530のZINEのカバーを手掛けたアーティストyaeとオンラインマガジン「NEUT Magazine」編集長・平山潤の対談インタビュー。
作品に込めた思いやゴミ問題について聞きました。理想の未来を想像することでゴミ問題を伝えていくyaeさん。彼女はプラスチックが貴重なものとなり、プラスチックを乱用している現代が遠い過去のことなった未来を仮定しました。そんな“捨てられるものに価値を置く未来”から見える今はどのように映るのでしょうか。
Jun(NEUT Magazine編集長):ゴミの標本のような作品ですが、どんな意味を込めたんですか?
yae:日常にあるプラスチックゴミを集めて標本にしました。今はジップロックやペン、コンタクトレンズなど、私たちは当たり前のようにプラスチックに囲まれて暮らしています。ですが、今後個人単位ではなく国単位でゴミ問題へのアプローチが進んでいけば、プラスチックという素材が使用されなくなり、貴重なものとして認識される時代が来るのかもしれないというSF的な視点で制作しました。「こんなにもプラスチックのある時代があったなんて!」と思えるような、理想の未来から見た標本を作りました。またNEUT Magazineのステッカーの裏紙も飾っています。
Jun:「理想の未来から見た標本」って面白いね。NEUTはコミュニティを繋ぐツールとしてイモリのステッカーを作ったりしていますが、プラスチックを使用していたり、まだまだ環境に対してできていないことがあります。今回はコラボレーションということで、普段ゴミとして捨てられるステッカーの裏紙を使ってくれましたが、裏紙にフィーチャーすることはこれまでなかったです。
yae:裏紙もこう見ると意外とかわいいですよね!ほかにもAir Podsなど、現代ちっくなものも飾っています。AirPodsは実際に私が4年前に使っていたもので、落としてもないのにいきなり壊れてしまって…。壊れたらゴミになるしかない商品が多すぎるなと思います。
Jun:ソニータイマーなんて言葉も昔はありましたが、保証期間が過ぎると故障するように設計されているのかと思うような商品は多いですよね。新しいものを常に追い求める社会だと感じます。今回どうしてゴミに価値を持たせようと思ったんですか?
yae:17歳の頃に通っていたアメリカの高校が山の中にあったんです。学校の寮に住んでいたのですが、そのコミュニティ内ですむことがほとんどでした。例えば、学校裏の畑で採れた野菜で料理をしたり、友達が失敗したチェキをもらって作品を作ったり。逆に何かを買いに行くほうが不便だった気がします。限られた選択肢のなかで、自分も作品を見た人も楽しめる状態が十分につくれたので、新しいものを手に入れるという概念があまりなかったのかな。しかも最終的に私が死んだとして、私の作ったものだけが残り、ただのゴミになってしまうことを考えると気持ちのいいサイクルではないなと思っていました。
Jun:アメリカでの生活を終え、日本に帰国してからはゴミ問題についてどう感じましたか?
yae:日常に出るゴミの量が多いと驚きました。スーパーに行くと野菜を梱包するのはビニールだし、買い物袋もビニール。家に帰って冷蔵庫に野菜をしまっていくとビニールの山になる。そして、そのビニールを捨てる袋もビニール。家の中だけでもビニールでいっぱいなのに、日本中の人が同じことをしていると考えると問題意識が芽生えました。
Jun:実際に作品を通して発信していくなかで、周りの反応はどうでしたか?
yae:社会的な問題を考えなくてもいいと思う状況にいたとしても、yaeがいるから「タバコのポイ捨てはしない」とか「ゴミを持ち帰って分別しよう」と言ってくれる友達が増えました。私はゴミ問題にフォーカスして活動するというよりも、自分が気持ちいいと思う行動の延長線上で問題が解決されたらいいな思っています。こうやって私の過ごし方を見て、何か感じてくれる人がいるのは嬉しいことです。
Jun:相手に押し付けるのではなく、自然と伝達していくのはyaeさんならではのスタイルだよね。普段yaeさん自身が心がけていることはありますか?
yae:結局は捨てられるものだとしても、その前にレイヤーを作ることを心がけています。例えば裏紙でも刻んでメモにして使ったり、着れなくなった服を人に渡すなど。ものを手放すことがいけないのではなく、捨てる前にまだ活用できないかを考えることが大事だと思います。
あとは環境や状況を考えたうえで、ものを選ぶようにしています。例えば、「ナスのカレーが食べたい!」と思ってもナスがビニールで梱包されていたら、梱包されていない玉ねぎを選んで具材を変更したり、近くの他のスーパーに行ってビニールに包まれていない野菜を探しに行ったり。欲しいものを優先するのではなく、限られた選択肢のなかで行動することを楽しんでます。
Jun:最後に、作品がどのように社会に影響することを望んでいますか?
yae:理想は、今回の表紙を見てプラスチックが貴重になった時代のことを想像できる人が増える世の中。言葉で一から説明する時間が徐々に減っていき、さらにできることが増えたらいいなと思います。素材や手段がどういった状態で廃棄されるかを考えたうえでものを選んでいけば、ゴミになるものも減っていくはずです。そういった必要性を考え直していくことが大切だと思います。
個々の生活スタイルやものの選び方の認識を変えることで、ゴミが自然と減っていくと語るyaeさん。表紙も何年か後に見ると、今とは違った見方ができるのかもしれない。
530ZINEを街中でゲリラ配布します!
5/24(月)~5/30(日)にかけて水色のポリバケツをゲリラ的に街中に設置して配布します。ゴミ箱へダイブする体験を通して、ぜひ自身の手でZINEを拾い上げて欲しいと思っています。是非ご参加ください。ゴミ箱の中にあるものはもう使えないものでしょうか?まだ使える可能性のあるゴミではないものかもしれません。本当はゴミですらないのかもしれません。
〈概要〉
配布期間:5/24(月)~5/30(日)
時間:14:00-17:00(25日 13:00-16:00 / 28日 12:00-15:00)
ゴミ箱設置場所(予定):
5/24(月):キャットストリート ROXY前付近
5/25(火):表参道 GYLEビル前
5/26(水):渋谷ハチ公前 with Spiral Club
5/27(木):WORKING GLASS HERO
5/28(金):ICU(国際基督教大学) バカ山 *ICU学生以外入場できません。*12:00-15:00
5/29(土):COMMUNE
5/30(日):代々木公園噴水前 with Spiral Club
〈530week 2021〉
2021年の530weekのテーマはレジリエンス(resilience)。2020年に出現したコロナウイルスの猛威により、明日明後日の状況も読めない不確実性に囚われてしまった私たちの生活。そんな日々に、そして未来に対して私たちは耐久性(resilience)をつけていく必要がある。ただ、未来が読めないなんて話は世界的パンデミック発生の以前にもあっただろう。地球環境のこと、人権・政治のこと、そして私たちが捨てるゴミのこと。中国が2018年にプラスチックゴミを、2021年には古紙の受け入れを停止した。不要なものを誰かに押し付けてきた私たちは、自由にモノを捨てることができない時代に入っている。ここでゼロウェイストについて考えることは、私たちの暮らしの未来のレジリエンスを考えることに繋がるはずだ。
yae
1997年東京生まれ。ニューヨークの高校に留学していた15歳〜19歳の間、人との出会いを大切にしながら、さまざまな文化や価値観に触れる。今は、現代の「もの」のあり方を改めて考えるきっかけを作れるよう、自身の表現方法を探索中。
平山潤
NEUT Magazine編集長。1992年神奈川県相模原市生まれ。成蹊大学卒。ウェブメディア『Be inspired!』編集長を経て、現在は『NEUT Magazine(ニュートマガジン)』創刊編集長を務める。世間で<エクストリーム>だと思われるようなトピック·人に光を当て、より多くの人に「先入観に縛られない<ニュートラル >な視点」を届けられるよう活動中。