あの“冷戦時代の音楽密輸人”が日本へ。当時の超貴重映像とDJを体感せよ!(50名限定)Berlin Atonal×HEAPS

2018.1.25

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今から30年以上も前、冷戦時代のドイツで「ベルリンの壁」をすり抜け、西ベルリンからラディカルな音楽が禁止されていた東ベルリンに、“パンクミュージック”を密輸していた男が存在する。Be inspired!の姉妹メディア「HEAPS MAGAZINE」で昨年まで連載をしていた、マーク・リーダーだ。

2月に彼が来日し、東京と京都で開催される音と光を実験的な表現で探索するフェスティバル『Berlin Atonal』に参加することが決定した。一歩間違えたら秘密警察に連行されるという危険を犯して、“正義感”で音楽を密輸してきた男は、日本に何を運んでくれるのか?

今回のイベント『Berlin Atonal』を共催するHEAPS MAGAZINEからの告知文は以下。

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立ち入り禁止のフェンスをおもしろ半分によじ登っちゃいました、借りてきたCDをこっそり自分用にコピっちゃいました、どころの話ではない。冷戦時代のドイツで「ベルリンの壁」をすり抜け、禁じられていた音楽を詰めこんだ「カセットテープ」を東に「密輸」しちゃいました。一歩間違えれば秘密警察に連行される危険を冒した(それも正義感から)、命知らずな男がいる。イギリス人音楽プロデューサー/DJ/ミュージシャンのマーク・リーダーだ。

昨年に完結したHEAPSの連載で、はじめてその存在を知ったみなさんも多いことと思う。その渦中の“音楽密輸人”、来たる2月16日(金)・17日(土)に京都と東京の二都市で開催されるベルリン発の音楽・アートフェスティバル「Berlin Atonal(ベルリン・アトーナル)」主催のトーク/クラブイベント「New Codes」に出演することが決定した。貴重な当時のベルリン話とドキュメンタリー映画、DJセットをいそいそと担ぎ、もうすぐ音楽密輸人が日本の税関をすり抜ける!(今回は密輸はしません)

2.17_Tokyo

『B-Movie:LUST & SOUND IN WEST-BERLIN 1979 – 1989』 – 公式トレイラー
※動画が見られない方はこちら

※2月17日(土)第一部:上映会&トークショーのみ、Berlin AtonalとHEAPSとの共同開催です。
※マーク自身が記録したドキュメンタリー映画『B-MOVIE』は、フェス、音楽イベントの開催と一緒にしか流すことができないという制約あり。この機会にしか見れない貴重な映像に、プ・ラ・ス、マーク本人にも会えるスペシャルな上映会&トークショーです!

国境警備隊・秘密警察を出し抜いた「マーク・リーダーの偉業」を簡単に振りかえる

東ベルリンは、世界一入場規制が厳しい“ナイトクラブ”のようだった

ラディカルな音楽が禁止されていた東に“パンク”を運んだ男、マーク・リーダー(Mark Reeder)にしか発せられない言葉だ。冷戦時代、ドイツが東西にわかれていたころの話である。一夜にして有刺鉄線が張り巡らされ、着々と建設された3メートルの「ベルリンの壁」が自由な西と制限のある東を分断。ソ連でビートルズが禁止されていたように、東では西の先進的な音楽は禁じられていた暗黒の時代だ。

20歳のときに「クラウト・ロック*1」と「デイヴィッド・ボウイのベルリン移住」に刺激され、故郷イギリス・マンチェスターから鉄道に乗り、ヒッチハイクし、“普通が普通でない”ベルリンへとたどり着いたマーク。真昼間からパブでトランスジェンダーに出会ったり、取っ手が欠けたスープボウルに注がれたコーヒーをすすったり、到着して数日後には東ベルリンで不味いキャベツ料理を食したり、驚きと興奮でベルリンを体感していた。同時に、音楽人としても本領発揮。マンチェスターのレコードレーベル特派員として西ベルリンのラジオに故郷のバンドを売り込み、西ベルリンのナイトシーンにも頻繁に出入り

その傍ら、マークは誰に頼まれるわけでもなく「豊かな西の音楽を東に届けなくては!」と使命感に駆られ、前代未聞の暴挙に出ていた。その暴挙を少しだけ紹介する(連載で知っている人は飛ばしてくれ)。

(*1)西ドイツ生まれの前衛的・実験的音楽。Kraftwerk(クラフトワーク)やCan(カン)、Neu!(ノイ!)みたいなバンドが操るキテレツでプログレッシブな音が特徴。

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若かりし頃のマーク

1. “カセットテープ密輸中毒”になる

国境をすり抜けるスリリングさに、ハマってしまったのでしょうか。当時の東では、ロックレコードを手に入れるのは至難のワザだ。エレキが市場に出回っていない。バンド演奏するためには適性検査に合格しなければならない。どんどん型破りになる西の音楽シーンに比べ、東の規制は依然変わらず、国営レコードや検閲にパスした音楽だけがラジオの電波を独占していた。そこでマーク、西ベルリンのアパートでせっせとパンクやらディスコやら前衛音楽やらをカセットに詰め込み、先進的な音楽が禁じられた東に幾度となく“密輸”。目をギラギラ光らせる国境警備隊の関門を突破し(見つかったらブラックリスト入り)、東の友の手へと届けた。あのペット・ショップ・ボーイズの未リリース曲が東の隠れゲイディスコで流れたこともあった!どこに隠したかはいまでも明かせないらしい(今回、こっそり聞いたら耳打ちしてくれるだろうか)。

2. 東の教会での違法パンクライブを成功させる

「パンク」が禁じられた東の「神聖な教会」で「違法パンクライブ」を成功させてしまったのである。字面だけでもパンチがあるが、やっていることはパンチ以上の問題ではない。西のパンクバンドの音を東に伝えたい、と彼らと国境を突破し、教会の神父を説き伏せ、かき集めた楽器で極秘ライブをアレンジ。

3. エレクトロ、シンセポップ、テクノシーン。ベルリンの音楽と世界各地の架け橋に

西のディスコで流れていたハイ・エナジー*2のテープをバーナード・サムナーに渡していなかったらニュー・オーダー*3の『ブルー・マンデー』はおそらく生まれていなかっただろう

西ベルリンの音を英バンドの耳にいち早く届けたり、東のパンクバンドを英音楽番組で紹介したり、壁崩壊後にはベルリン・テクノシーンの初期レーベル「MFS」を創設しミュージシャンをプロデュース、国際的ヒットをとばした。デペッシュ・モード、日本のバンド・電気グルーヴなど世界的バンドのリミックスも手がけ、現在ではイギリスや中国などの若手バンドのプロデュースも精力的に行っている。ベルリンの代表的な「テクノカルチャー」の根源に、マークあり。

東西が統合された新生ベルリンにおいて電子音楽の普及に務め、その音楽が再び他国と電子音楽と影響し合う架け橋となった。

(*2)80年代初頭にロンドンのゲイディスコ・シーンで生まれたエレクトロニック・ダンスミュージック。
(*3)イギリス・マンチェスター出身のエレクトロ・ダンス・バンド。

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「新しいサウンドの可能性を探求せよ」実験的クリエイションの仕掛け人Berlin Atonal

…ついついマークの紹介が長くなってしまった。社会に変革をおこそうとユニークなムーブメントを追うHEAPSにとって、アンダーグランドシーンに棲息し、突飛なアイデアと反骨精神、それを突き通す精神力でベルリンの、いや世界の音楽史に影響を与えたマークは、いわば師匠とも呼べる存在。現在では“低音響くテクノクラブ”のイメージがあるベルリンにも、音楽が自由に鳴り響いていない区域のある時代があった。規制や法を破ってまでも文化や表現の自由を救おうとするマークのピュアさ、タフさ、そして音楽のためなら身を粉にする献身(どこまでも突っ走る音楽狂ぶり)に脱帽した。と同時に、既存の文化や体制にとらわれないカウンターカルチャー精神が流れるHEAPSにこの上なく嵌った人物だと、我々は歴史の先端から坂向くように追っていたのである。

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Berlin Atonal 2017 © Camille Blake

そして、そのマークと同様のメンタリティを持つのが、今回のイベント主催者「Berlin Atonal(ベルリン・アトーナル)である。新しい音楽の良さを聞き分ける耳と、失敗を恐れない果敢なチャレンジ精神を持ち、「まだ誰も良いと言っていない音楽やアート」の創造的表現を実験的な創作を支えたい、継承しようと動く。

ベルリン・アトーナルとは、壁がまだあった頃の1982年、西ベルリンではじまった音と光の実験的フェスティバル。初公演は、パンキッシュなクロイツベルク地区のライブハウスSO36にて。アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンやマラリア!などの前衛的な西ベルリンバンドが実験性を爆発させた。それから4回にわたって開催されてきたが、6回目の開催を前に主催者のディミトリ・ヘーゲマンが休止を宣言、テクノこそが新たな時代の音楽だとクラブ「Tresor(トレゾア)」を創設。アトーナルは長い休止期間に入ってしまった。

その後トレゾアはベルリン・テクノを確立し、ベルリンのクラブカルチャーを形成することになる。が、同時にテクノは徐々にマスに受け入れられる音楽となっていく。
前身アトーナルがノイバウテンらをステージに立たせたその挑戦的な目線、成功するかわからない音と光、創造の化学反応実験が、いま必要だ。23年の年月を経て、2013年にベルリン・アトーナルは復活した。

「有名でないアーティストを2000人の観客の前で演奏させる」
「フェスディレクター自身も未見のパフォーマンスを遂行させる」
「完成度の高いエンターテーメントではなく、未完成・未知数領域の“実験”のスリルを楽しむ」
「成功するだろうとコンフォートゾーン(楽な領域)にいたら、文化や創造性は衰退してしまわないか」

常識や既成を鵜呑みにせず、必要であればそれを壊すことさえ躊躇しない。音と光、芸術、スペースを実験的・先進的な表現で探索し、まっさらな新しい音楽のあらゆるアイデアや可能性のプラットフォームをあたえる。音楽フェス大陸・ヨーロッパでも、その個性と精神性で唯一無二のポジションを獲得、堂々鎮座するのが、ベルリン・アトーナルなのである。

そのベルリン・アトーナルが来月東京・京都で開催するクラブイベント「New Codes(ニュー・コーズ)」に、マーク・リーダーを呼ぶ!型破りなマークとアトーナルが連携して生まれるイベントとは一体どんなものになるのか…。アバンギャルドなアプローチで新たな芸術表現・カルチャーを切り拓く両者の熱量を、細胞レベルで感じてみたくないか?

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Berlin Atonal 2017 © Camille Blake

MEET HEAPSとは?

HEAPS / Be inspired!で取り上げた取材対象者を日本へ呼び、実際に会って確かめてもらうコンセプトのイベントシリーズです。Experience Studio(再現イベント)、Public Interview Studio(公開インタビュー)の二つのイベントから構成されています。このイベントシリーズの特徴は、読者のみなさんと共創しアクションをする場を作ることと、参加者が新しい概念や多様な意見をミッションとして社会に広めること(発信すること)です。そのため、イベントは写真、動画、録音取り放題、拡散し放題という形式をとっています。

メディアでありながら、メディアを疑って欲しいと考え、「見て、確かめて、発信する場」として提供します。ネガティブな意見があったとしても“それでいい”、というか、“それがいいい”!多様な意見として発信してもらいたいと考えています。

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開催会場・日時

2/16(金) 京都 Metro
第一部 19:00〜 第二部 23:00〜

2/17(土)東京 Contact
第一部 19:00〜[50名限定]
第二部 23:00〜[人数制限なし]

※2/17 (土)第一部、上映会&トークショーのみ、HEAPSとの共同開催
※第一部は、未成年の方でも入場可能です。第二部は、20歳以上で写真付きIDが必須となります。

Berlin Atonalとは

Berlin Atonalは音と光を実験的な表現で探索するフェスティバルです。1982年に西ベルリンで始まり、創造性豊かなパイオニアたちが芸術、特に音を使った表現の全く新しいアイデアや可能性を試すためのプラットフォームとなりました。しかしベルリンの壁の崩壊と共に、1990年に一度休止しました。2013年、フェスティバルはベルリンに復活し、それ以来ヨーロッパでも代表的な、新たなオーディオ・ビジュアル・アートの創造、発表、発展の場として定着しつつあります。芸術、スペース、音と光に対する、先進的で妥協を許さないアプローチの代名詞として。

問い合わせはこちらから

〈第一部:映画上映 & Mark Reederトークショー〉19:00〜[50名限定]

『B-Movie:LUST & SOUND IN WEST-BERLIN 1979 – 1989』

1980年代のベルリンの音楽、アート、混沌を描いた映画。壁で分断された都市は、特別な種のサブ・ポップカルチャー故にクリエイティブな人種のるつぼとなり、独創的な物好きや有名人も同様に惹きつけた。その多くは、長く続く商業的な成功ではなく、瞬間、スリル、刺激を楽しむことを選んだ。そこにはヨーロッパの他の地域では不可能のように思われるあらゆることが、全て集まっていた。英国マンチェスターからこの街に飛び込んできた音楽好きの青年、Mark Reederの目を通して描かれる、熱狂的で創造的な10年間を駆け抜けるコラージュであり、パンク・ミュージックから始まりセクシャル・マイノリティーのLove Parade、テクノの誕生までを辿った、現在のベルリンの音楽とカルチャーのルーツを紐解くドキュメンタリー。

予告編:https://youtu.be/tj3qj6KNcLU

〈第二部:クラブイベント〉23:00〜[人数制限なし]

※20歳以上の方対象。写真付き身分証明書をご持参下さい。

出演者

2/16(金)京都METRO

Moritz von Oswald (DJ)

Demdike Stare (DJ)

YAMA (DJ)

YPY (Live)

Barium (Live)

Taguchi (Live)

 

2/17(土)東京Contact

Moritz von Oswald (DJ)

Demdike Stare (DJ)

YAMA (DJ)

YPY (Live)

Carpainter (DJ)

Mark Reeder (DJ)

Takahashi (DJ)

Lil Mofo (DJ)

Changsie (DJ)

セーラーかんな子 (DJ)

料金

<上映イベントのみ>

前売 1000円 ドリンク代別途

当日 1500円 ドリンク代別途

 

<クラブイベントのみ>

前売 3000円 ドリンク代別途

当日 3500円 ドリンク代別途

 

<第1部&第2部 通し券>

前売 3500円 ドリンク代別途

当日 4000円 ドリンク代別途

前売り券販売開始:1/20(土)
チケットはこちらから [e+]

※京都METRO「前売」、及び「通し券」メール予約方法:ticket@metro.ne.jp宛にタイトルをそれぞれ「2/16 映画上映予約」、「2/16 New Codes前売予約」、「/16 New Codes通し券予約」、として頂き、前日までに、お名前と枚数を明記してメールして下さい。

詳しくはこちら [フェイスブックイベントページ]

マーク・リーダー/Mark Reeder

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1958年、英・マンチェスター生まれ。78年から独・ベルリン在住。ミュージシャン、プロデューサー、サウンドエンジニア、レコードレーベルの創設者として英独、世界のミュージシャンを育てあげる。
過去にはニュー・オーダーやデペッシュ・モード、電気グルーヴなど世界的バンドのリミックスも手がけてきたほか、近年では、当時の西ベルリンを記録したドキュメンタリー映画『B-Movie: Lust & Sound in Berlin (1979-1989)』(2015年)でナレーションを担当。現在は、自身のニューアルバム『mauerstadt』の制作やイギリスや中国などの若手バンドのプロデュースやリミックス、執筆・講演活動なども精力的に行っている。markreedermusic(ウェブサイト)

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※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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