前の世代の人たちとは異なる“攻撃的じゃない方法”で、海洋の環境問題を発信するアーティビストの声

Text: 井上 龍馬

2018.12.3

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ストリートアートと聞いて、どんなモノを思い浮かべるだろうか。もし、違法なラクガキを思い浮かべているのなら、それはこれから古い考えになるかもしれない。

ハワイを拠点にするNPO法人であるPangeaSeed Foundation(パンジアシード ファウンデーション)はストリートアートを通して海洋保護を訴えるイベントを世界各地で行なっている。

現在までに14ヶ国で350ヶ所以上の海洋保護をテーマにした作品を、250人を超えるアーティストたちと協力して作り上げてきた。魚の体内から見つかるマイクロプラスチックなどの汚染物質の問題や絶滅の危機に追いやられている海洋生物の問題など、さまざまな海洋保護に関わる問題をストリートアートという形で公共の場に残してきた。参加するアーティストたちは、その才能と、大切な時間をボランティアとして提供している。

それらのストリートアートは許可を得て作られる合法のもので、海洋保護を訴えるだけではなく、ストリートアートのネガティブなイメージを払拭し、さらにはパブリックアートとして街を彩どり、活気を与えるものでもある。

そんなPangeaSeed Foundationは、日本を含む様々な国での開催を目指している。筆者は現在、彼らと共に日本国内でストリートアートを制作可能な壁や、共催できる団体を探している。そこで、彼らの活動を日本の皆さんに知ってもらうべく、創設者のPackard Tre’ (パッカード トレ)氏とオペレーションディレクターであるBiondo Akira(ビオンド 晶)氏に話をうかがった。

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左 Tre’氏 右 Akira氏
Photography: Emily Raftery

ーはじめに、あなたたち自身について教えてください。

Tre’ :僕の名前はTre’ Packard。アメリカ出身で、PangeaSeed Foundationの創設者。今は、ハワイを拠点に活動しているよ。

Akira:私はAkira Biondo。スイス出身で、PangeaSeed Foundationのオペレーションディレクター。 同じくハワイを拠点に活動中。

ー早速ですが、PangeaSeed Foundationの創設に到るまでの物語を教えてもらえますか?

Tre’ :PangeaSeed Foundationは、2009年に日本で設立したよ。

当時、海洋保護、特にサメの保護に対する関心を高めたくて何かしたいと思っていたんだ。ただ、そういった保護活動は過激や保守的なものだったり、“意識が高い”と思われたりしてネガティブなものとして捉えられていた。僕らがやりたかったのは、”クリエイティビティ”を使って、ポジティブに、今どういった問題が起きているのかを少しでも多くの人に気づいてもらうことだったんだ。

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Artwork: SONNY
Photography: Tre’ Packard

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Photography: Tre’ Packard

ーふたりが海洋保護に目を向けるようになったのはなぜですか?ふたりの海に対する思いはどこからきているのでしょうか?

Akira:私の場合はスイスで育ったから、海が近くにある生活はしてこなかった。けど、小さいときから休暇はいつも海で過ごしてた。家族が4歳の誕生日にWWF(世界自然保護基金)のメンバーシップに私を登録してくれたの。それから、海洋保護に関してや、絶滅危惧種に関する本とかに興味を持つようになった。私のように海が近くにある生活はしてこなくても、私たち人類や、全ての生物にも必要な酸素の70%が海で作られているから、環境を守らないとって思い始めたの。

Tre’ :海の近くで育ったので、小さい頃から海は僕にとって近い存在だった。数年かけて東南アジアを旅行して、野生生物の違法取引を記録していたときに大切に思ってきた海が、毎日のように破壊されているのを目の当たりにしたんだ。それから、問題に目を向けて、みんなにも伝えたいと思って。それがPangeaSeed Foundationの設立のきっかけのひとつ。

ーふたりの活動は「ARTivism(アーティビズム)」ですよね。最近、海外ではちらほら聞かれるようになってきた「ARTivism」という言葉はまだ日本では馴染みが深くないのですが、何を意味しているのでしょうか?

Akira:「ART(芸術)」と「ACTIVISM(運動)」の混ざりあった言葉で、まさにこのふたつが融合したもの。“クリエイティビティ”を、目的のために使うんだ。アートというツールを使い、私たちのメッセージを届けるということ。

この言葉は、私たちが生み出したものじゃないけど、私たちがやっていることにぴったり。アートを使って、海洋保護に関するメッセージを届ける。力を貸してくれるアーティストはARTivist(アーティビスト)って呼んでるよ。

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Artwork: Freeman White
Photography: Tre’ Packard

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Artwork: Lisa King
Photography: Tre’ Packard

ーアートと言っても、いろんなアートがありますが、なぜ違法行為として認識されがちなストリートアートで、海洋保護を訴えようと思ったのでしょうか?

Tre’:確かにストリートアートには、そういうネガティブな部分があるよね。ただ、古い考えだとは思わない?ロックンロールが出てきたときだって同じだったよ。ロックは暴力的だ、みたいな。新しいものが出てくるときって、決まって、古い考えをもった前の世代が理解しようとしないんだよね。

そんな前の世代の人たちは、海洋の環境問題に関して何もしてこなかった。科学的な根拠があったにも関わらずね。自分たちが死んでしまうからどうでもいいって思っているのかもしれないけど、そんなのおかしい。

ストリートアートなら、カッコイイとかスゴいって気持ちから今とこれからの世代の心をつなぎ、海洋保護について一緒に考えられると思う。

僕らは時代のパイオニアになろうとしてるんだ。ストリートアートという新しい方法で、人々の心をつないでいきたい。そして、何より、ストリートアートが好きなんだ。僕らはストリートアートにある力を信じている。

ーホームページ上にPaint for a purpose(目的を持って描く)とありますが、目的を持って描くことはなぜ大事なのでしょうか?

Tre’:アートを仕事にして、それで食べていけるってのは素晴らしいことだよね。けど、そんなアートを見てくれる人たちに何かメッセージを届けられるなら、それを使わない手はないはず。それぞれのアーティストが才能と影響を環境問題などを訴えるために責任を持って使い、InstagramやFacebookなどのSNSを利用してて、多くの人にメッセージを伝えることができる。

だから、そんな才能を環境問題などを訴えるために使っていくのか、それとも商業的な目的だったり、目先のお金のためだけに使ってしまうのかってのは大きな違いを生むよ。

ー今後の目標はなんですか?

Tre’:こういった気候変動の環境問題の解決には大きな壁がある。少なくとも、僕が生きている間には絶対に解決されないと思うんだ。今後、数百年も数千年もかかってしまう問題だから海洋問題を解決するのにゴールはないんだ。ただ強いて言うなら、もっと、常にみんなが海を守ろっていう気持ちにさせるのがゴールだね。

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Artwork: Onur
Photography: Tre’ Packard

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Artwork: Frank
Photography: Tre’ Packard

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Artwork: Seth
Photography: Tre’ Packard

世の中すべての人々が、海洋で起こる環境問題を常日頃から考えていたり、なにか行動を起こしたりしたいと思っているわけではない。しかしながら、こうしたアートという切り口が、海洋での環境問題について考えるキッカケになってくれるかもしれない。

いうまでもなく、問題を認識するということは、問題の解決につながる大きな一歩だ。今後、ストリートアートを見つけたときには、どんな思いが込められているのか少し想像してみると良いかもしれない。

PangeaSeed Foundation

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SeaWalls: Artists for Oceans

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井上龍馬

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1992年生まれ / 北海道出身

ニュージーランドのパン屋でバリスタ/マネージャーとして働きながら、ライター/翻訳/コーディネーターとして活動。

ニュージーランドでの地域活性化を目的としたストリートアート フェスティバルに参加して以来、ストリートアートの力にさまざまな可能性を感じる。

ニュージーランドのストリートアート イベントを中心に参加しつつ、日本でストリートアートを通した地域活性化や環境問題 / 国際協力に関して声をあげるイベントをするために活動中。PangeaSeed Foundationと共に、海洋保護を訴えるイベントを日本で行うために、日本国内でストリートアートを描ける壁を探している。

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