「国籍も性別も関係なく、誰もが“ただいま”と言える」。北海道の3人組が生んだ“風通しの良い人気ゲストハウス”とは|EVERY DENIM山脇の「心を満たす47都道府県の旅」 #015

Text: YOHEI YAMAWAKI

Photography: Shunsuke Shimada

2019.6.28

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こんにちは!EVERY DENIMの山脇です。EVERY DENIMは僕と実の弟2人で立ち上げたデニムブランドで、3年間店舗を持たず全国各地でイベント販売を重ねてきました。 2018年4月からは、毎月キャンピングカーで日本中を旅しながらデニムを届け、衣食住にまつわるたくさんの生産者さんに出会い、仕事や生き方に対する想いを聞いています。

本連載ではそんな旅の中で出会う「心を満たす生産や消費のあり方」を地域で実践している人々を紹介していきます。

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▶︎山脇耀平インタビュー記事はこちら

今回紹介したいのは、北海道でゲストハウスを経営する3人組の話。大学卒業と同時に会社を設立してから6年目、現在では札幌に4軒、小樽に2軒の宿を手がけている合同会社Staylink(ステイリンク)の物語です。

北海道出身の河嶋峻(かわしま しゅん)、彼の高校の同級生、柴田涼平(しばた りょうへい)、そして河嶋さんの大学の同級生、木村高志(きむら たかし)。この3人は大学在学中から事業家を志し、ゲストハウスという手段を持って札幌の地で開業しました。

最初の宿「waya(わや)」から現在の展開に至るまで、彼らが経営と場づくりについて大切にしてきた思いを伺いました。

ウェルカムとシェアのマインド

合同会社ステイリンクの3人の取材場所となった「waya」は、彼らが会社設立後、初めてつくったゲストハウス。「Starting NEW ADVENTURES」(新しい冒険の始まり)をテーマに、世界各地からの旅人や、近隣の住民、道内の若者たちが気軽に集まれる場所となっている。取材をしている際も入り口のラウンジではゲストとホストが一緒に楽しく会話しており、暖かく賑やかな雰囲気が伝わってきた。

地域のコミュニティやハブ的存在を担うことが多いゲストハウスだが、「waya」もその例にもれず、宿泊客だけでなく、「waya」で毎日のように開催されるイベントを楽しみに、近隣の住民や道内の若者たちが気軽に集まってくる場所となっている。

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主に海外からが多い宿泊客としての旅人、近隣の住民、イベントきっかけで集まる人、この3者にとって同時に心地よい場を提供できるかどうかが、ゲストハウスがコミュニティとしてうまく機能するかどうかの鍵になる、と柴田さんは話してくれた。

ここに集まってくれる人たちに必ず伝えていることが2つあって、1つが「シェアを楽しもう」。もう1つが「ウェルカム精神を忘れずに」ということです。みんながオープンな気持ちで気軽にコミュニケーションできれば、決して排他的にならず、風通しの良い場所になると考えています。

「waya」では現在月に18本〜25本ものイベントが開催されている、そのほとんどが主催者による持ち込みの企画で、内容も多岐に渡る。

「大好きな国の現状を伝えたい」「みんなで食事を楽しみたい」など、どんな小さな声であっても誰かの“やりたい”という気持ちを大切に、丁寧に形にしてきたからこそ「waya」は集まる人たちにとって欠けがえのない存在となり、世界に開かれている場所でありながらも、暖かなコミュニティができているのだった。

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左から木村高志さん、柴田涼平さん、河嶋峻さん

人が居るからこそ生み出せる価値

ステイリンクが場所づくりとして他にも意識していること。それは「人が居るからこそ生み出せる価値」を大切にするということだ。

彼らが創業した2014年から現在まで、宿泊市場は大きな変化をし続けている。最近のトレンドは「無人ホテル」。効率化を重視し、宿泊における「寝泊まり」の部分に価値を置いたサービスが注目を集めており、もっともホットな投資対象となっているそうだ。

そんな中、ステイリンクの宿はつねに人の温度感を感じさせる。彼らが最初から常に心に抱いている思いは「すべての人が『ただいま』と言える居場所をつくる」ということ。

イベントのお客さんや宿泊のゲストが帰っていくとき、ステイリンクのメンバーは過度に別れを惜しまない。まるで明日もまた会うかのように、カジュアルに振舞うことを心がけている。

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大切なものを大切にし続ける

創業当初は毎日のように顔を合わせていた3人も、今では月に1度の定期ミーティングが、じっくりとコミュニケーションとる貴重な時間となっている。

また、半年に一度経営合宿を行い、自分たちのやりたいこと、これからやるべきことを見直しながら、それぞれの役割を確認し合っているそうだ。

彼らが5年で培ってきた互いへの信頼感あってこそ、活動領域がバラバラであっても彼らはともに同じ方向を向いている。さらに、その方向はいつでもズレる可能性があり、盤石のものではないという緊張感さえ持っている。

個人の意志を尊重し、それぞれが会社を尊重する気持ちを持つからこそ、彼らのチームワークは揺るぎないものとなっているのだ。

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最後に伺った「個人と会社の関係性をどのように捉えているか」という質問に対して、「いまやりたいことをこれからもやっていくのが好き。その中で会社が成長すれば、関わる人を幸せにできればそれに越したことはない」と木村さん。

「自分に生きがいを与えてくれた。素晴らしい人との出会いを生んでくれた。個人として会社に恩がある。だから僕は、恩返しをすることで会社や社会が豊かになっていったら良いと思う」と柴田さん。

「事業ベースでなく、自分たちが何を価値に・大切に思うかを軸に据えてきたからこそ、ここまでブレずにやってこられたと思う。だから個人と会社に乖離の感覚はないし、自分自身のためにも新しいことにチャレンジし続けたい」と河嶋さん。

彼らは自分たちの価値観を大切にし会社をつくった。この6月で5周年を迎えたステイリンクは、また次のステージへと駆け上がっていく。

大切なものを大切にし続けるために、彼らはこれからも挑戦し、変化し続けていく。それがゲストハウスという1つの形となって、僕らに出会いと別れと、欠けがえのない繋がりを生んでくれる。

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ステイリンクの3人とは数年前から親交がありましたが、今回こうして初めてまとまった形で話を聞くことができました。彼ら3人は本当に仲が良くて、兄弟で事業をしている僕たちから見ても羨ましいくらい素晴らしい信頼関係を築いていると思います。

彼らの揺るぎない紐帯はどこから生まれてくるのか、本当はそんなことを聞きたくて始まった取材でしたが、コミュニティの話から、ゲストハウスという事業の立ち位置など、いろんな方向に話が広がっていきました。

ただ、最後は個人と会社の関係性というテーマで、彼らがステイリンクと自分をどのように捉えているか少し浮き彫りにできたと思っています。

地域での事業を継続していくために大切なことは、究極的には「人間関係」だと痛感しています。それは組織の内部の話でもあるし、事業を通じて関わる人たち、お客さんに対しても同じことです。

どうすれば関わる人と良好な関係を築けるのか。そこに真摯に向き合い続けたからこそ、いまのステイリンクの姿があるんだろうなあと、そのカッコよさは僕の胸を打ちましたし、僕も、自分が大切だと思う地域で場所をひらいてみたいなあと夢想したのでした。

合同会社Staylink

公式サイト

2014年、大学卒業とともに同い年だった河嶋、柴田、木村の3人メンバーで創業。「すべての人が『ただいま』と言える居場所を作る」ことを大切に、札幌市内で4件、小樽市内で2件の宿を手がけている。

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山脇 耀平 / Yohei Yamawaki

TwitterInstagram

1992年生まれ。大学在学中の2014年、実の弟とともに「EVERY DENIM」を立ち上げ。
オリジナルデニムの販売やスタディツアーを中心に、
生産者と消費者がともに幸せになる持続可能なものづくりの在り方を模索している。
繊維産地の課題解決に特化した人材育成学校「産地の学校」運営。
2018年4月より「Be inspired!」で連載開始。
クラウドファンディングで購入したキャンピングカー「えぶり号」に乗り
全国47都道府県を巡る旅を実践中。

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