「大好きなパートナーと日本で結婚したいから」「ダンスと政治も接続して考えられる」Kanと伊藤和真に聞いた選挙に行く理由

2021.10.29

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 残り2日となった2021年の衆議院選挙。期日前投票だけでも、全都道府県において前回2018年の衆議院選挙よりも投票率が上昇しているという。長い間、低下を続けてきた日本の投票率だが、ここ数年で人々の政治や社会問題への関心も高まってきたのかもしれない。
 若者の投票率を上昇させようと、大学内に設置された投票所や駅前に設置された投票所、さらには移動式の投票所なども登場している。各市区町村も、選挙への参加を促すための活動に積極的に取り組んでいるが、すでに投票を済ませた人も、これから投票に行く人も、投票する側となる私たちにはどんなことができるのだろうか。今回は、さまざまな分野で活動をする人々に選挙をテーマにインタビューしてみた。前編では日本の投票率を高めるために活動する有志プロジェクト「GOVOTEJAPAN」を立ち上げたクリエイティブディレクターの辻愛沙子(つじ あさこ)、そして哲学者の永井玲衣(ながい れい)に話を聞いた。後編となる今回は、政策共創プラットフォーム「PoliPoli」代表の伊藤和真(いとう かずま)と、Netflixオリジナルシリーズ『クィア・アイ』に出演し、2021年9月に同性パートナーとの結婚を機にイギリスへの移住を発表したKanに話を聞いた。

伊藤和真(いとう かずま)

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ーあなたにとって選挙とは何のためのものですか?

意見を伝えるために行くものです。政治は社会のあり方を決める意思決定行為で、そのために政策や法律、予算を作っていくと思うんですけど、そこに自分の意見を反映することが選挙の意味かなと考えています。

ー伊藤さんが最初に政治に興味を持ったきっかけを教えてください。

僕は今22歳なんですけど、4年前の18歳のときに初めて衆議院選挙がありました。当時はまだあまり政治に興味はなくて、政治って大事そうだけどよく分からない、なんだか政治と国民の距離が遠いと思っていました。それで、ふと街頭演説を目にして政治ってこんなにアナログなのかと気づいたんですよね。当時、インターネットサービスを作っていたので、同じようにデジタル化していったらいいのにと思ったのが最初に興味を持ったきっかけです。そのあとは、直接街頭演説をしている政治家さんに話しかけたりしながら、政治について勉強してもっと興味を持つようになりました。

ー初めて選挙行ったときのことは覚えていますか。

覚えてます!投票所だと、どの人がどんな政策を持っているのかとか、どの人がどのくらい実行力があるのかとか正直分からなかったなという記憶があります。なので、今運営しているPoliPoliも、少しでも政策がちゃんと伝わるような仕組みを作ろうと思いました。

ー選挙のときにはどんなふうに情報を集めて、投票先を決めていますか?

PoliPoliと言いたいところなんですが、まだ網羅性が足りないので、僕は候補者のホームページの政策欄とかネット上の情報もよく見ています。そのうえで、これまでどんな発言をしているのかなど、議会の議事録を見たりもします。あとはTwitterなど、インターネットを活用して発信しているかという点も、僕のなかでは一つの指標にしています。昔よりも社会が多様化してきていて、そんななかで政策を作っていくのならいろんな人の意見を聞くためにインターネットも活用した方がいいと思うし、そういう議員さんがいいなと僕個人としては思っています。

ー若者の投票率が低い状況が続いていますが、若者が投票することでどんないいことがあると思いますか?

若者向けの政策が重視されるとは思います。もちろん今も全く無視されているとは思いませんが今よりもさらに重視されると思います。例えば、若者の投票率が9割とかになったらかなりのパワーになりますよね。そうなれば、すぐにではなくても次の選挙に向けて、若い人向けの政策やPRが展開されていくと思います。それが、間接民主主義だと思います。

ーまだ選挙に行ったことがない人やあまり積極的に参加していない人を、選挙に誘うとしたらどう声をかけますか?

僕も、あまり政治に興味がなかった頃は政治の話って怖いみたいなイメージがありました。でも、政治に興味を持ってもらうとしたら、自分やその相手の興味のあるイシューから語るのが大事なんじゃないかなって思っています。
例えば、僕はダンスが好きで大学のサークルにも所属しているのですが、ダンスと政治も接続して考えられると思うんですよね。街中とかだと練習場所がないこととか、周りを気にして練習しようと思うと夜遅くにやらざるを得なかったり、民間施設を使用しようとしても高かったり。競技人口が増えていたり、パフォーマンスとして価値があると認められ始めているのに、身近に踊るための場所がないんですよね。そんななかでも、自治体によってはちゃんと場所を整備してくれたりしていて、それって実は関係ないように見えてダンスと政治は繋がっているってことですよね。
同じようにダンス以外にも奨学金の問題や、環境問題、ジェンダーの問題とか本当にいろんなものが、政治に関わっているってことを伝えるのがいいと思います。だから、自分の生活や自分の幸せのために投票行こうよって話します。

ー選挙に行くときはどんなファッションで行きたいですか?

ファッションか、全然考えたことなかったな(笑)。でもラフに、気軽に行きたいです。一応ちゃんとした場所というか、ちゃんとした機会なのである程度は整えたいですが、力を入れすぎずに行きたいなと思っています。政治もそういうものだと思っているところがあって、日常にあるものであったらいいなって。

ー投票に行った後に外食するならどこに行きますか?

そのときの気分による気もしますが何食べたいかな…。めちゃくちゃ難しい(笑)。僕は、投票は期日前に行こうかなって思っていて、いつも大体一人で行きます。やっぱりまだちょっと投票するときには緊張するんですよね。だから、よく考えて緊張しながら投票したあとは、ラフにハンバーガーとかがいいのかも。

ーあなたが実現したい社会はどんな社会ですか?

政治がもっと身近なものになったらいいなって思っています。政局争いとか、ニュースを見ていると政治は難しいし、怖いものって僕も思っていました。でも、政治って暮らしの延長上にあるものなので、もっとフラットに「こうした方がいいよね」と話せるようになったらいいなと思っています。そして、批判するだけではなくて、「一緒に考えていこうよ」って言い合える、そんな世の中になったらいいなって思います。

Kan

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Photography: Aleksandar Dragicevic

ーあなたにとって選挙とは何のためのものですか?

僕が選挙に行く一番の理由は、大好きなパートナーと日本で結婚したいからです。日本では、パートナーが同性であるという理由で、結婚することができません。そのため僕は今年の7月に生まれ育った日本を離れ、パートナーの出身国であるイギリスに移住し、パートナーとイギリスで結婚しました。パンデミックになり観光客がイギリスから日本へ入国することができず、僕たちにとって再会するための、また一緒に過ごすための唯一の方法は、僕が日本を離れイギリスで結婚することでした。僕の大切なパートナーは、日本では法的に家族ではなく、今も観光客として扱われ日本へ入国できません。日本で結婚したいです。だから僕は投票します。

ー選挙のときにはどんなふうに情報を集めて、投票先を決めていますか?

選挙によってバラバラですが、今回はまず各政党と候補者の公式ウェブサイトで公約や考え方を確認しました。ただ、公式ウェブサイトは政党や候補者によって記載の形式が異なるため政党同士や候補者同士の比較が難しいと感じました。そのため、Japan Choiceさんの投票ナビを利用したり、公約を比較するウェブサイトやSNSアカウントをいくつか確認したりしました。Japan Choiceさんの投票ナビは、16の質問に答えるだけで自分の意見と各政党の考えがどれぐらいマッチしているか分かるのでおすすめです。最後に関心のある政党と候補者の公式ウェブサイトをもう一度調べ、投票先を決めました。

ー初めて選挙に行く人が準備した方がいいものはありますか?

あまり準備しなくてもいいかもしれないと思ったりもします。人によっては、選挙に行くために「準備をしよう」と気負いすぎて選挙に行くのが億劫になってしまう人もいるのではないでしょうか。市区町村によっては、投票案内のお知らせを持っていなくても対応してくださることもあるようです。自分のできる範囲で政党や候補者を調べ、とにかく投票所に行って、投票してみることが大切だと思います。投票所が近ければ、忘れ物をして投票できなくても取りに帰ればいいです。

ー若者の投票率が低い状況が続いていますが、若者が投票することでどんないいことがあると思いますか?

僕は、投票するということは自分の意見が政治に反映され、自分や似たような状況の人たちにとって生きやすい社会をつくる行為だと思っています。なので、若者の投票率が上がれば若者にとって日本が生きやすい社会になっていくのではないでしょうか。ある試算によると前回の衆院選では、20代前半の投票数は60代後半の投票数の1/4以下だったそうです。つまり、それだけ若者の声が政治に取り入れられない可能性があるということです。年代別の人口に差があるため、たとえ全人口が投票したとしても、20代前半の投票数が60代後半を超えることはありませんが、少しでも多くの若者が投票することで自分の意見を政治に反映し、みんなにとって生きやすい社会をつくる必要があると感じています。

ー今まで投票に行ったことがない人を選挙に誘うとしたらどのように言葉をかけますか?

僕は、できるだけ多くの人が自分のことや社会について考え、投票するのが良いと思っていますが、何事にも人それぞれの考え方があると思います。なので、投票に行ったことがない人を誘うのではなくて、自分が投票に行くことや行ったことを伝えると思います。人によっては、自分のことや社会について考え投票することが苦しい人や投票したくてもできない人がいることを心に留めておきたいです。

ー選挙に行くときはどんなファッションで行きたいですか?

今はイギリスに住んでいるので、すでに在外投票を済ませたのですが、そのときは投票後に友人と会う予定があったので、おしゃれしました。投票することが目的なのでどんなファッションでも構わないと思いますが、おしゃれをすることで投票する気持ちが高まるのであれば、おしゃれするに越したことはないと思います。

ー投票に行った後に外食するならどこに行きますか?

投票に行った後というよりは、どちらかというと海外在住によるものなのですが、おいしい日本食が食べたいです。

ーあなたが実現したい社会はどんな社会ですか?

日本社会でそれぞれの将来が思い描けるよう、選択肢を増やしてほしいと思っています。僕が日本で将来を描けないと特に感じたのは、同性パートナーと結婚できないからでした。自分の経験から、ジェンダーに関わらず愛する二人が結婚できる選択肢がほしいです。また、選択的夫婦別姓も選択したい人たちが選択できるよう法制化してほしいと思っています。

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GOVOTEJAPAN

2021年10月の衆議院議員総選挙を皮切りに立ち上がった日本の投票率を高めるための活動を行う社団法人。特定の政党や主義主張を支援するものではなく、中立の立場で「選挙に行こう」のスローガンのもと活動を行う。株式会社arca代表の辻愛沙子、株式会社FRAGEN代表の田代伶奈、DE inc,代表の牧野圭太が発起人となり、メディアでの情報発信や、SNSを駆使した企画、さまざまな企業とのコラボレーション企画を実施する。
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伊藤和真(いとう かずま)

俳句SNSアプリ「俳句てふてふ」を毎日新聞に事業売却するとともに、慶應義塾大学1年時にPoliPoliを創業。政治家向けの政策共創プラットフォーム「PoliPoli」、行政向けの政策共創プラットフォーム「PoliPoli Gov」などを運営する。九州大学 非常勤講師、TOKYO MX テレビ「堀潤モーニングFLAG」、TBSテレビ「サンデー・ジャポン」などのテレビコメンテーター、世界経済フォーラム「Global Shapers」などもつとめる。
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Kan

2019年、Netflixの番組『クィア・アイ in Japan!』に出演。性的マイノリティ当事者として、自分らしさやセクシュアリティについてSNSでの発信や企業・学校での講演を行う。2020年には「REING」のジェンダーニュートラルアンダーウェアのモデル、ジュエリーブランド「Hirotaka」のモデルをつとめる。2021年9月にイギリスで結婚、現在はイギリス人の夫とロンドンに在住。NEUTでの取材はこちら。▷Twitter / Instagram

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