「男の子はブルー、女の子はピンク。」これは男女の固定観念の一つである。また文化的・歴史的背景から、いまなお男尊女卑の考えが根付いている国も少なくはない。
日本の男女格差の現状は一体どのようなものなのか?2016年世界経済フォーラムが男女格差を測るジェンダーギャップ指数において、日本は144か国中111位。さすがに“日本は男女平等の国だ!!”とは胸を張って言えない順位である。だからと言って、私たちは結果に対してアクションを起こしているわけではない。心のどこかで「これが当たり前」と受け身の姿勢のように思われる。
世界では“ジェンダー”に関する多くムーブメントが行われている。例えばオーストラリアではアート・映画界の男女平等を主張するために活動が行われている。
“男性一色”の業界
2016年に発表されたオーストラリアのビジュアルアート界の男女格差を調査したTHE COUNTESS Report(ザ・カウンテス・レポート)によると、女性アーティストの活躍の場は増えているものの、男性アーティストの展示機会は女性の3倍から4倍。
芸術関連の雑誌で特集記事に取り上げられた男性アーティストは61%、その一方で女性アーティストは、たった34%。また雑誌の表紙は80%が男性アーティストによる作品であり、女性アーティストがメディアに露出される機会は男性に比べて極めて少ない。(参照元:The COUNTESS Report)
そしてオーストラリアの映画業界は男性社会。全体のたった7%が女性撮影技術者、残り93%は男性。また女性監督は16%、脚本家は23%、またプロデューサーは32%、女性が男性と同等の扱いを受けているとは言えない。またこのような状況は40年間改善されていないという。(参照元:Screen Australia)
オーストラリアのアート界に「価値あるコミュニティ」を作る女性4人組
そんな男女格差がまだまだ根強く残るオーストラリアで、女性の地位を確立させるために活動する女性グループが存在する。
シドニーを拠点にしているLara Vrkic(ララ・ブリック)、Arabella Peterson(アラベラ・ペーターソン)、Emmeline Perterson(エミリン・ペーターソン), Jessica Mincher(ジェシカ・ミンシャー)の4人で構成されている「The Ladies Network」だ。
The Ladies Networkは、2015年にララによって創設され、アート、音楽、ビジネスやデザインの分野で女性の地位を確立させること、女性のクリエイティビティを多くの人に知ってもらうことを目的としている。
展示の運営やウェブサイト上ではアート作品などの販売を行い、グループ展示“The Ladies”を今まで30回以上成功させている。
私たちはアーティスト、クライアント、そして展示を見に来る人たちから、ほとんど全てのインスピレーションをもらっている。だからこそ、なにか創り上げていく過程で、このような人たちを価値あるコミュニティとして結びつけていける最高に素敵なこと。(引用元:Something you said)
ララは大学でアートを学問的に勉強したわけではないが、もともとアートに強い関心があり空いている時間はほとんどギャラリーにいたそう。
当時、彼女は「多くの女性アーティストが世の中にいるにもかかわらず、理由はなんであれ彼女たちは自分自身のことを“アーティスト”と認識していない、だから彼女たちは作品を見せようとしない」事実に気付き、“The Ladies network”をスタート。
女性アーティストが自信をもって、開放的で心地よく活動できるような環境作りを目指している。
「女性のみの力」で作られたシドニーの映画祭
アート界に続いて、男性がメインになっているオーストラリアの映画界でも、女性の地位を確立させ、多様性をもたらす重要性を訴えるために、“ある映画祭”が先月4月26日から30日までオーストラリア・シドニーで開催された。
その映画祭とは、作品のメインキャラクターはもちろん、脚本家、監督、撮影技術者が女性中心で制作された短編・長編映画を一週間に渡り上映した「For Film’s Sake Festival」。
映画上映の他にも映画界でキャリアを積んだ女性のトークショーやアニメーションがバーで公開され、男性女性に関わらず楽しめるイベントになった。そして、映画祭最終日には、映画業界で女性に男性と等しい機会が与えられていないことに対する“Fight”として、女性映像制作者たちによる「ボクシングの試合」が行われた。
“多彩な世界”への変遷
世界中で女性は経済や政治だけに限らず、カルチャーな分野でもまだ男性と同じだけのチャンスが与えられていない。そんな向かい風の中、活躍する女性も多くいる。今回紹介したオーストラリアの女性たちによる、女性のための活動は、アート・映画業界のみだけでなく、すべての女性に希望を与えているに違いない。「私は女だからしょうがない」と開き直ることをやめて、「わたしはこうしたい!」と自分を表現してみたら、世の中の見え方が少しだけ変わるかもしれない。
一人ひとりの認識が変わって行くことで、多様性のある社会に日本もなっていくのではないだろうか?
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。