「沖縄に生息するジュゴンを守りたい」。環境問題を切り口に「辺野古新基地問題」を考える映画が公開|GOOD CINEMA PICKS #002

Text: Shiori Kirigaya

Photography ©imageMILL

2017.9.11

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映画には人を変える力がある。これまで知らなかった世界に連れて行ってくれる。ストーリーを通してこれまで出会ったことのない価値観に感化される。今まで見たことのない美しい景色に心動かされる。映画には無限の可能性がある。

Be inspired!では社会問題に焦点を当てた映画を紹介する『GOOD CINEMA PICKS』という連載を始める。国内外で起こる問題に対し、知り、考え、アクションを起こすきっかけをくれる映画を毎月紹介していく。

今回紹介するのは、沖縄の海に生息する神聖な生物ジュゴンをめぐる環境問題を通して、日本人が考えなければならない「辺野古基地問題」について知ることのできるドキュメンタリー映画ZAN〜ジュゴンが姿を見せるとき〜だ。

Photo by ImageMILL

沖縄の海に3頭生息するという絶滅危惧種ジュゴン。映画によると、ジュゴンは「自然を司り人々に災難を告げる海の神の使者として語られていた一方、食することによって長寿長命をもたらす不思議な力を持つ人魚と考えられていた」という不思議な生物なのだ。

そんなジュゴンの保護の問題には、日本と琉球王国の歴史が関係している。19世紀末に琉球王国が日本に併合されて消滅すると、ジュゴンの捕獲規制も消失して300頭以上が捕獲され、目撃されることも少なくなった。また、第2次世界大戦後の食糧難でジュゴンが大量に捕獲されて数が激減し、後に天然記念物として登録されるものの継続して減少が続いたという。

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それだけではなく、戦後には辺野古沿岸の開発のために海の埋め立てが行われるなどの環境破壊が行われた。現在問題となっている辺野古新基地の建設によっても、ジュゴンの餌場を含む辺野古沿岸が埋め立てられることになるため、ジュゴンの住む貴重な自然を守りたい気持ちで辺野古新基地の建設に反対する人々がいることを同映画は伝えている。一方で、基地があることで経済的な恩恵を受けられると、条件付きで容認している人々にも取材をしているのだ。

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同作は、サステイナブルをコンセプトに掲げたクリエイティブエージェンシー「imageMILL(イメージミル)」により制作されており、同社を立ち上げたリック・グレハン氏が監督を務め、同社にライター・プロデューサーとして所属する木佐美有氏がメインキャストとプロデューサーを務めている。作品だけではなく、自然や社会に配慮した持続可能なブランディングやビジネスを支援しながら、社会問題を題材とした映像制作で社会の変革を目指す製作陣の今後の活動に注目したい。

ZAN the Movie (Official Trailer #2) from imageMILL on Vimeo.

※動画が見られない方はこちら

ニュースで取り上げられることの多い「辺野古新基地問題」。日本に住む私たちにとって、同問題を考える責任があることをわかっていても、その実状を知ることは難しいと感じてしまいがちではないだろうか。

同作では、絶滅危惧種ジュゴンにまつわる伝承や環境問題を切り口に、新基地の建設に反対する人や基地と共存しようとする人たちの考えに触れることができる。米軍基地の問題をただ「問題」として知るよりも、沖縄の文化や歴史、自然の背景から考えていくほうが理解しやすいのかもしれない。

ドキュメンタリー映画『ZAN〜ジュゴンが姿を見せるとき〜』

監督:リック・グレハン プロデューサー:木佐美有

製作:イメージミル株式会社

提供: 公益財団法人日本自然保護協会

配給:ユナイテッドピープル

2017年 / 日本 / 73分

オフィシャルサイト

市民上映会申し込みサイト

7月19日 @euro live 渋谷 オフィシャル公開イベント<終了>

9月1日〜 @シアタードーナツ沖縄 劇場公開

9月30日〜 @シネマジャック&ベティ横浜 劇場公開

10月29日 @Black Box マレーシア 環境映画祭オフィシャル上映

11月11日〜 @Yujiku Asagaya 阿佐ヶ谷 劇場公開

9月30日(土)と10月1日(日)には、横浜の劇場シネマジャック&ベティで、劇場公開を記念した監督のトークイベントの開催が予定されています。また、第10回 国際クアラルンプール環境映画祭2017のベストフィルムに選出されたため、10月29日には映画祭の開催地 マレーシア・クアラルンプールで上映が決定しています。

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※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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