ベストフレンドは近所のおばあちゃん。今、欧米で「老人と子どものマッチングサイト」が広がっている理由

Text: Miroku Hina

2018.2.28

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小さな頃、近所のご老人に可愛がってもらった記憶はないだろうか? 

筆者は小学生の頃、近所のおばあさんの家によくおじゃましていた。池の魚の種類を教えてくれたり、お菓子をくれたりと、優しかったおばあさんとの時間は、今も温かい思い出だ。

しかし、都会に住んでいると、隣人の名前がわからないことも多く、そうしたご近所さんとの世代を超えたつながりは、生まれにくいのかもしれない。そこで今回は、ニュージランドで広がりを見せつつあるネットサービス「Surrogate Grandparents(サロゲイト・グランドペアレンツ )」を紹介したい。

世代を超え、互いに心地よい関係を生み出すプラットフォーム

「代理の祖父母」という意味の名前を持つこのウェブサイトは、孫がいない、もしくは孫と離れて暮らす祖父母世代の人々と、両親が既に他界していたり、離れてくらしているなどの理由から、子どもの祖父母代わりとなる人を探す家族をつなぐ、マッチングサイト。

サイトの開設者である、Jo Hayes(ジョー・ヘイズ 以下ヘイズさん) 自身、シングルマザーとなり、祖国のイギリスから離れた育児に孤独を感じていたことがサイトの開設のきっかけとなったという。当サイトを通じ、友人の母親という「代理祖母」と出会い、子どもたちも代理の「おばあちゃん」との時間を楽しみにしているというが、そういった出会いは、どのように生まれているのだろうか?

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サイト登録には、代理祖父母側、家族側ともに、禁煙やペットの有無、趣味や関心などプロフィールの作成が必要だ。祖父母側には、警察の無犯罪証明書提出が義務付けられており、45歳以上で、健康かつ日常生活に問題がなければ、誰でも登録できる。

家庭側は、年間60ドルの運営支援費用を支払うことになっているが、祖父母側は無料で利用できる。登録が済めば、近隣に住む祖父母、もしくは家族を検索し、メッセージを送りあえるようだ。

幼い子どものことを考えると、ネットを介した他人との出会いは、不安を感じる人も多いかもしれないが、登録している人の身元が管理され、トラブルがあれば相談できる運営者がいるウェブサイトや、グループを介せば、お互いにとって、出会いの敷居はぐっと低くなる。

こういったコンセンプトのプラットホームは世界各地で見受けられ、アメリカでも2015年に「Surrogate Grandparents-USA」という、フェイスブックグループが発足している。

同グループの発足者である、Donna Supitilov Skora(ドナ・スピティロブ・スコラ 以下スコラさん)さんは、祖父母側として家族を探し、シングルマザーと、その娘である13歳のジェニーちゃんと知りあった。

スコラさんとジェニーちゃんは同じ街に住んでいるわけではなく、遠距離だがビデオチャットを楽しんだり、クリスマスにプレゼントを送りあったりする関係が1年以上続いている。スコラさんは「運命を感じており、生涯大事にしたい」と、満足しているようだ。

保護者と、祖父母側との信頼関係の構築が第一

しかし、当然ながら、「家族」のような信頼関係は、一夜にして築けるものではない。スコラさんも、関係の構築は「簡単とはいえない」と、打ち明ける。

彼女が知りあった最初の家族は、互いの交流を深めるより、子どもたちを旅行に連れていったり、プレゼントをあげたりといった経済的な援助を求めらていると感じ、続かなかったという。

まずは、祖父母側と保護者が、良い友人関係築く必要があります。子どもたちとの関係が深まるのは、それからです

(引用元:SENIOR PLANET

スコラさんは、そう学びを口にする。代理祖父母の関係は、ベビーシッター、介護、ましてや経済的な支援が目的ではない。時間をかけ、互いに心地よい信頼関係を築く姿勢が、大切なようだ。

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日本でこそ、オープンな心で

デリケートな問題もあるが、ニュージランドのサイトは当地のテレビ番組でも紹介され、アメリカのフェイスブックグループのメンバーは、3000人を超えている。血はつながらなくとも、多くの人が「家族」のような暖かい支え合いを求めているのかもしれない。

そして、核家族化、高齢化が進む日本でこそ、そうした需要は高まっているのではないだろうか? 2025年には、国民の3人に1人が65歳以上になるといわれ (参照元:現代ビジネス)、独居老人の数は、年々、増加の一途をたどっている。(参照元:内閣府

孤立しているのは、高齢者だけではない。2014年度のミキハウス子育て総研の調査によると、「子育てにおける孤独感を感じたことがある」と答えた母親は半数以上。「どんな時に孤独感を感じるか」の問いには、63.7%が「子どもと自分だけで家にいる時」と回答した。「孤育て」も表面化している問題だ。

近年、日本でも出会い系アプリや、フェイスブックグループなど、ネットを介した出会いも広く受け入れられるようになった。しかし、こうした世代を超えたつながりを生み出すものは、まだ多くはない。

Surrogate Grandparentsのようなサイトを通じて、次の世代に無条件に愛を注いでくれる祖父母世代と、子どもたち、そして保護者が、信頼できる関係を広げていければ、日本の未来はより明るいかもしれない。

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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