Think the Earth 谷口 西欧の「社会課題」を押し付けない“流儀”     

Text: Jun Hirayama

Photography: Tomoko Suzuki

2016.1.12

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「エコ」や「エシカル」ってテーマが広すぎて、どこからアプローチすればいいのかわからない。そんな迷える人々の前に、社会課題を‟自分ごと化”するヒントを伝えるため一人の男が立ち上がった。

‟空気”を創って、問題解決

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代官山駅から徒歩5分の裏路地にあるシェアオフィスに小走りで現れたのは、一般社団法人 Think the Earthに所属する谷口 西欧(たにぐち せお)だ。坊主頭に眼鏡。どこか中田英寿を思わせるその風貌で、取材陣は緊張していた。「スペイン生まれなので、(名前が)『西欧(せお)』なんですよ。実はね、調べてみたら、日本に『南欧(なお)』という方がいるらしくて。ぜひ、会いたいんですよねー」と目元にシワをいっぱいつくり笑う。その好奇心旺盛で人懐っこい人柄が、ピンと張りつめていた空気を一気に変えた。

谷口は、所属する一般社団法人 Think the Earthと、自身が運営するワークショップ「自分ごと化エッセンス」を通して、環境問題、社会の課題を解決して行く手助けをしている。社会課題をテーマとするプロジェクトのコンサルタント、クリエイティブプロデューサー、そして「中立な立場で議題を進め、参加者の状況を見ながら、全員が発言できるように促す仕事」であるファシリテーターとして活躍中。間を取り持ち、空気をつくり、参加者のモチベーションを上げ、問題解決へと導く。これが、谷口のプロフェッションだ。

‟エシカル”を無理にオススメしない

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企業に所属する人と仕事をする際に、エシカルやエコロジーのテーマを掲げると『私、前からこれやりたかったんです!』っていう人はなかなかいないのが現状なわけで…テーマも広すぎて考えるのも難しいし、『全然興味のない分野なのに、担当になっちゃった』という人もいるんですね。その人たちに社会的な課題を‟自分ごと化”する働きかけをしているんです。

市民団体が政治的影響力をもつとされる海外に比べ、「企業社会」と言われる日本では「会社が変われば、社会が変わる」と期待する人が多いそうだ。だからこそ、企業であっても、そこに関わる個人が「社会問題を‟自分ごと化”」する大切な場でもあると意識してプロジェクトをすすめる。そのことで継続的な取り組みへと繋がり、社会的に大きな変化が期待できると谷口はいう。

それに、「個人は自分の好きなこと、日常の導線の延長線上でコミットするテーマが見つけられれば、自然と“自分ごと化” されると思うんです」。

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“コーヒー好き”ならば、この豆はフェアトレードか、どうやって育てられたのか、「おいしいコーヒーだな、なんでだろう」など考えることが“エシカル”に繋がるというのだ。エシカルのような幅広いテーマを、漠然と「自分ごと化」しようとすると大変なこと。まして、問題意識や当事者としての認識がない人に、「自分ごとにさせたい」と思えば思うほど、人は押し付けがましく感じてしまいがち。だから谷口は、あえて無理に押し付けたりせず、「エシカルについては“自分ごと” 化しない」 といったん手放す。そうすることで、無理なくコミットできるテーマに出会えることがあるのだ。

校則のない学校で生まれた「自分ごと化エッセンス」の原点

1976年スペイン・バルセロナ生まれ、イビサ島育ち。現地に日本人はほとんどいない環境の中育った彼は「『中国人だ!』とからかわれていた」と笑う。その後、小学生のときに日本に帰国し、埼玉県のジブリにでてきそうな日本家屋で暮らしながら、大自然に囲まれて育った。

今の谷口の活動を意識させたのは、中・高の学生時代だ。校則がない学校に通い、制服もない、欠席しても特になにもいわれない、全てが自由。問題が起きたときや何かを決定するときは、「話し合い」をする。当時、授業に出席しない生徒がいた。

「なんで出席しないの?」「一緒にでようよ、楽しいよ」「授業はでるべきだ!」とか、ただ毎回話し合いをしているのもしんどいんですよ」。

そこで思いついたのが、黒板の端っこに“授業の予告”を書くことだった。毎朝先生のところに行き「今日の授業なんですか」と聞いて、「こんな授業をするらしいよ」とチョークで書いたのだ。

授業に出ない生徒に『あ、これなら授業に出てみようかな』って思ってもらえたいいなと。当時は“クリエイティブに”なんて意識していなかったけど、ただただ楽しく出席できる“きっかけ”になればと思ったんです。『should ~(~すべき)』を『want to~(~したい)』に変える意識が芽生えたんです。それが今の自分の活動に繋がっているかもしれませんね。

校則がない環境で、「should ~(~すべき)」を「want to~(~したい)」に意識変換させたひらめき。これが、谷口の「自分ごと化エッセンス」の原点なのだ。

‟エシカルな人”を育て、 ‟エシカルな人”が溢れる「世界」に

“自分ごと化”のプロセスには、大切なポイントがあるという。それは「待つこと」。ものごとを前に進めるとき、同じことの繰り返しは避けがちだが、一見無駄に見えるその時間こそが、かかわる人たちの内でゆっくりと「自分ごと化」されていく大切な要素だったりする。会社のような会議の場では時間の制約もあって両立が難しいが、ただ人を集めて、話し合いをすればいいわけではない。

「人や社会のポジティブな変化に寄り添うように関わっていきたい、その場づくりに少しでも役に立てるようになりたい。それがこれからの僕の目標です」

エコや環境問題の分野では、すてきな‟モノ‟と‟コト‟が溢れている。そして次は‟人‟だ。谷口が創り出す空気感に感化され、エシカルに目覚める人も増えるかもしれない。「自分ごと化エッセンス」のワークショップは始動したばかり。谷口はまさに全力疾走中だ。彼が創り上げる空気感の中で、どんな新しい風が吹くのか今後も注目していきたい。

谷口 西欧(たにぐち せお)

1976年バルセロナ生まれ。主に企業の環境問題や社会課題をテーマとするプロジェクトのコンサルティング、制作仕事のディレクション、プロデュースを担当。エシカルファッションカレッジは立ち上げから参画。企画、制作マネジメントを担当。現在、自身のワークショップ「自分ごと化エッセンス」でも活動の幅を広げている。

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一般社団法人 Think the Earth

「エコロジーとエコノミーの共存」をテーマにしており、持続可能な社会の実現に向け、 クリエティブとコミュニケーションの力で、環境問題や社会問題への無関心を減らし、 Think the Earthする人(=地球的視野で考え行動する人)を 世界中に育て、増やしていくことを目指している。主にクリエイティブに発信すること、中間支援型のNPOとして人と社会をつ
なぐ役目、そしてラーニング(学び)の場を提供することがミッションとなっている。

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※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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