先日、トランプ大統領が移民の入国規制をして多くの人々から非難を浴びた。著名人がデモに参加したり、大手企業も非難の声明を出すなど異様な盛り上がりを見せている。
カナダのジャスティン・トルドー首相も「カナダ人は信仰にかかわらず難民を歓迎します。多様性はわが国の強みです。#WelcomeToCanada」とツイートして話題になっていた。しかし、このトルドー首相のツイートは、もし“なんとなく”デモに参加している人がいるのなら、それらとは全く“質”が違うと言っていい。彼がその発言に伴った行動を既に起こしているからだ。
世界で初の“タトゥー首相”誕生
ジャスティン・トルドー首相は2015年の総選挙で大勝を収め、就任したカナダの首相である。彼の風貌を見てみると、はっきり言ってかなりのイケメン。自身のTwitterやInstagramでは趣味のボクシングの写真も掲載されていて、体もかなり鍛えられていることが分かる。左肩にはタトゥーも入っているようだ。これは「世界で初めてのタトゥーの入った首相」として話題にもなった。
45歳の若き国の代表はその首相とは思えぬ装いから、国内では「イケメン政治家」と紹介されることも多い。しかも名前がジャスティンであることから「ライバルは、歌手のジャスティン・ビーバー」だなんていわれることさえあるようだ。(参照元:日本経済新聞)
「宗教」「性別」「出身国」にとらわれない組閣
しかし彼が本当にアイドル政治家なのかと言わればそうではない。多様主義を抱え、リベラルな政策を次々と成功させているのだ。まず組閣の段階で、閣僚の男女比を同じにした。これはカナダとしては史上もっとも高い女性比率である。(参照元:Slatest)
またカナダ最大の都市トロントのプライドパレードへの参加も忘れない。首相自らがLGBTQへの受け入れに理解を示していることを国民に見せつけているのだ。さらには公用語にフランス語を取り入れたり、性的差別があった国家の歌詞の変更もした。(参照元:REUTERS)
とにかく思想や宗教によって偏りの少ない風通しのいい国を作ることに余念がない。あるとき、トルドー首相はアメリカの大学に出向き、講義をしたことがある。そこで講義に参加していたインド出身の学生が、「僕と同じインド出身者が閣僚に採用されてうれしいです」と首相に伝えた場面があったのだ。そしてサラッと彼にこう告げた。
カナダの内閣には、今のインドの内閣よりも多くの“シク教徒”がいるよ。(引用元:The IndianEXPRESS)
「難民の数」<「難民受け入れボランティアの数」
冒頭のツイートもそうである。
To those fleeing persecution, terror & war, Canadians will welcome you, regardless of your faith. Diversity is our strength #WelcomeToCanada
— Justin Trudeau (@JustinTrudeau) January 28, 2017
この発言はリベラルを掲げる彼が政治家としての注目を浴びるためではなく、通常のことのように言った言葉に過ぎないと思う。そもそも、トルドー首相は25,000人のシリア難民受け入れを公約に掲げて当選をした首相である。この公約は就任後も一切の変更を許さず、国の情勢が変わっていき、他国が受け入れ体制に及び腰となる中でも壊さなかった。日本での難民受け入れ人数が申請数7,586人に対し認定数は27人なので、この数は凄まじいといえる。(参照元:外務省)
トルドー首相はこう話す。
海外の危機を支援して正義を見せるというだけじゃない。この機会を得て喜んで勤勉に働いてくれる人たちが、カナダの地域社会を強化してくれる。つまり、カナダ経済を促進してくれるのだ。(引用元:National Observer)
受け入れ後の難民の行先もすでに確保がされている。民間からはボランティアでホームステイ先として自宅を提供する有志が多く集まり、州によっては余っている家があるほどだ。民間難民受け入れ認証団体による説明会もトロントでは毎晩のように開かれ、カナダ社会の難民に対しての理解度も高い。そこには、移民として何十年も前にカナダに渡った人や難民として既にカナダ入りを果たしている人が、カナダに恩返しをする意味で、支援に加わっているという。(参照元:isans)
あなたは賛成か?反対か?
難民を受け入れれば、治安の悪化も懸念される。人として誰かを助けたい気持ちがあることは当たり前だが、そのことを考えると声を大にして「受け入れましょう!」と言うことは難しいのかもしれない。ただ、難民を受け入れれば、彼らがもたらす異文化によって新たな産業やサービスが始まったり、人材確保ができることにより少子化によって起こる労働力の低下を食い止めたりすることもできるであろう。
カナダがそうであるように、移民や難民としてカナダに来た人々が「誰かのためになりたい」とボランティアとして国の助けになってくれることもあるかもしれない。難民排除政策に“とりあえず”反対をすることも、メリットを知らずに拒否を続けることも。どちらも最善の策とは言えないだろう。まずは事実をきちんと自分なりに分析して自分の意見を持つことが大事なのだ。
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。