性別を問わず、居酒屋でサラダをとりわけていたら「女子力あるね(高いね)」と言われた経験がないだろうか?日本では2009年にユーキャン新語・流行語大賞候補語となった「女子力」。英語に直訳すると「ガールパワー」となるが、それは「女子力」とは全く反対の意味だった。
サラダをとりわける「女子力」
若い世代を中心に使われている「女子力」は、インターネットをはじめとするメディアや日常生活で頻繁に聞く表現。この言葉は、定義こそ人さまざまだが、「家庭的である・美意識がある・男性を魅了する」などの要素がある人に対して使われているようだ。つまり、古典的な「女の子・女性らしさ」を表している。例えば飲み会で「サラダをとりわける」人は「家庭的で気が利く」から「女子力が高い」となる。
日本に根付かなかった「ガールパワー」
「女子力」の直訳となる「ガールパワー」は、「若い女性の独立、自信、権利の獲得の姿勢」を表し、主に女性のポップミュージックグループのスパイス・ガールズと関連づけられる」そうだ。(出典:Oxford Dictionaries)つまり、独立した女性像や女性の社会進出、権利の拡大を意味している。「女子力」と異なるのは古典的な「女の子・女性らしさ」とは正反対であること。スパイス・ガールズは1996年にデビューした英国のガールズグループで「ガールパワー」を象徴する存在である。あのデイビッド・ベッカムの妻として有名なヴィクトリア・ベッカムも所属していた。グループ自体は90年代に日本でも有名になったが、彼女たちのコンセプトは残念ながら日本社会には根付かなかったのだ。
「○○女子」や「○○男子」の多い日本
日本には「女子力」以外にも「女子」そして「男子」が使われている表現や派生語が多く存在する。女子会、こじらせ女子、草食系男子、大人女子、40代女子、女子力男子など。どの表現も「女子」や「男子」は「こうあるべきだ」という価値観が固定されているように見える。
例えば、流行語大賞となった「草食系男子」。男性は肉食=積極的でないといけないという価値観が背景にあるのだろう。「女子力」をはじめとするこれらの表現は、日本社会の成熟には逆効果ではないか?
日本をだめにしている「かわいい文化」
日本語を学ぶケンブリッジ大学生サカリ・メシマキさんが興味深いスピーチをしている。そのタイトルは『「ぶりっ子 vs. キャリアウーマン」ー女性の社会進出を妨げる「かわいい文化」』。スピーチでは「女子力」と「ガールパワー」にも言及している。「女子力」という言葉を初めて聞いたときは「ガールパワー」の直訳と解釈したそうだ。彼によると日本の女性は「かわいく」振る舞うことが求められているから、女性のリーダーが育ちにくい。また「なにもできない」人や「遠慮する」のが「かわいい」とされるのは日本独特だと言っている。(参照元:University of Cambridge)
果たして「女子力」は「褒め言葉」なのか?
「女子力」は「褒め言葉」として日常的に使われている。だが褒めているようで、実は「女性はこうあるべきだ」という固定観念を賛美しているだけではないだろうか。誰だって家事ができるに越したことがないが、家事が得意な人に「女子力高いね(あるね)」と言うのは「家事は女性のもの」と言っているのと同じように聞こえる。
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。