

人それぞれの症状だからこそクリニックへ

 パートナーとの関係性のなかで解決できる問題ももちろんあれば、自分たちだけで考えるのは不安、よく分からないという問題も発生するだろう。自分のこと、身近な人のこととはいえ、身体の中のことまでは分からない。そんなときにこそ活用したいのがクリニック。敷居が高いと思われがちな婦人科や性感染症内科はもっと気軽に活用できるのでは?3人が性の悩みに直面したときの解決法を教えてくれた。

畠山遥:僕は元々の性格も関係あるかもしれませんが、分からないことがあるとその都度ネットとかで調べています。

畠山千明:調べ魔だよね(笑)。

畠山遥:日常会話や、夫婦間の話し合いで議題に上がったことで「これってどういうこと?」「これってどういう症状?」と気になるものが出てきたら、そのままにしておくのが嫌なんです。割とオンタイムに調べて、対策まで分かりたいなって思います。

畠山千明:私の場合は、定期的に婦人科に行くようにもしています。出産しているので、乳がんや子宮頸がんの検査とかももちろんですが、ちょっとおりものが増えたとか小さな悩みでも行きますよ。行った後の結果は、彼にもシェアしています。私の体でもあるし、一緒に子育てして生活するパートナーでもあるので知っていてほしいなって。

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haru.:私もネットで調べたりももちろんするし、行きつけのお医者さんに聞いたりします。自分の体でも、少し違和感を感じても、何が起きているのか分からないってときありますよね。「なんかちょっと子宮が痛い…かも?」みたいな。

畠山千明:それ分かります!異常を感じていても、それが大きい問題なのか小さい問題なのか分からなくて怖いですよね。だから割とこまめに行きますね。

haru.:体のことって人によって症状が違うから、同じ女性でも友達同士で話したからって解決するとは限らないですよね。プロじゃないので。だからそういう問題はお医者さんに行っちゃった方が早かったりもしますよね。

畠山千明:このお話すると、「婦人科なんて1回も行ったことない」と言われることも多いですよね。もっと大きな問題になる前に早めに検査しな?って思うんですけど…。そんなに怖いところでもないし、いろんな人がいろんな理由で通っていますよね。

haru.:そうですね。検診で触診とかしたりというイメージが強いかもしれませんが、それだけじゃないですよね。ピルの相談に行ったり、自分の体調について相談する場所として使っています。あと、私はクリニックを今まで4軒くらい変えていて。意外とたくさんあるので、自分に合ったところを選べると思います。

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畠山千明:私も昔、婦人科のおじいちゃん先生に怒られて嫌な思いしたこともあって一回はトラウマになったのですが、今は安心して話せるお医者さんのところに通っています。性に関することって、人によっては嫌な質問されたりしちゃうから問診が負担になることもあったりするかもしれませんが、そういう場合は早急に別のお医者さんへ!

畠山遥:なるほど。僕は今まで運よく、クリニックに行かなければという状況になったことはないんですけど、今後もないかというと分からないですよね。今年31歳になる年で、少しずつ変化も出てくるのかなと思っているので、女性だけじゃなくて男性の僕ももう少し自分の体に向き合ってみてチェックしてもらうのは必要なのかもな。

セックスにおける対等性とは

 今回の企画では、前回の「Oops」コラボレーション記事で募集した性に関するお悩みについても3人がトーク。まず初めに3人が気になったのはこのお悩み。

普段の生活では男性も女性も対等な立場でいられるように意識して行動したり、極端に女性として扱われることに違和感を覚え、時には嫌悪感すら抱くのですが、セックスとなると所謂SMというか、精神的に立場に上下があるようなプレイを好んでしまいますし、女性としての悦びを感じてしまいます。そこに大きな矛盾がある気がしてモヤモヤしてしまいます。(るね 女性 ストレート 35歳)

 ジェンダー平等を意識したい自分と、セックスにおいては2人の間に立場の差があるようなプレイを好んでしまうことに矛盾や、もどかしさを感じるといった悩みだ。この悩みについて3人の意見は?

畠山遥:この場合は日常生活と、性生活は分けて考えてもいいんじゃないかな。普段はフラットな関係でいても、性生活においては立場に上下が出るようなのが嫌なのでなければ後ろめたく思う必要もないのかなと。ただ単純に好みとして、楽しめばいいと思います。人間、全部が全部統一されていなくてもいいんじゃないかな。

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畠山千明:私も同じように思うかな。社会的に男女平等を謳いたいというのはとっても分かります。でも、性生活においてそれを好んでしまうのであればただただ好みなので、性の好みと普段の関係性の好みは違っていいものだと思うな。

haru.:セックスするときに自分の扱われ方に対して、もし嫌だなって思うことがあれば、言ったほうがいいとは思います。お互いが心地よくいられているか、同意が取れているのかが前提としてあるのであればいいのではないでしょうか。SMプレーだって、どちらか1人だけが気持ちよくて成立するものではないですよね。お互いが気持ちいいよねと確認が取れる関係性であれば、自分が考える普段のパーソナリティとかけ離れてたセックスをしても統一性がないと悩む必要はないのかなって思います。

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 前編は、3人の性や体に関する悩みの解消方法やパートナーとのコミュニケーションの大切さについて語ってもらった。自力で解決できるときもあれば、パートナーとの話し合いや、医師を頼ることで解決する問題もあるかもしれない。性や体の悩みには思っているよりも幅広い解決の道筋があることを教えてもらったように思う。
 後編では、読者から寄せられた性のお悩みへの3人の回答が続く。解決方法も幅広ければ、悩みもさまざまな観点から寄せられている。一体どんな悩みが寄せられ、そして3人の会話からどんな解決の糸口が現れてくるだろうか。後編へ続く。

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畠山千明

1991年生まれ。モデル。初めてのオーディションの条件に合わせて髪をカットし、バズカットの女性モデルとして脚光を浴びる。現在は、子育てをしながらランウェイショーや雑誌等で活躍。また、最近ではビーズアクセサリーブランドの「chiaki no bi-zu」も立ち上げ、売り上げの寄付活動なども行う。▷Instagram

畠山遥
ヘアスタイリスト。明治神宮前のヘアサロン兼コーヒースタンド「whyte」に所属。1970~80年代のカルチャー・ファッションにも精通し、ヘアだけではない独自のスタイルを提案。DJとしての活動を行うことも。▷Instagram

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haru.

1995年2月生まれ。プロデュース事業・アーティストやクリエイターのサポート事業を行う株式会社HUGの取締役であり、インディペンデントマガジンHIGH(er)magazine編集長。HIGH(er)magazineでは「私たち若者の日常の延長線上にある個人レベルの問題」に焦点を当て、「同世代の人と一緒に考える場を作ること」をコンセプトにがファッション、アート、写真、映画、音楽などのさまざまな角度から切り込む。▷Twitter / Instagram

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