“ラメ”を楽しむなら責任を持って。若者が開発した、世界初の「地球や人に優しいラメ」とは。

Text: Shiori Kirigaya

Photography: BioGlitz

2018.1.21

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グリッター*1といえば、化粧品などによく入っているキラキラしていて可愛いもの、という印象だろうか。あまり知られていない事実ではあるが、そのグリッターの多くは、自然に分解されることがない。つまり水に流してしまうと、水中で生きる動物の体内や、そのまわりの環境に残ることになる。

だがグリッターの使用を諦めるのはまだ早い。その眩しい輝きの持つ可能性に魅せられて、「Shine responsibly」(責任を持って輝く)というメッセージを掲げ、生物分解が可能なグリッターを開発したブランドがある。

(*1)ラメや大粒のラメであるホログラムなどの総称

Photo by 撮影者

プラスチックからできている「グリッター」を危険視する科学者たち

ここでグリッターの引き起こす問題にもう少し触れておきたい。グリッターが何から作られているか調べてみると、それがプラスチックやアルミであることが多い。これらは大きさがだいたい5mm以下であるため、地面に落ちたものを拾ったり水に流れてしまったものを集めたりすることが簡単にはできないとおわかりだろう。

何よりの問題は、プラスチックやアルミを自然の力では分解できず、放置すると地球環境に残ってしまうということ。そうすると環境だけでなく人間まで悪影響を受ける可能性がある。たとえばグリッターが川や海に流されると、そこに生きる魚がエサだと認識して食べてしまう。魚の体内に入ったグリッターは消化されずに残り、プラスチックの持つ有害物質を蓄積される。そして、その魚を人間が口にすることもあれば、人体に悪影響が及んでも不思議ではないということだ。

アメリカやイギリスでは歯磨き粉やスクラブ石鹸に使われているプラスチック粒子の使用を禁止する動きに乗り出しているが、科学者たちが世界的な禁止を呼びかけているグリッターがそのような規制の対象となる日は近いだろう。(参照元:The Guardian, Independent, Konbini, NHKクローズアップ現代+, 環境省

若者が開発にこぎつけた、「生物分解が可能なグリッター」

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ではグリッターを使用するのは諦めたほうがいいのか?いや、そうしなくたっていい。近年、プラスチックを含まないグリッターがいくつか開発されているからだ。本記事で紹介したいのは、「世界初の生物分解可能なグリッター」ともいわれる、アメリカ生まれの「BioGlitz」(バイオグリッツ)。サステイナブルファッションデザイン・テキスタイルの会社で働いていた現在24歳のSaba(サバ)と、彼女の友人でニューヨーク大学でサステイナブルファッションを学んでいたRebecca(レベッカ)の2人の若者が2015年に始めたブランドだ。(参照元:Paper Magazine, LATV Network

グリッターが引き起こす環境汚染を問題視していた2人だが、Sabaが解決策を見つけようとボスに相談したことで、「生物分解が可能なグリッターが開発できないか」とグリッターを製造する工場をまわるようになる。のちにニュージャージー州の工場で開発にこぎつけた。

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バイオグリッツは従来のものとは違い、植物や藻の細胞壁の主要物質であるセルロースや、ユーカリの木から作られていて、ビーガンなだけではなく土に還る。また、皮膚や目を傷つけないような形に切ってあるのも特徴なのだ。従来のグリッターよりも少しばかり値が張るようだが、人間がそれをつけて楽しめるだけでなく、環境を汚さず生態系を壊さないのなら選ぶ価値があるだろう。

グリッターの持つ“人と人をつなぐ作用”を生かして

ブランドの創始者の一人であるSabaは、グリッターの持つ“眩しい輝きの可能性”に魅せられた若者だ。18歳でファッション業界に入った彼女は、グリッターをどこに行くときでも持ち歩き、フェイスペインティングやボディペインティングをするように自分に塗るだけでなく、人に塗って楽しんでいたそうだ。それは彼女いわく、表現力を豊かにしてくれるし、人と人をつなぐことができるから。

パーティー会場で打ち解けていない人がいたらグリッターを塗ってあげるんだけど、そうするとみんなと一体になったように感じてくれる。だからグリッターは人を排除しないし、むしろ人と人をつなげる。

(引用元:LATV Network

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またBe inspired!には、グリッターの良さは人をいかようにも変身させられるところにもあると話してくれた。だが彼女はその一方で、自分が楽しみを見出したものに責任を持つ必要があると感じていたようだ。

グリッターを塗ると可愛くなるだけじゃなくて、獰猛どうもう、ゾッとする感じ、タフ、パンクそれから男っぽくもなれる。だけどある夜、ダンスフロアでいつものように人にグリッターを塗ったあと、家に帰ってシャワーで自分についたグリッターを洗い流して、それらが排水溝に流れていくのを見ていて、これ以上グリッターの輝きの代償として環境を傷つけることはできないと思った。

※動画が見られない方はこちら

好きなものを諦めなくていい。必要なのは「選択」すること

自分が好きでいつも使っているものが、実は環境や私たち人間を含む動物に悪影響を与えていることがある。その可能性がないか、まず自分が使用している製品について調べてみてはどうだろうか。

問題があったとしたら使用をやめるのも一つの選択だが、環境や動物にやさしい代替品を探すという方法もある。彼女たちのように、自分のたちの好きなものの「持続可能な選択肢」を自ら生み出すことまではできなくとも。

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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