2018年10月2日から11月25日まで東京都写真美術館で開催されている、「愛について アジアン・コンテンポラリー」展。
中国、シンガポール、台湾、韓国、在日コリアン、そして日本の「アジアの女性アーティスト6名」による作品を集めた本展示の見所とは?
アート業界では歓迎されない「アジア」X「女性」
「日本ではアジアの作家が紹介される機会が非常に少なく、特に女性作家の作品を見る機会は極めて限られているといえます」。本展示の企画者であり、現・石橋財団ブリヂストン美術館副館長/前・東京都写真美術館事業企画課長の笠原美智子(かさはら みちこ)氏は「アジアの女性アーティスト」を集めた動機をそう話す。
1991年の「私という未知へ向かって 現代女性セルフ・ポートレイト」展を東京都写真美術館の学芸員として初めて企画して以来、先陣を切ってジェンダーの問題に注目した女性作家の展覧会を手がけてきた笠原氏が、「やりたいことをやりきった」のが本展示である。
日本のジェンダーギャップ指数(世界経済フォーラムが2017年11月公表)が゙144カ国中114 位だったことを考えれば驚くことはできないが、アート業界における性差別は稀ではない。
男性アーティストの作品が女性アーティストの作品よりも展示される確率が高いことは統計を取るまでもなく、いくつかの美術館を訪れてみれば一目瞭然である。また、欧米が国際社会で経済面や政治面で力を持っていることと比例するように、外国のアーティストの作品が展示される場合は欧米のものが多いという事実もある。
問題意識を持っている者や困っている当事者が自覚的に声を上げていかなきゃいけないんです。この展覧会は、そういった状況に対する問題提起でもあります。
そこで、「アジア」と「女性」という普段はなかなか見られない組み合わせを実現したこの展示には社会的な意味を感じさせられる。
「愛について」
金仁淑(キム・インスク)[在日コリアン]、キム・オクソン(金玉善) [韓国]、ホウ・ルル・シュウズ (侯淑 姿)[台湾]、チェン・ズ (陳哲)[中国]、ジェラルディン・カン [シンガポール]、須藤 絢乃 [日本]と、アジアという地域に生きているということは共通しているものの、アーティストとしてのキャリアもバックグランドも作風も実にさまざまなアーティストが集められた本展示のテーマは「愛について」。
集められたアーティストをあえて一括りにして表現したときに、共通していたことが「愛」だったのだろうか。
各々のアーティストが扱うテーマは、国際結婚から移民の問題、自傷や行方不明の女の子、死などダークなものも含め多様だが、共通していることは急速に変わりゆくアジアという地で生きるそれぞれの「今」を前向きに表現しているということだといえるだろう。
今を生きるあなたは本展示から何を感じるだろうか。
「愛について アジアン・コンテンポラリー」展
I know something about love, asian contemporary photography
2018 年10月2日(火)〜11月25日(日)
出品作家によるトーク
キム・インスク×須藤絢乃
2018年11月17日(土)15:30〜17:00
会場:東京都写真美術館1階スタジオ
定員:50 名(整理番号順入場/自由席)
入場無料/要入場整理券 *当日 10 時より 1階総合受付にて整理券を配布します *逐次通訳付き(日本語)
担当学芸員によるギャラリートーク
会期中の第2、第4金曜日14時より、担当学芸員による展示解説を行います。 展覧会チケット(当日消印)をご持参のうえ、2 階展示室入口にお集まりください。