東京・恵比寿に位置する東京都写真美術館(TOP MUSEUM)で開かれている、収蔵作品を紹介する展覧会「TOPコレクション」の今年のテーマは「イメージを読む」。
毎年テーマを変えて開催されるこの「TOPコレクション」では、同美術館の35,000点を超えるコレクションから選び抜かれた個々の作品や、複数の写真からなるシリーズ作品をとおして、それぞれが語りかけてくる物語に着目している。
今回のコレクション「イメージを読む」では、一見明確ではない作品の背後にある意味、すなわち作品が作られた時代の背景や、作り手の物語と作品の関係性を浮き上がらせることで、豊かな写真の鑑賞体験を提供することが目的。
5月に始まった第1期は「場所をめぐる4つの物語」をテーマに、それぞれある「場所」と密接にかかわった4人の作家によるアプローチを取り上げて、そこから生まれる物語的な世界の広がりを見つめる。
それぞれの作家たちは、あるひとつの場所や地域を深く見つめ、その場所に固有の生活や風景、出来事をとらえるだけではなく、現実的な事象の根底にある物事の本質や普遍的な意味をとらえている。本展では写真やテキストで展覧会を構成し、それぞれのイメージを読んでいく仕組みとなっている。
作家紹介
W.ユージン・スミス〈カントリー・ドクター〉 1948年
人口約2000人の町、アメリカコロラド州クレムリングでたった一人の医者、アーネスト・セリアーニの多忙な生活と仕事をテーマとした作品。写真週刊誌『LIFE』の1948年9月20日号に発表されたこの作品は、ドキュメンタリー写真家の第一人者であるスミスがヒューマニズムの視点から取材・撮影し、同誌の記者による文章とともに掲載された、社会派フォトエッセイの名作とされる。本展では約30点の写真作品とテキストによって、今日ではほとんど忘れられた発表当時のストーリーを紹介する。
奈良原一高〈人間の土地 緑なき島ー軍艦島〉 1954-567年
明治から昭和時代に海底炭鉱で栄えた長崎の島、端島(通称・軍艦島)。良質な石炭を産出し、最盛期の1960(昭和35)年には約5300人もの人々が暮らしていた。しかし、日本の近代化が進み、主要エネルギーが石炭から石油へ移行したことによって1974(昭和49)年に閉山し無人島となる。2015(平成27)年世界文化遺産に登録された。本作はかつて活気に満ちていた島の情景をとらえた貴重な記録であるとともに、外界から隔絶された世界で「限界状況を生き続ける人間の生」という作家の抱いたイメージが強く投影されている。
内藤正敏〈出羽三山〉 1980年
修験道の聖地、山形・出羽三山の宗教世界とその祭祀について、作家自らが修行者となってこの地に入り込み、取材した写真シリーズとそこから展開する創造的な世界観を、作家自身による民俗学的な論文や、「内藤正敏 異界出現」展(当館にて2018年開催)で明らかになったいくつかのエピソードもまじえて紹介する。〈出羽三山〉シリーズは1983年土門拳賞受賞作品。
山崎博〈10 POINTS HELIOGRAPHY〉 1982年
作家の代表作である「太陽が描く画」というコンセプトによる長時間露光のシリーズ〈HELIOGRAPHY〉。本シリーズ〈10 POINTS HELIOGRAPHY〉は、1970-80年代にかけて手がけた一連の〈HELIOGRAPHY〉の最終形であった。幻の作品とも言える本作の制作に関わった関係者の証言によって、36年前に東京・調布市周辺10カ所で同時刻に二日間にわたり撮影された、作品の壮大なコンセプトと制作過程に迫る。
写真作品を鑑賞していて「きっと意味があるに違いないのにいまいち分からない」と思ったことはないだろうか。本展覧会では、コレクションを楽しめるだけでなく、鑑賞方法も学べるのだから是非おすすめしたい。
TOP コレクション イメージを読む 場所をめぐる4つの物語
主催 東京都 東京都写真美術館
協賛 凸版印刷株式会社
会場 東京都写真美術館 3 階展示室
東京都目黒区三田 1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
Tel 03-3280-0099
開館時間 10:00-18:00(木・金は 20:00まで)、ただし7月18 日(木)-8月2日(金)の木・金は21:00 まで開館。入館は閉館30分前まで休館日 毎週月曜日
ただし、7月15 日(月・祝)は開館、7月16日(火)は休館
観覧料 一般 500(400)円/学生 400(320)円/中高生・65歳以上 250(200)円
※ ()は20名以上団体、小学生以下および都内在住・在学の中学生、障害手帳をお持ちの方とその介護者は無料、第3水曜日は65歳以上無料
※7月18日(木)~8月2日(金)の木・金曜日17:00-21:00はサマーナイトミュージアム割引(学生・中高生無料、一 般・65歳以上は団体料金)※各種割引の併用はできません。