韓国ソウル生まれ、東京育ちの歌うDJ YonYonが、自身の本名の一部をタイトル名に冠した1stアルバム『Grace』を8月6日にリリースした。音楽を通して恩返しをしたいという想いのもと制作された本作は、自身のルーツ、そして今の自分、弱い自分と向き合うことで完成したそうだ。本インタビューでは、彼女のルーツからアルバム制作の裏側、そして他のミュージシャンとコラボレーションする面白さを掘り下げ、今まで見せてこなかった等身大のYonYonの言葉をお届けする。

青春時代の音楽はBoAと韓国の早口ラップ
NEUT:韓国・ソウルで生まれ、東京で育ったとのことですが、そのバックグラウンドは音楽制作やご自身のパーソナルにどのような影響を与えていますか?
YonYon:私は両親の仕事の都合で幼い頃から韓国と日本を行き来し、その後日本へ移り住んだのですが、実は中学・高校の6年間は、東京にある韓国系のインターナショナルスクールみたいな所に通っていたんです。韓国の教育機関なので、先生も生徒も全員が韓国人。当時は、iPodの代わりに韓国製品の電子辞書に音楽ファイルを取り込んで持ち歩くのが流行り。校内放送やカラオケで歌う曲も、ほとんどが韓国の音楽で、青春時代のほとんどを韓国の曲を聴いて過ごしたんです。
NEUT:当時、どんな音楽が流行っていたんですか?
YonYon:当時はエミネムが世界的に流行していて、そのムーブメントは韓国のヒップホップシーンにも影響を与えていて、韓国人ラッパーのOutsiderをはじめ早口ラップのブームに火がつき始めました。放課後、 私たちがカラオケで歌う曲も、もちろん早口ラップの楽曲や、メロウなブーンバップビートに乗ったみんなで歌えるラップ曲もカラオケ定番曲としてあり、私もたくさん練習して、歌ってました。今の私の制作物にはシング・ラップを取り入れたスタイルの楽曲がいくつかあります。それはやっぱり、学生時代の経験がベースに少なからずあるのでは、と思います。

NEUT:ミュージシャンを目指すきっかけになった音楽も、この頃に聴いていたヒップホップなのでしょうか?
YonYon:ミュージシャンを目指す上で、学生の頃に最も憧れを抱いていたのはBoAさんなんです。韓国と日本のポップシーンを繋ぐ、パイオニア的なアーティストで、私が初めて自分で買ったカセットテープも、BoAさんのアルバム『Girls on Top』で、これ韓国語オンリーの作品なんです。これまで、日本語での楽曲をメインに歌っていたので、韓国語だけで表現されたアルバムはとても印象的で、「こんなにかっこいい音楽があるんだ」と強く感じたのを覚えています。そして、韓国人でありながら異国(=日本)でこれほど活躍している姿に心を打たれ、当時の憧れの存在でした。

NEUT:では、音楽活動を始めたキッカケを教えてください。
YonYon:大学に入ってからです。DJサークルがあって、面白そうだなと思って入ったのがキッカケでした。当時はバンドもやっていて、軽音サークルと掛け持ちしていて。BoAさんに憧れてシンガーを目指してオーディションを受けていた時期もあったんですが、両親から「大学を卒業するまでは音楽はやめてほしい」と言われ、一度は夢を諦めたんです。それでも、歌うことは諦めきれず、音楽好きな友人たちとバンドも始めて、オリジナル曲の制作もしたりしていました。ちなみに、DJサークルに入ったのは、勧誘のときに「爆音で自由に音楽を聴けるよ」と言われ、それが魅力的に感じたからからなんです(笑)。でも活動するうちにハウスやテクノに触れるようになりました。
NEUT:そのDJサークルでの、経験は今の音楽のルーツになっているわけですね。
YonYon:今作っている楽曲は、ダンスミュージックをルーツとした音楽を取り入れていることが多いので、その時の経験は大きいと思います。その時もしDJサークル入ってなかったら、今のスタイルになってなかったかもしれないですし、バンドを続けていたかもしれないですね。
NEUT: バンドからDJへと活動の軸が移っていった理由は?
YonYon:最初は両方やっていましたが、お客さんの層が全く交わらなかったんです。今となっては、DJもバンドも同じイベントに出演することが当たり前ですが、当時はちょっとタブーのような雰囲気もあって。でも「もし同じ場所にいろんな層のお客さんが集まったらもっと楽しいのに」と思っていて、それで自由に音楽を楽しめる空間を作りたくてイベントオーガナイズもはじめたんです。自然とプロモーターとしての動きと、DJの現場が増えていき、DJしながら歌うことも始めたりと、時を経て今の形にたどり着きました。

はじめて曲で見せる弱い自分・おっちょこちょいな自分
NEUT:先日リリースされた1stアルバム「Grace」についてもお聞きしたいです。アルバムタイトルは自身の名前が由来だとお聞きしました。
YonYon:自分の本名を英語にしたタイトルです。アルバムを作ろうと決めた時から、このタイトルでいこうと決めていました。“今の自分”をそのまま詰め込んだアルバムとなってます。
NEUT:資料によると先行シングル『Busy Girl』は、ご自身のおっちょこちょいな性格を描いた作品だとか。
YonYon:そうなんです。私の日常を歌った曲で、全部実話。よく「YonYonっていろんなことができるよね」とか「完璧だよね」と言われるんですが、実際は全然そんなことなくて。例えば、財布をなくしたり、キャリーバッグを電車に置き忘れたまま降りちゃったり・・・。結構、自分でもおっちょこちょいだなって思うところばかりで。この曲は、そんな普段は見せない“恥ずかしい自分”をさらけ出した曲なんです。ラブソングとか、旧友や母への想いを綴った他のアルバム収録曲に対して、この曲はかなり異色で。だからこそ、とても思い入れのある一曲になりました。
NEUT:YonYonさんの音楽の新しい一面でもあるんですね。自身をさらけ出してみようと思ったキッカケはあったんですか?
YonYon:ある人に「YonYonって何考えてるのかわからない」と言われたことがキッカケで、もっと自分を見せてもいいのかもしれないと思ったんです。私には強い部分だけじゃなくて、弱い部分があって。おっちょこちょいだし、間違えることもある。でも、そんな私を支えてくれる人たちがいるからこそ、ここまでやってこれた。そんな等身大の姿を歌詞に落とし込んだのがこの『Busy Girl』なんです。

NEUT:本アルバムでは、そうそうたるプロデューサーやミュージシャンの方々とコラボレーションしていますよね。他媒体の記事での”コラボして楽曲制作をすることが多い”と拝見しました。本作で、特に印象深かったパートナーを教えてください。
YonYon:すべての楽曲に思い入れがありますが、先行配信シングルの『Moonlight Cruising feat. KIRINJI』も思い入れが強いです。プロデュースは韓国のSlomさん。彼とは以前『The Link』というプロジェクトで初めて制作を共にして以来の信頼関係があり、さらに尊敬してやまないKIRINJIの高樹さんと3人で曲を作れたことは私にとって大きな意味がありました。一方でSlomさんは、KIRINJIを音楽ルーツの一つに挙げるほどの大ファン。お互いをリスペクトし合う関係性の中で生まれた、まさに理想的なコラボでした。私は“一度限り”ではなく、その後も面白い展開につながるような継続的な関係の中で音楽を作ることに価値を感じていますが、この曲はまさにその形となったと思います。
もう1曲は、、アルバムのリード曲『Life is Beautiful』。客演は、ASOUNDのボーカル・ARIWAさん。本当に彼女の歌と歌詞は最高で、「愛と平和」をテーマにした曲を作りたいと思った時、真っ先に浮かんだのがARIWAさんでした。プロデューサーはChaki Zuluさん。どんなジャンルもカッコよく仕上げてくれる信頼できるプロデューサーさんです。

ありのままの自分を表現することで完成した『Grace』
NEUT:YonYonさんの楽曲は、ジャンルも言語もミックスしてるところも特徴ですよね。
YonYon:以前は日本語だけで曲を作っていましたが、『The Link』という日韓をつなぐプロジェクトをはじめたことで変わりました。日本と韓国、両方のリスナーに届くように、両国のアーティストと共に制作し、それぞれの言語を取り入れるスタイルでリリースを重ねていました。この実験的な試みが、今の私の音楽のベースになっています。
NEUT:初のアルバムの制作を経て、成長を感じる部分があれば教えてください。
YonYon:本作を作るにあたって、1stアルバムだから「名曲」を残さなきゃという固執から解放され、固執していた時期がありました。良い曲の定義とは?と自問自答をした時に、誰もが口ずさめるメロディーで、「長く聴ける曲」「聴く人を選ばない曲」、そんな「名曲を作りたい」と思ったんです。
でも、アルバムを作ろうと思ってから1年ぐらい、なかなか納得のいく曲が作れなくて苦しんでいました。KIRINJIの高樹さんともコラボレーションすることは既に決まっていたのですが、満足いく曲ができないまま、1年間待ってもらったんです。
NEUT:きっとご自身の掲げた「名曲」のハードルが、プレッシャーになっていたんですね。
YonYon:「名曲を作らなきゃ」という気持ちが強すぎて、曲作りがなかなか進みませんでした。Slomさんともデータでやりとりしていたのですが、うまくかみ合わず、思い切って直接会いに行ったんです。そこにはSlomさん、SUMINさん、ギタリストのYoungjunさんがいて、「まずはデモを聴こう」という流れに。私は「まだ聴かせられる段階じゃない」とためらったんですが、「トラックを作る上でYonYonの他のアルバム曲を聴いておきたい」と背中を押され、大きなスピーカーで視聴会をしました。すると全員が「これ、すごくいいじゃん! 何を心配してるの?」と言ってくれて、その言葉が大きな自信になったんです。「良い曲を作らなきゃ」という固執から解放され、“今の自分のスタイル”をそのまま曲に残そうというマインドに切り替えられたんです。これが今回のアルバム制作における大きな転機でした。
本当に、こんなにたくさんの曲を作りきれるのか不安だったんですが、この出来事を経てその不安も、少しずつ自信に変わっていったんです。制作過程を楽しめるようになったこと自体が、自分にとって大きな成長だったと感じています。

今回のアルバムが“シンガー”としての第一歩
NEUT:9月7日には、リリースライブ『ENTRANCE』も開催しますよね。どんなライブになりますか?
YonYon:リリースライブ『ENTRANCE』は、あえてアルバムに参加していないaimiさんとぷにぷに電機さんの2組にお声掛けさせて頂きました。この日のライブを通じて新しいアーティストに出会ってもらうキッカケになれば嬉しいです。本作の客演のアーティストの方々とは、近々、一緒にライブをする機会がありますので、今後を楽しみに待っていてもらいたいです。
NEUT:今後チャレンジしたいことがあれば教えてください。
YonYon:今回のアルバムは、私自身のこと語った作品だったので、次はコンセプチュアルな作品にトライしてみようかと。ジャンルを縛ったり、歌詞のテーマに一貫性を持たせるなど、明確なコンセプトを持って作品を作っていこうと考えています。
NEUT:それでは最後に、みなさんへメッセージをお願いします。
YonYon:このアルバムをリリースできて、ようやく「私はシンガーです」と自信を持って言えるようになりました。歌うDJとしては、以前から活動をしていましたが、今まではアルバムを出してないこともあり「私はシンガーです」と名乗ることに迷いがあったんです。このアルバム制作期間を経て、ひとまわり成長したYonYonのこれからを一緒に楽しんでいただけたら幸いです。そんな私の音楽が、皆さんの日常の些細な瞬間に、寄り添えるものになりますように。そして、皆さんの背中を少しでも押せるような、そんな音楽をこれからも発信し続けていきたいです。

Re.presents
「ENTRANCE × YonYon 1st Album “Grace” Release Party」at ADRIFT
日時:9月7日(日)
場所:下北沢 ADRIFT|東京都世田谷区北沢3丁目9−23
開場:18:00 OPEN / START
出演者:YonYon、ぷにぷに電機、aimi

1stアルバム『Grace』
1. Anchor / Prod. Kota Matsukawa (w.a.u)
2. Busy Girl / Prod. A.G.O
3. U – Remastered 2025 / Prod. Chaki Zulu
4. Dreamin’ (feat. SUMIN & ☆Taku Takahashi) – Remastered 2025 / Prod. ☆Taku Takahashi
5. Memories – Remastered 2025 / Prod. 80KIDZ
6. Old Friends (feat. SIRUP & Shin Sakiura) – Remastered 2025 / Prod. Shin Sakiura
7. Echo / Prod. Stones Taro
8. Moonlight Cruising (feat. KIRINJI & Slom) – Remastered 2025 / Prod. Slom
9. Sweet Vacation / Prod. Sam is Ohm
10. Orange (feat. PEAVIS) / Prod. DAUL
11. Eomma 엄마 / Prod. A-bloom
12. Life is Beautiful (feat. ARIWA) / Prod. Chaki Zulu
13. Memories – Osamu Fukuzawa Remix
14. Moonlight Cruising (feat. KIRINJI) – grooveman Spot Remix

YonYon / ヨンヨン
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音楽レーベルPeace Tree主宰。ソウル生まれ東京育ちというバックグラウンドを持ち、歌うDJとして幅広い世代に親しまれ、どこか聴きやすくかつ踊れる、エッジの利いたサウンドで多彩なBPMを縦横無尽にプレイするマルチアーティスト。ソングライティングも精力的に行い、ジャンル・言語の垣根を越えて直感的に組み立てていくそのリリックは、ポップで中毒性のあるグルーヴと裏腹なリアルでメッセージ性の強い言葉が世界中のリスナーを虜にする。さらに、三宅健、サカナクション、たまごっち主題歌など様々な分野でリミックスやプロデュースワークを行い、作家としても日々奮闘中。
全国各地を飛び回りながらも音楽を通じて愛と平和を広め続けている。