海外旅行に行って現地の店員さんがとてもにこやかでフレンドリーだったり、地元のおじさんが気さくな笑顔で話しかけてきて道案内をしてくれたというような経験はあるだろうか。その時の彼らの笑顔を思い浮かべてみると、日本人がする笑顔より“大きい”かもしれない。もちろんそれはその人の人柄や感情を表しているだろう。しかし実際は想像するよりも複雑で、全く違った理由も含んでいる。笑顔という表情はそれぞれの国の文化的背景によって異なるのだ。
アメリカ人が表情豊かな理由
アメリカでは日常生活のなかで人に笑顔を向けることが多い。また、他国と比べ、見知らぬ人にさえも笑顔を向ける傾向にある。アメリカの移民人口は世界で1番多く、2015年には4663万人であった。(参照元:世界の移民人口国別ランキング)白人、黒人、インディアン、ヒスパニック、アジア系などからなる多人種な構成について考えたとき、その歴史において異なる言語や文化が混ざりあい、コミュニケーションが容易ではなかったことは想像がつくだろう。他者に対して笑顔を向けることはコミュニケーションを円滑にすると同時に敵対心をもっていないことを示すためである。言葉を必要としない非言語コミュニケーションは多民族国家において信頼関係を築く上でとても大事なのだ。
人は非言語コミュニケーションを通して多くの情報を受け取り、そして無意識にとても影響を受けている。感情と態度について曖昧なメッセージが発せられたとき、人が頼るのは話の内容などの言語情報や口調や話の早さなどの聴覚情報よりも、表情や仕草などの視覚情報なのだ。(参照元:“Silent Messages” — Description and Ordering Information ) このことからも人は自然と非言語コミュニケーションに頼ってきたことがわかる。
笑顔が表すヒエラルキー
そして表情が言葉を持たないからこそ、それらが何を意味し、また人がどう解釈するのかを知っておく必要がある。文化の違いにおける笑顔の役割についての研究では、アメリカやカナダなど移民の多い国の人々は笑顔を「幸福、友好的」であると受け取る傾向にあるが、日本のように移民の少ない国では「服従」と捉える傾向があることを示している。笑顔の受け取り方の違いはそれぞれの国の文化と大きく関わっているといえる。
アメリカの大統領と中国の首席の笑顔の写真を比べるてみたとき、アメリカの方が笑顔が大きく、口角がグッと上がり目尻にシワがよっている。(参照元:You Are Here)アメリカでは立場が上であるほどより大きな笑顔を表す。例えば、生徒と教師の関係の場合、生徒より教師の方がより大きな笑顔を表す。一方で中国の方は口を閉じ微笑んでいるような笑顔だ。アメリカではリーダーが積極的に笑顔を見せるのに対し、中国など移民の少ない国ではあまり笑顔を見せない。日本も同様に社会的立場が上の人の方が笑顔を見せることは少ないだろう。
うまく会話しようとしなくてもいい
笑顔には文化的な要素が強く含まれているため、自分が示した笑顔によって相手の受け取り方は様々である。もしかしたらネガティブな意味に捉えられることもあるかもしれない。しかし言葉でうまくコミュニケーションがとれない外国人とのやりとりで笑顔を多くみせることはそこに調和をもたらすのではないだろうか。会話がうまくできなかったとしても、笑顔を多く見せることで信頼関係を築けるはずだ。外国人が増えつつある日本で、彼らと接する機会はますます増えるだろう。その時、笑顔を見せることを心がけてみてはどうだろうか。
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。