“ポップアップストアの限界点”を感じた男が、販売を目的にしない「フラットなリアル店舗」を作る理由|ALL YOURS木村のLIFE-SPECの作り方 #015

Text: Masashi Kimura

Photography: ALL YOURS unless otherwise stated.

2018.4.19

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池尻大橋の“新店舗”からこんにちは!ALL YOURSというお店でDEEPER’S WEARというブランドを取り扱っている、木村 昌史(きむら まさし)がお送りします。

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池尻大橋のレインボー倉庫に1坪ちょっとの小さいお店を始めておかげさまで丸々2年。この場でいろんな人に会って、きっかけをもらったり、偶然新しいものが生まれたり、とんでもない記録を出したり、ほんとにすごい体験をさせていただきました。そんな素晴らしい季節を過ごして、このたび僕らは移転し、新店舗を作ることになりました。場所はほとんど変わらず池尻大橋。4月23日(月)からプレオープン、4月27日(金)にオープンを迎えます。その期間は色々なイベントを仕込んでいきますので、どうぞご期待ください。

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今回は「お店」という視点で僕自身が3年半ブランドを運営して感じたこや、僕なりの考えを書きます。これは、新しくブランドを始めたい。とか自分で物販ビジネスを立ち上げたい。って人たちの参考になれば嬉しいと思っています。

余談ですが、これは先日開催した Be inspired!との共同イベント『(un)TREND』もそうです。あのイベントに参加したいブランドを増やしたい。新しいブランドが生まれて、選ぶ選択肢が増えるって、いいことだと思うから。

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ウィンドウショッピングは死んだ。

最近、よく聞かれます。

「今からブランドを始めようと思ったら、やっぱオンラインだけでやるのが良いんですかね?」

オンラインとオフライン、どちらが優れているか?という議論は意味がないと個人的には思っている。それは、重要なのはオフだろうが、オンだろうが、重要なのは「接点」だから。

ただ、はっきりいって、ブランド立ち上げの初期では余程の資金的な余裕がない限り、店舗出店はオススメしません。店舗は「不動産」という字が表すとおり、動けないからです。お店は「静的」で「待ち」の側面があります。集客力がないうちからお店を持つと、この側面が大きな負担にしかならない。特にスタート初期の資金ではなかなか一等地に出すことは難しく、交通量の少ない場所が出店候補になることが多いからです。また、最近の買い物の動向を考えても「ネットで検索→実物確認→購入」という流れが多く、最初から調べて来て目的買い、指名買いのお客さんがほとんど。みんな、お店に答え合わせに来てもらってると思っていい。

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なにか良いものがないか?あてもなく探して歩くようなウィンドウショッピングをしている人は今や絶滅危惧種。出会い頭の衝動買いってのはもちろんあるけれど、今は行きたいお店、入るお店だってあらかじめ検索してから来ている人が多いはずだ。

じゃあオンラインのみで頑張る!といっても検索されなきゃ購入されない。特に物販で洋服売っていると、「実物が見たい」「サイズがわからない」など、実物を見られる環境がどうしても必要になってきます。オンラインオンリーで始めても、結局リアルの重要性を直視させられます。やはり初期段階では知名度をあげなくちゃいけないから、お客さんとの接点を作っていくことが一番重要。それを実現するための機会が「POP UP STORE」なのです。

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POP UP STORE はネオテキ屋だ。

接点を作る機能としてのPOP UP STOREの考え方は大昔からあることなんで、そんなに珍しいことじゃない。お店があるから売れるんじゃなくて、人が集まるから商売が成り立つ。これが原理原則だと思う。

「お祭りのテキ屋は365日、同じ神社の境内にお店を出しているか?」

固定されたスペースで待っているより、人が集まる場所へ自ら出向く。そこでのコミュニケーションが貴重な財産になっていく。僕らが池尻大橋のレインボー倉庫に居を構えたのもこの理由からなんだよね。

1. 「知名度=集客」になるリアル店舗の運営コストを下げる。
2. 下げたコストでPOP UPへ投資。繰り返して接点を作る。

クラウドファンディングを活用して、オンラインで見た人が実物確認できる常設の場所を低コストで確保しながら、親和性の高い場所へPOP UPとして出店(投資)していく。僕らはとにかくこれを繰り返した。そう、POP UP STOREは出店場所の自由度が広がった、現代的な「ネオテキ屋」なのだ。

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3年近く、POP UP STOREを繰り返した。ほぼ毎週のように、各地を転々と動き回った。

売れないバンドのように、スタッフと機材を積み込んで。そこで出会った人たちは、かけがえのない友人たちだ。出会いがきっかけで意外なプロジェクトに繋がったりもしている。そんな人たちが今の僕らを支えてくれていると言っても過言ではない。場数を踏んだことでイベントにも慣れて、ほぼどんな立地条件でも対応できる底力がついたし、それなりにローカルの特徴を知ることもできた。ただ、POP UP STOREの限界点も同時に感じた。

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それは、やればやるほど根無し草な存在であるということ。もちろん、共同主催していただいている現地の方はみなさん暖かくて最高なのですが、主催していただいている方のコミュニティにお邪魔しているので、自分たちのカルチャーではなく、あくまでも借りものの中で遊ばせていただいているという実感。

また、販売展示会などの大きいイベントに出店しても、あれやこれやルールが多すぎて、コンテンツが販売のみになってしまい、自分たちのブランドとしてのオリジナリティが発揮しづらい。ただの小売業として販売するだけなら、そのままでよかったかもしれない。

でも僕らが作りたいのは、カルチャー。コミュニケーションをベースにした文化を作りたい。そんな思いがどんどん強くなってきました。

また、しばらく直営店として運営していた池尻大橋のレインボー倉庫(ローコストで始められるので、レインボー倉庫はまじでオススメですが)。コストを最小限に抑えたショールームって位置付けだったのだけど売り場と試着室が一緒のスペースなのもあって、試着をしたい人がいると商品見ているお客さんたちが全員外に出て行かなくてはいけない状況が発生してしまいました。時には「試着して購入まで2時間待ち」みたいなケースが出てきてしまい、サービスレベルを考えても、お待たせしすぎで良くないし、お待たせしていることを気にするスタッフにも精神的に良くない。

「カルチャーを作りたい」という思いを形にするため、そして「現実的に購入にストレスが出てきてしまう」という問題を解決するためには拠点が従来のPOP UPじゃ作れないということで、自分たちのルールで自由に使える「リアル店舗」をもつしかないとなったのです。

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「お店は誰のもの?」を考えるお店。

リアル店舗の最も重要なことは販売じゃない。それはブランドを表現する一部分に過ぎないのだ。そのブランドの姿勢を発揮し、そこで行われる全てのサービスがブランドらしさを表現するもの。ブランドとのコミュニケーションを重視した場を作りたいと思っています。そこで考えたオールユアーズの店舗コンセプトはこんな感じ。

①フラットな場であること(全部見せる)
②リンクする場であること(つながる)
③シェアする場であること(おすすめする)

①フラットな場であること(全部見せる)

僕らの考えに共感してくれる人たちにとっての「公共の場」でありたい。「お店は誰のもの?」という問いを僕は最近サービスを考えるときに起点にしています。

よく考えるとお店は不思議な場所です。事務所は会社とそのスタッフがいれば成り立つ。でも、お店は「お客さん」が入ってきてくれて、初めてお店になる。お客さん=第三者がいないとお店じゃない。契約しているのは僕らなので、権利としては僕たちオールユアーズのものなんだけど、それだけじゃ成立しない。

新店舗は、1階がお店で、2〜3階が事務所なのですが、お店だけじゃなく事務所にも遊びにこれるように、オフィスを解放する日を作ります。それは僕らが働いている現場を見てほしいから。どんな場所でプロダクトが生み出されているか、その心臓部をお見せします。

敷居が低くてお茶のみにくるような場所。そして“買う”以外に遊びにくる理由がある「友達の家のリビングのような場所」であり「フラッと立ち寄れる場所」を作ります。

②リンクする場であること(つながる)

人をつなぐ場所としてのお店。ここに集まる人たちのコミュニティを促進するための場を作ります。偶然の出会い。新しいアイデアが生まれる場。そのために移転する店は一軒家にこだわりました。

「同じ釜の飯を食う」

コミュニケーションの触媒に、これ以上強いものはないでしょう。一軒家の機能をフルに活かしたコミュニケーションの場を作ります。

『おーるゆあーず食堂』や『宅飲みおーるゆあーず』など、一緒にご飯食べたり、お酒飲んだり、お店とお客の付き合い以上のコミュニケーションを生みだすコンテンツを連発していきます。(※料理振る舞いたい!って人も募集中です!)

③シェアする場であること(おすすめする)

僕らが考える、オススメできるものを仕入れたり、場合によっては僕らのお店でPOP UPができる状態を作ります。店舗のスペースを独り占めするんじゃなくて、解放する部分を作って共有していく。

世の中には素晴らしい製品がたくさんあるし、それを紹介していくのも僕らのビジョンです。価値観の近い似たような思想を持っているブランドやお店をお誘いして、うちのお店で販売したいし、出店してほしい。特に無店舗のブランドさん、ローカルのお店さんに出店してもらうようなことが出来たら面白いと思っています。

「シェア=共有」することで、新しい価値や、思ってもいないメリットが生まれるのは、インターネットが証明してます。価値観も物理的なスペースもシェアしていくことで生まれる偶然性を生み出す「場」としてお店を運営していきます。

お店は販売場所でもあるけれど、販売はオンラインでもできるし、お店にオンラインと同じような機能を追求してもあんまり意味がないかなって思うからです。

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「お店づくり」をインターネット的に。

最後に、言い忘れてはいけないのは、この新店舗への移転が実現したのはクラウドファンディングで支援をいただいた資金で実現したという事実。共犯者のみなさんと一緒に作った店舗事務所だと思っています。

なんてったて、今やっているお店の内装を、お客さんが手伝ってくれている。

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そんなブランド、聞いたことある?この事実は僕の自慢です!

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「フラット、リンク、シェアなお店づくり」をテーマに、みんなで新しいお店を作っていきましょう。店を運営していくにつれて、誰のものなのかわからなくなってくるような、そんな参加型のお店を目指します。ぜひご一緒に協力してくださると嬉しく思います。

ALL YOURS新店舗情報

4月23日(月)〜4月26日(木)プレオープン、4月27日(金)オープン
住所:〒154-0001 東京都世田谷区池尻2-15-8
電話番号:03-6413-8455
営業時間:(平日)15:00〜21:00 (土日祝)12:00〜20:00
定休日:月曜日

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ALL YOURS CO.,LTDライフ・スペック伝道師

Masashi Kimura(木村 昌史)

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24ヶ月連続クラウドファンディングに挑戦中です!

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DEEPE’S WEAR

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服を選ぶとき、何を基準に選んでいますか。
天候や環境を考えて服を選ぼうとすると、着られる服が制限されてしまう。
そんな経験ありませんか。
そこで、私たちDEEPER’S WEARは考えました。
服本来のあるべき姿とは、時代・ライフスタイル・天候・年齢・地理など、
人ぞれぞれの環境や日常に順応することではないだろうかと。
あなたの持っている服は、どれくらいあなたに順応していますか。
服にしばられず、服を着ることを自由にする。
人を服から“解放”し、服を人へ“開放”する。
このDEEPER‘S WEARの理念を可能にするのが、
日常生活(LIFE)で服に求められる機能(SPEC)を追求した日常着(WEAR)、
「LIFE-SPEC WEAR」なのです。
DEEPER’S WEARはALL YOURSが取り扱うブランドです。

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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