2013年に「マスクは仕方なく着けるものだ」という当時の“当たり前”を疑うことからスタートしたマスクブランド『PITTA MASK』。コロナ禍以前より、マスクの持つ可能性を信じ、現在では豊富なカラーバリエーションやサイズ、デザイン性や着け心地などを追い求め、「着けることが楽しいマスク」を提案し続けている。そんなこれまでの常識を越えてきた『PITTA MASK』と同様に、あらゆる物事を越えてきた、ラランド サーヤ、オカモトレイジ、SIRUP、長谷川ミラ、Grace Aimiの5人が考える「OVER THE ◯◯(◯◯を越えてきた / 越えていきたい)」を伺うインタビューシリーズ。
2017年にそれまでの名義を変え、ネクストチャプターへ歩みを進めたSIRUP。デビューから7年で、R&BやHipHop、Neo Soulをルーツに、オリジナルのサウンドを生み続けるとともに、自分自身、そして社会に対して素直なリリックで、着実に活動と信頼を広げ続けるアーティストの1人だ。自身の楽曲だけでなく、国内外問わず数多くのコラボ楽曲をリリースしながら2022年には武道館公演を成功させ、そして昨年はTOBEに移籍を発表した三宅健の移籍後1stシングルとなる『Ready To Dance』の楽曲提供や、自身がホストを務める『Grooving Night』の開催など、勢力的に音楽活動の幅を広げている。また、不平等な社会構造や法制度についてもアクティブに発信をし続けるSIRUP。そんな彼がこれまでに越えてきたもの、これからの未来にどのような可能性を感じているのか伺った。
SIRUPを通して、人と社会と繋がることが近道になるといい
ーまずSIRUPさんの音楽活動について教えてください。どんな音楽を、どんなメッセージとともに作っていますか?
SIRUPとしては今年で7年目で、歌い出してからは17年経つんですけど、初めはクラブで1人で活動しており、途中で同時進行的にライブハウスシーンでもバンド仲間と活動を始めました。当時も今と変わらずR&BやHipHop、NeoSoulをルーツとした音楽をしており、その頃は、ただがむしゃらに好きな音楽と自分の表現を探求して活動してましたね。それがSIRUPになってからは、世の中と自分の関係性が見えてくるようになり、もう少し社会に対して明確に発信する機会が増えていきました。活動を通して築いた影響力を社会のために使っていきたいという思いをこの4、5年で意識し始めて、今ではよりメッセージがはっきりしてきたなと思います。
ー自分の思いから、社会に目を向け始めたという変化は、どのような経緯やきっかけがあったのでしょうか?
SIRUPとして活動し始めて、それまでよりアーティストとして活動が広がっていくなかで、権力構造や音楽業界の問題などをより認識するようになったんです。そういった問題を自分たちで変えていくことが大切だと思っていたんですけど、そういった問題は長い歴史のなかで根深くなっていたことをコロナを通してより認識しました。コロナによって多くの選択肢が奪われ、必要な補償を受けられず身動きが取れないこの状態は政治が大きく影響していたんだなと。そんなタイミングで、そういった現状や政治の話をできるいろんな視点を持った友達が増えていき、かれらからいろんなことを学び、連帯し、自分が社会の中でどこにいるのか、どこにいたいのかが明確になっていきました。それに付随して、自分がアーティスト活動を通して築いた影響力を正しい形で、自分のペースで使っていかなくちゃいけないなと思うようになっていったんです。もちろん、それは同時にR&BやHipHopというカルチャーから学んでいた部分もあります。
ー現状に対して違和感を持ったり、社会や政治に目を向けるきっかけやコミュニティを私たちはどのように見つけていけると思いますか?
僕たちの場合は職種柄、繋がりやすいのはあったと思う。だから同じようにすぐに見つかるよとは言えないけど、活動するうえで目標にしていたことの一つとして、SIRUPのライブに来ることで、ファン同士や、社会に意識を向けている人同士が繋がっていってほしいなと思っています。この数年で、僕自身が発信してきたことをきっかけに、社会や政治に意識を向けているファンがめちゃくちゃ僕と一緒に学んでくれて、そういった人たちとSIRUPを通して繋がっていくことが近道になるんじゃないかな。それに、SNSってネガティブな視点で語られがちですけど、10年前よりも自分と近い感覚を持った人にアクセスしたり繋がったりしやすくなっていると思うんです。もちろん、自分とは違う意見を持った人もいるから、落ち込まないよう自分を守ることも大事ですけど、そのうえでSNSを使って繋がっていくのはいいんじゃないかなと思っています。
ーSIRUPを通して、現状について学び、コミュニティと繋がることで、未来に希望を持つ人たちの声もだんだんと大きくなっていきますね。同時に、社会に対して影響力を持つのは著名人やアーティストだけではなく、私たち一人ひとりが持っているものだと意識させられます。
そうなんですよ。よくファンアプリやインスタライブで社会問題や政治について話すと、「影響力ある方が発信してくれてありがとうございます」って言われることがあるんですけど、「僕の発信はリーチ数が大きいだけで、リアルな影響力を与えるのは一人ひとり個人でのアクションが一番大きいよ」といつも伝えています。家族や友達、職場や恋人間でも、あらゆる関係性において、直接的に誰かを変えようと思うアクションじゃなくても、自分の行動を意識したり、変えたりするだけで、周りの人でその行動を見ている人は必ずいる。僕が何かを言ったときの影響よりも、自分の生活圏内の人のアクションの方が、むしろ影響される威力は大きいと思っています。
「OVER THE GOAL」
いろんな人の選択肢を増やしたい。増やせる社会になってほしい
ーSIRUPさんは、音楽としてのアプローチ方法も、発信する場所も、境界や規範を越えてきたように感じますが、ご自身ではこれまでにどんな物事を越えてきた、変えてきたと感じますか?
もちろん社会を変えたいという気持ちはあるんですけど、「変える」って何かをひっくり返すみたいな印象があるじゃないですか。だけど、僕が目指しているのは単純に、いろんな人の選択肢を増やしたい、増やせる社会になってほしいということなんです。最近では、多様性という言葉が、「犯罪や加害、差別や偏見をも受け入れるのも多様性だ」という暴力的な解釈がされているなと感じるのですが、それは絶対に間違っている。多様性という言葉は平等な権利や機会を得られる状態を目指すために使われる言葉なので。そう考えると、「より良い社会のゴールを越えていく」っていうのはあるかもしれないですね。
誰しもが社会の影響を幼い頃から受けているけど、悪い意味での影響がゼロの状態の自分を知りたいし、その状態の社会で生きる世代が生まれるのを見たいです。こういう発信をしていると、つい「必要な社会の状態になる」という終わりを求めちゃうけど、そうすることで、終わらないことや変わらないことに苦しさを感じてしまうから、メンタルヘルス的にもゴールの先を見ていくのはいいかもしれないですね。
ー選択肢を増やしたい、増やせる社会にしたいと思った背景、そしてその社会を目指すうえで原動力となっていることを教えてください。
自分のことで言うと、僕は母子家庭で育ったんですけど、昔は「他の家とは違う」と思わされていたし、そのことをマイナスに感じていた時期もあったんです。大人になってからも、ミュージシャンをやっていると、小馬鹿にしてくる層はいるし、コロナ禍ではミュージシャン含む芸術業界が社会から蔑ろにされた感覚もありました。そんな自分を救いたい気持ちと、身の回りの友達が二度と苦しまない、嫌な気分にならない社会にしたいというのが一番の原動力になっていると思います。そこにはものすごく時間がかかるかもしれないけど、目指して死ぬのと、目指さずに死ぬのであれば、僕は目指して死にたい。
友達とお酒を飲んでいるときも、現状の苦しみを共有して、少し気持ちが晴れたらそのあとしょうもない話をしたりするけど、理想は永遠にしょうもない話をしていたいんです。そんな世界を正直生きたことがないから、想像できないけど、そんな世界で生きられたら最高。これはクリエイティブに関してもそうで、コンプライアンスを間違った角度で言っている人もいるけど、誰かを傷つけることを踏み台にせずにすごい作品を作る方がクリエイティブとして深いものになると思うんです。クリエイターの1人としても、そんな世界や作品がただ見たいんです。
ー最後にこれから何かを越えたい、変えたいと思っている人に向けてメッセージをお願いします。
どこまでいっても自分との闘い。でもその越えた先には新しい自分がいるし、そんな自分を楽しんでほしいです。そうすることできっと、いい友達を見つけられるし、自分を大切にする意味をしっかり分かるようになる。僕自身も、誰も傷つけないように生きることが、自分を傷つけないことにも繋がってきたし、どんどん楽になっていく感覚もあるんです。もちろんその過程で苦しいことを体験したり、世の中の悪いところもたくさん見えてしんどいこともあるけど、それは自分の問題というよりは、社会の問題だから、揺るがない自信を手に入れることができたと僕は思っています。根性論ではなく、頑張っていろんなものを乗り越えていってほしいです。
SIRUP
ラップと歌を自由に行き来するボーカルスタイルと、自身のルーツであるネオソウルやR&BにゴスペルとHIP HOPを融合した、ジャンルにとらわれず洗練されたサウンドで誰もがFEEL GOODとなれる音楽を発信している。国内外の音楽フェスやイベントに出演や、世界各国で愛されるアイリッシュ・ウイスキー「JAMESON 」とのコラボや、自動車メーカー「MINI Japan」とのコラボを発表するなど、日本を代表するR&Bシンガーとして音楽のみならず様々な分野でその活躍を広げている。
PITTA MASK
10年前、白い不織布マスクが当たり前の世の中に、PITTA MASKは登場。革新的なポリウレタン素材、独自形状によるフィット感、豊かなカラバリはいまや「マスクの新たな常識」となりました。常にマスクの新たな可能性でありつづけるブランド、それがPITTA MASKです。
SIRUPさんが着用した<グレー>を含む、全カラー全サイズのPITTA MASKを購入できるのはこちら。