牛乳だけでなく、豆乳、アーモンドミルク、ココナッツミルクなど、「ミルクの選択肢」が近頃では増えてきた。だが、なぜ牛乳以外のミルクの存在感が強くなってきているのだろう?
カロリーやコレステロール値を気にする人が多いからというのも一つの理由だ。しかしそれだけではなく、牛乳のような動物性のミルクが、実は思いのほか環境を壊しているという理由で、ほかのミルクに替える人たちも世界では少なくない。
今回はそのように注目されている植物性のミルクの一つ、オーツ(麦)ミルクを作る透明性の極めて高いスウェーデンのブランド「Oatly」(オータリー)を紹介する。
牛のミルクより、環境を壊さない選択肢
「栄養素を最大限に、 環境への影響を最小限に」をポリシーに運営しているブランドOatly。牛乳など動物性のミルクがなぜ環境によくないのかというと、生産にあたって温室効果ガスを多く排出するからだ。同ブランドによると、大気中に放出される二酸化炭素の14.5%が家畜によるもの。Oatlyのオーツミルクなら、牛乳と比較して、1リットルを生産するのにあたり排出される二酸化炭素が8割も少なくてすむ計算になるという。
彼らが製造・販売しているのは、プレーンのミルクだけでなく、フレーバーのつけられているものや、オーツミルクを使ったスムージーやラテドリンク、エナジードリンク、クリームチーズのようなスプレッド、アイスクリームなど種類が豊富だ。このような製品展開で「ほかも試してみたい」と思わせることにより、消費者の購買意欲を刺激しているのかもしれない。
製品の「不完全な点」まで公開する
先ほど書いたような「環境を考えた牛乳の代替品」であることだけでなく、高い透明性を誇っているのが、Oatlyのもう一つの大きな特徴だ。ウェブサイトでは製品一つひとつのよさ以外に、「まだ完全でない点」をも丁寧に説明している。これはほかではあまり見られないだろう。
たとえば、メインの製品である「Oat Drink Chilled」なら、原材料、それぞれの原材料の生産地、栄養成分、ヴィーガンであること、グルテン含有量に関する情報以外に以下の情報が公開されている。
WHAT’S AMAZING(どこが素晴らしいのか)
心臓の働きにいいβグルカンが含まれているのが特徴。それだけでなくタンパク質や脂質、炭水化物など良質な栄養素がバランスよく含まれている。砂糖は不使用だが、ビタミンDやリボフラビン、ビタミンB12、そしてカリウムが添加されていてオーツだけでは摂れない栄養素を摂取できる。
WHAT MIGHT BE LESS AMAZING(どこがあまり素晴らしくないのか)
オーツミルクをパッケージングのために、わざわざスウェーデンからドイツまで運んでいる。理由としては、Oatly自体が小さな会社ですべての製品をパッケージングするための設備を持てないから。また、乳や大豆を一切使用しない製品を作っているため、そのような成分を混入させない安全性の高い工場を選ぶのが重要であり、まだ基準を満たす工場をスウェーデンで見つけられていないのも理由だ。
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また、Oatlyのオーツミルクには身体によくないとされているパームオイルが使用されているものの、使用しているものは害の少なく、使用を続ける理由もほかの情報と同様に丁寧に説明しているため、消費者の判断材料があるという点で評価していいのではないか。
「情報を公開する」ビジネスのよさ
日本では長らく「牛乳を飲むのがいいこと」だとされてきた。だが、環境に対する側面を考えると、必ずしもそうではないようだ。Oatlyのように、どの製品でも透明性が高ければ、消費者にとって自分で判断して納得した消費がしやすくなるだけでなく、普段何気なく手にとっている商品の生産背景について考えるきっかけともなる。
インターネットを使用するのが当たり前で、検索すればどんな商品に関してもすぐに人の意見や評価が見られる時代の今、企業の透明性を求める消費者はますます増えていくだろう。
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。