パナソニックが楽曲「ロードスター」を発表。発起人・田中麻理恵が考える、音楽から生まれる対話の重要性<Sponsored>

Text: Fumika Ogura

Photography: Kotetsu Nakazato unless otherwise stated.

2023.3.23

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 2022年4月、パナソニックグループは新たなブランドスローガン「幸せの、チカラに。」を発表した。激しく変化する世界で、お客様だけでなく、社員や関係者も含めたあらゆる人々の幸せを生みだす「チカラ」であり続けたいという思いが込めたれたこの言葉は、これまでは世界に向けて物質的な豊かさを提供してきたパナソニックが、モノだけではなく、精神的な豊かさを改めて追求し、考えていきたいという気持ちが表れている。

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田中麻理恵

 そのスローガンのもと、主にミレニアル世代やZ世代に向けたコンテンツを発信するオウンドメディア「q&d」の立ち上げを行うなど、今後を担う若者へ向けブランドとして新たなコミュニケーション手段を模索するなかで、「音楽」をツールとして選び、楽曲プロジェクトを立ち上げたのが、同社のブランドコミュニケーション部門に所属する田中麻理恵(たなか まりえ)だ。学生時代は音楽一色の生活だったという彼女のこれまでを辿りながら、制作した楽曲「ロードスター」が誕生するまでの道のりを聞いた。

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音楽漬けだった学生時代から、新たな可能性を探しにメーカーに入社

 幼少期から学生時代にかけてはピアノを弾くことが生活の一部。高校と大学は音楽系へ進学し、主にクラシックを学んだ田中。作詞や作曲も好きで、音楽は表現をするためのツールの一つだと意識していた。そのくらいとにかく音楽漬けだった学生時代。大学卒業を目前に、将来をどう歩んでいくかを考えたとき、音楽の道へ進むことも頭にはあったが、広告代理店やメーカーなどあえて幅広い業界で自身のこれからを探すことにした。

「これまではピアノしかやってきてないこともあり、自分の知っている世界が狭いような気がしていました。視野を広げることで自身の新たな一面に気付くこともありますし、私があえて音楽業界ではないところに進んでいくことで、その場所で音楽のこれからの可能性を広げられるかもしれないとも思ったんです」

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 ひたすら音楽に打ち込んできた人が将来の道を探すとき、奏者として活躍できるのはほんの一握り。音大を出たとしても就職先は限られているのが現実だ。就職活動を通して、田中は自身の持つ能力が全く違う場所でも活かせるかもしれないと思った。そして、入社を決めたのが、地元の企業でもあるパナソニック。当初は経理での入社だった。

「5年ほど経理の部署で働き、社内転職制度でブランドコミュニケーションの部署へ異動しました。最初は国内や海外で開催される展示会やイベントに携わりつつ、オウンドメディア『q&d』などのコンテンツ制作を担当するようになりました」

 2021年10月にスタートしたパナソニックグループのオウンドメディア「q&d」。「問い(question)」と「対話(dialogue)」で暮らしの理想を考えるメディアとして、主にミレニアル世代やZ世代に向けて、コンテンツを発信している。

「これまでさまざまな生活シーンを支えるために事業を展開してきましたが、日々、社会が変化するスピードが早くなり、そして多様化していくなかで、物理的にただ便利なだけではなく、それぞれに寄り添った暮らしを考えていくことが必要なのではないかと思いました。特にこれからを担っていく世代に向け、『一緒にこれからの暮らしを考えていきませんか?』と、媒体を通して対話を重ねることで、ブランドがスローガンとして掲げる『幸せの、チカラに。』の本質的な部分に繋がっていくと思うんです」

 編集部のコアメンバーは社員4~5人ほどで構成され、編集会議は週に2回。特集ごとに社内へ声をかけ、企画やライターを募集。若手を中心に、部署の垣根を超えて多くの社員が参加し、2週間に一度記事が公開されている。

自身の強みでもある音楽を通じて築くコミュニケーション

 「q&d」が創刊して1年が経った頃、メディアだけではなく別の切り口でもっと伝えていけることがないかと、田中は自身の強みでもある音楽を通したブランドコミュニケーションに挑戦してみることにした。

「メディアとして記事を出し続けていくのも大事なことですが、ボリュームのあるものが多いですし、リーチできる部分が限定されるなと感じていました。ブランドを伝えていくにあたり、キャッチーな軽さだったり、さまざまなレイヤーで見せていくことも大事なのではないかと思ったんです。そこで伝える手段として、音楽を選びました。若い世代が余暇に楽しんでいるアクティビティの一つであるとも思いましたし、自身が培ってきた音楽の経験も活かせると感じたんです」

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 会社に企画を提案し、見事採用。新しい視点でのプロジェクトに、上司たちも前向きだった。

「音楽はある種、対話ツールだと感じていて。私がやってきたピアノで例えると、誰かが作曲した譜面があって、奏者がその楽曲を解釈して弾き、またその演奏を聴いた人が、自分なりに考えを巡らせていく。言葉を交わすものではないですが、そこには深い対話が繰り広げられていると思うんですよね」

 楽曲のコンセプトになったのは、グループのパーパスを表すブランドスローガン「幸せの、チカラに。」。聞いてもらう人の幸せに本気で寄り添いたいという願いから制作が始まった。若い世代に向けて発信していくものということもあり、歌の内容は10代から20代の学生の体験を紡いでいくことに。インタビューは実際に学校へ訪問し、田中と学生の1対1で行った。今考えていることや悩んでいることを学生に聞いていくと、アイデンティティを探していくなかでの葛藤や不安、はたまた、何も悩んでいないことに対する焦りや、人間関係で自身がこうするべきだったというような後悔などが上がってきた。

ロードスター

ひとり帰る道 頭は置き去り
僕が間違ってたのかな うまく言えなかったのかな
ぐるぐる回り続けてるけど 今日もまた何も変わらない

そんな自分を 自分に隠さなくていいんだよ
今は見えなくても 道しるべはきっとそばにあるから

You’re gonna be alright ひとりじゃないよ 目を開けて ほら 思い出して
小さなことで笑える この瞬間を いつも忘れないで

誰かがあなたを笑顔にするとき
あなたも誰かのチカラになるから

夢がなくて焦って 見つけるとその距離に不安で
選ばなかった道がキラキラ 真っ暗な迷路に光る
進んでるのか 戻ってきたのか どうしてみんなもうあんなところにいるの
もがいた時間の先を 信じてみよう

You’re gonna be alright そばにいるから 息を吸って さあ 顔を上げて
小さなことで笑える この瞬間を いつも忘れないで

誰かがあなたを笑顔にするとき
あなたも誰かのチカラになるから

「学生との対話を通して、いつの時代も同じようなことで壁にぶつかっているんだなって、すごく共感しました。最初は私自身も世代で括って彼らを見てしまっていたけど、社会や世間が違うものとしてラベリングしているからなんだなと実感しました。歌詞は、そんな彼らの悩みを自分のなかで咀嚼し、学生からもらったコメントを元にして全編を書きました。『何も変わらない』や、『夢がなくてしんどい』など、あえてネガティブな言葉を残して、温度感を出すことを大切にしました。制作を進めていくなかで、全世代に共通する普遍的な部分を感じて、本当は世代を超えてもっと分かり合えるはずだと思いましたね。音楽というツールはその分断を埋めてくれる可能性があると思うんです」

対話を重ねていくことで構築されていく、人対人の関係性

 楽曲は、企業CMでも用いられている楽曲「聖者の行進」をアレンジしたオリジナル。プロデューサーとして国内外で活躍するChocoholicとタッグを組み、「ロードスター」が完成した。実際に曲を歌っているのは、社内での公募オーディションで見事採用された社員たちだ。

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「企画を立てるところから、作詞、そしてオーディション、ミキシング…。最初から最後まで、全ての工程を担当しました。学生時代は自身で作曲や作詞もしていましたし、これまで培ってきた経験を活かすことができましたね。もしかしたら他の企業がこういった取り組みをする際は、どこかに外注することが多いかと思うんですが、実際に会社で働く私が、自身のエッセンスや知見も入れながら、会社のメンバーとともに一から制作に携わることに意味があったと思っています」

 無事、リリース日を迎えた「ロードスター」。同社のブランドアンバサダー・大坂なおみがハミングをするシーンから始まり、実際にレコーディングに参加した社員や、インタビューに協力してくれた学生たちの姿が写し出され、制作背景が見えるミュージックビデオに仕上がった。再生回数は4万回を越え、企業が提供するコンテンツとしては好調な数字を叩き出している。

「でき上がったときは、達成感がある反面、『若い世代に響くかな?』と、不安な気持ちでした。社内からはすごく反響があって、『歌詞を見て思わず泣きました』という社員や、『子どもからも好評です』という声が聞こえてきて安心しました。『q&d』では、 柴那典(しば とものり)さんにインタビューをして、これまでの音楽史を振り返りながら、『ロードスター』について感想をいただけて嬉しかったです」

 社内にはパンクロックバージョンや、オフィスの環境音を使いアンビエントバージョンをオリジナルで制作した若手社員も。他にも楽曲に共感した手話ユニットが手話の振り付けを制作したり、インタビューに協力してくれた学生が合唱曲として取り組んだりするなど、多くの二次表現に繋がった。

「まさに音楽的な派生が生まれたなと思っています。対話って相手から何かアウトプットがないと成り立たないものですし、コミニュケーションを通して、人対人の関係性って構築されていくと思うんです。今回も一つの楽曲がさまざまな人のもとへ届いて、それがいろいろ経由をしてまた戻ってきたので、とても意義のあることができたなと思います。まだまだ楽曲は使い倒せてないので、今後も新たな可能性を探っていきたいですし、対話はずっと続けていきたいですね」

 音楽というツールを用いて、一人の社員からスタートしたこのプロジェクト。電機メーカー・パナソニックが「曲作り」をしたと聞いて、「なんで電機メーカーが?」と思った人もいるかもしれない。だが田中の話を聞いて、それが会社の理念をクリエイティブな形で体現するものだということが分かったのではないだろうか。「ロードスター」は、さまざまな人の道標となり、世代を越えた対話を重ねていくことで、本当の豊かさとは何かのヒントを与えてくれるかもしれない。

ロードスター

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自分にとっての幸せってなんだろう?​
学校生活や友人との時間、家族との過ごし方など、かつてない状況を経験している今。​変化する世界の中で、若い世代はどんな幸せを描いているのだろう。​

「幸せの、チカラに。」をスローガンとして掲げるパナソニックグループは、日本各地の中高生・大学生たちと対話し、彼らの思いや言葉を紡いで歌詞に。
企業CMでも用いている楽曲「聖者の行進」をアレンジしたオリジナル楽曲「ロードスター」を制作。​

少しでも誰かの幸せの力になれれば、と集った同社従業員が歌う。

〈企画や制作の舞台裏をSpotify podcastでも配信中〉

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