社会言語学において「バイリンガル」は「多重人格」であることが判明

Text: HINAKO OHNO

2017.4.28

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自分の性格はひとつであると思いこんでいないだろうか?

「性格」とは物心ついたころから必ず向き合わされる事柄である。恥ずかしがり屋の自分が突然目立ちたがり屋になったり、おしゃべりな人が突然無口な人になったりする、なんてことはなかなか起きないような気がする。しかし、「違う性格の自分」を得ることができる方法がひとつある。

「違う性格の自分」を得る方法

その方法とは、「話す言語を増やす」ということだ。あなたが今日本語しか話せないならば、英語を話せるようになってみるといい。すると、英語を話しているときのあなたは、日本語を話しているときとは違う性格のあなたになるという。

まさか、と思うかもしれないがこれは社会言語学において証明されている。

アメリカ文化人類学」において、社会言語学者のエルビン・トリップはサンフランシスコに住む日本人女性を対象にした実験結果を発表している。対象となった日本人女性の多くはアメリカ人と結婚しており、子どもを持つ。日本人コミュニティからは離れ、日本語を話すのは日本に行ったときと、バイリンガルの友人と話すときのみだ。ここからわかるのは、彼女たちは日本語を母語としているものの、現在の環境からほとんど英語を使って生活しているということだ。

エルビン・トリップは彼女たちに英語と日本語で簡単なインタビューを行った。そこで明らかになったのは同じ質問に対して、言語が異なると回答も異なることがわかった。さらに回答の際の話し方も変化していたという。話し方に関しては、英語を話す人を見ているだけでも、表情の変化の具合やボディランゲージが使われていたりと違いがわかる。
 
では彼女たちの回答の一部を見てみよう。

1. 自分の将来の夢を巡って家族と揉め事になったら?
(日本語での回答)それは本当に深刻
(英語での回答)私のやりたいことをやるわ

2.今後私がなりうるのは?
(日本語での回答)主婦
(英語での回答)先生

3.あなたが彼女(彼)の本当の友達ならどうすべきか?
(日本語での回答)お互いに助け合うべき
(英語での回答)全く気を遣わずにいられる

(参照元:New Prepublic

これが同一人物の回答であると信じられるだろうか?回答がほとんど真逆ともとれるほどには変化が見られる。1と2の回答を見てみると、日本語を話すときの彼女は消極的に感じる。一方で英語を話すときは我が強い印象だ。

話す言語が増えれば自分の幅も広がる

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話す言語によって違う性格になるということは、新たな自分がもうひとりいるようなものだ。しかし話す言語が増えるということは、世界中にコミュニケーションを取れる人々が増えるということにもなる。母語とは違う国の人々の考え方や価値観も入ってくるのだ。

ということは、言語を習得したら自分も世界も広がるのだ。何か始めてみたいと思っている方は趣味として是非新たな言語を学んでみて欲しい。あなたも新たな言語を学んで未知の自分に出会ってみてはどうだろうか?

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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