日本では、アフリカのナミビア、リベリア、コンゴ共和国へ政府開発援助で送られる食品量に相当する量である「500万〜800万トン」もの食品を廃棄している。これは世界全体の食料援助量の2倍、そして日本で生産されているコメの収穫量に相当するのだ。(参照元:農林水産省)この深刻な問題は、どうしたら解決できるのだろうか?
食べられない人がいるのに捨てられる食料品
日本の食品廃棄問題は深刻だ。規格外品や売れ残り、食べ残しなど、事業からも家庭からも食品が大量に廃棄されている。それを解決する参考に、アメリカの事例を紹介したい。
412 Food Rescureによると、アメリカでは40%の食料が廃棄されるなか、7人に1人が貧困で満足に食料を買うことができない。この背景には、大量生産・大量消費の他に経済格差の広がりがある。そんななか、食べられるのに捨てられてしまう食品と飢えた人々を助けるアプリ「フードレスキュー」がペンシルベニア州ピッツバーグで開発された。このアプリを使えば、余った食料をどこに持っていけばいいか、食料が買えない人たちの支援団体はどこで受け取ればいいかを知ることができる。主はレストランや食品を売る店から出る余った食品を救助しており、食品の大量な廃棄を防いでいる。
アプリで食品の分配、それでも余ったらビールに
アメリカで最も生産量に対して消費されずに余ってしまうのが野菜や果物、次に魚介類、その次が穀類だ。主食としてパンを食べる人も多いなかパンの廃棄量も少なくない。先ほどのアプリで集められたあとで余ってしまったパンは、ビールの醸造に使われるという。このプロジェクトはLoaf(ローフ)と呼ばれ、余ったパンをおいしく生まれ変わらせている。同じように余ったパンからビールを作る取り組みは、ベルギーでも行なわれているが、Loafの特徴はフードレスキューアプリを活用して余ってしまったパンを使い作られているところ。パッケージもリサイクルされているだけでなく、おしゃれにデザインされているのが魅力だ。
古代エジプトのビールとの共通点
先ほど紹介した、パンからビールを作るという方法だが、なんと古代エジプトで使われていた。当時はパンをお湯の入った壷に入れてそのまま数日間置きっぱなしにして発酵させていたのだという。(参照元:早稲田大学)これを当時の方法で再現してみると、非常に酸味があり飲みにくいようだが、食品を無駄にしないようにするための工夫は古代の人々の生活にあるのかもしれない。新しく考えられたビールのリサイクル方法が、古代の醸造方法と似ていたということは非常に興味深くはないだろうか。
「尿」から作るビール
ビールをたくさん飲んだら、トイレに行きたくなる。当然ながら、水分をたくさん摂ると尿が出るわけだが、この尿からもビールを作り出す方法があるのだ。どんな仕組みかというと、集めた尿を、ビール用の肥料として活用するというものだ。デンマークのロスキルド・フェスティバルで取り組まれたbeercycling(ビアリサイクリング)と呼ばれ、2017年に開催するフェスでは「過去の入場者の尿で育てたビール」を実際に販売する見込みとなっている。(参照元:Konbini)このフェスにはザ・ウィークエンドなど話題のアーティストも参加する予定で、日本から参加する価値も十分あるだろう。
日本でできるフードロス対策
では、日本ならどんな対策から始めるべきだろうか?パンからビールではなく、余った米で日本酒を作るなどの工夫もできるかもしれない。また余った食品をどう使うかだけでなく、生産されたものをどう循環させるかも重要だ。作ったものを無駄にしない、循環する社会・持続可能な社会がどうすれば成り立つのかを考える人が増えることで日本の状況が改善されるのではないだろうか。
【表参道で「食べる」について考えよう】
今月1月19日(木)Be inspired!主催で、日本や世界で起こる社会問題を「知って、考えて、行動する」がコンセプトの映画上映イベント『ゲリラシネマ』を開催します。(*このイベントはすでに終了しております。)
第3回目となる今回のテーマは前回に引き続き「食べる」について。
欧州5ヶ国を5週間、廃棄料理しか食べずに「食糧危機」を吹き飛ばすエンタメ・ロードムービー「0円キッチン」の特別先行試写会を行います!
オーストリアから来日中の監督挨拶にくわえ、日本の社会から食に対する「もったいない」をなくそうと取り組む方々によるトークショーも。
会場では、まだ食べられるのに捨てられる運命にあった食材から作ったカレーやジュースを提供します。
みんなでおいしく「食べる」について考えて、よりよい社会を作りませんか?
詳細は下の画像をタッチ!
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。