やりたいことがやれない、行きたいところへ行けない、会いたい人に会えない…全ては互いの命を守るためと分かりながらも、今までのようにはいかないストレスにイライラが募ることもあったかもしれない。
欲求・欲望を、以前のようにはむき出しにすることができなくなった今、皆、自分の “欲”とどうやって折り合いをつけているのだろうか?
食欲、性欲、物欲、知識欲、さらに自粛生活で気がついた自分の「○○欲」について、編集者、アーティスト、本屋、学生、料理人などさまざまな立場の人に話を聞いた。
「自粛」ムードのなかで“欲”の話をするのはためらわれるかもしれない。
だけど、こんな言葉がある。
「希望──欲望と期待とが丸められて一つになったもの」(アンブローズ・ビアス)
そう、“欲”は希望へと変わる。
この「自粛生活」のなかで生まれた私たちの“欲”が、きっと新しく始まる日々への希望の光になると信じて。
Kotetsu Nakazato
フォトグラファー、エッセイスト、アートディレクター、イベントオーガナイザー
フォトグラファー、エッセイスト、アートディレクター、ドラァグクイーンなど、肩書きに捉われず多方面に表現し続けたいギャル。自身のジェンダーやセクシュアリティにまつわる経験談や思考を発信している。NEUTでの取材記事はこちら。NEUTで撮影を担当した記事などのページはこちら。
欲1.食欲
ー人間の三大欲求の一つで、生きるためには欠かせない「食欲」。だけど、ただ腹を満たせばいいってものでもない。今はどんなふうに食欲を満たしている?
自粛が始まった当初は食欲がやばくて、常に何か食べてて。そのせいで見た目でわかるくらい太っちゃって、かつ、食べて満足すると眠気が襲ってきて何もできない日々が続いちゃいました。だから、今は野菜をいっぱい使って自炊をしています。庭で野菜も育て始めたから、収穫して料理をするのも楽しみ。ジャンキーなものが食べたくなったら、知り合いのお店のごはんをテイクアウトやウーバーしてます。
欲2.性欲
ーソーシャルディスタンスを保つ必要がある現在、気軽にはスキンシップがとれなくなった。もちろんセックスも。「性欲」の行き場は?
コロナ前まではカジュアルセックスをそこそこしていて、満足いかない相手だとしても継続的に求められることが自尊心の安定にもつながっていました。だけど、自粛期間に入ってからは、セックスしたくても感染拡大のリスクを負ってまでセックスするなんて、欲に支配されててダサすぎ〜と思って我慢してます。出会い系アプリ入れててもどうせ会わないし、お誘いも断らなきゃいけないし、そのストレスがめんどくさくてアンインストールしちゃった(笑)。
欲3.物欲
ーせっかく新しい洋服や靴を買っても、それを身につけて出かけることが叶わない今、「物欲」にはどんな変化が起きている?
今まで、他者からの自分のイメージをよくしたり、誰かと会うときの自分の気持ちを上げたりするために服やアクセサリーを買っていたことに気づいたの。
今は誰とも会えないから、そんなに物欲はなくて。だけど、「おうち時間」をちょっとでも有意義に過ごしたいと思って、庭に置くビーチチェアを購入しました。これでおうちにいながらセレブ気分を味わってます(笑)。
欲4.知識欲
ー家の中で過ごす時間、一人で過ごす時間が多くなっている今、どんなことを知りたいと思い、インプットしている?
撮影の仕事ができなくなって、文章のお仕事をもらうようになって、好き勝手書いてるんですけど。文章を書いていると頭の中が整理されるのと同時に、疑問も沢山生まれてきて、もっと勉強しなくちゃ! となってます。
今、勉強・思考しているのは「生物学的な性は社会的に作られたものなのか」と「ウェブ媒体と紙媒体の役割とつながり」について。ウェブ記事から雑誌や書籍の情報を集めてます。
欲5. ○○欲
ーあなたが今抱えているそのほかの「欲」について聞かせて。
将来は海外に拠点を移したいのもありますし(そのためにお金も貯めたい)、行ったことのない場所に行って、今の生活圏内では感じられない暮らしの価値感を吸収したいです。
でも、まずは大好きな友だちと海に行ってバーベキューしたいな。春を楽しめなかったぶん、夏は狂い倒したい。毎日遊ぶことしか考えてないです(笑)。
みんなが心身共に健康な状態でこの欲を発散させたいので、今はしっかりステイホーム。