ファストファッションの正反対を行く。1足のサンダルを1ヶ月かけて作るブランドが現代人に訴えたいこと|GOOD WARDROBE #005

Text: Shiori Kirigaya

Photography:©Mohinders

2017.12.2

Share
Tweet
 

従来のブランドのように、「伝統的なファッションアイテムから着想を得て、安い労働力で大量生産する」のではない。若者たちがインドの熟練の職人たちとともに作り続ける、社会や環境を大切にしたサンダルとはどんなものだろうか。

「服をただ着るのではなく、マニフェスト(宣言)として着よう」というモットーを持つBe inspired!は、編集部がセレクトしたブランドの詰まった「人や環境、社会に優しく主張のあるWARDROBE(衣装箪笥)」を作り上げる連載、『GOOD WARDROBE』を開始。今回は、きっと毎日履きたくなる、伝統的かつデザイン性の高いインドのサンダル「Mohinders」(モヒンダーズ)を紹介する。

Photo by 撮影者

ーモヒンダーズの商品を通して訴えたい問題は?

私たちはこのブランドを通して、「商品生産がもたらす社会や環境への影響」を、消費者に知ってもらいたいと思っています。誇りを持って靴を生産していて、その生産の透明性をなるべく高くしようと心がけています。

ーモヒンダーズの商品の特徴は?

特徴は、伝統的なインドのサンダルからインスパイアされているところです。現在はそれらのサンダルの歴史と切り離すことのできない、熟練の職人たちとともに商品を作っています。それは従来の生産モデルのように、ある商品にインスパイアされて、低コストで作れる工場へ発注するのとは正反対です。

商品のデザインを新調するときには、職人たちとともに考え、彼らが作ってきた伝統的なサンダルのデザインを保てるように、品質とシンプルさを大切にするようにしています。

また職人たちに適正な賃金を支払うことが大切だと認識しており、サンダルの生産者が地域の金貸しからお金を借りなくてすむよう、給与体系を整えています。一緒に仕事をしている3、4代目の親方と女性が非営利の協同組合に入っていて、それらの手助けをしてくれました。

width="100%"

私たちは、素材を選ぶときに環境への配慮も忘れていません。現在世界で作られているレザーで「植物タンニンなめし」*1の技術を施しているのは、全体の10%以下です。(それ以外には速く安くできる「クロムなめし」*2の技術が使われています)植物タンニンなめしでも、工場で施されていることが多いのですが、モヒンダーズの場合は手で施しているのが特徴です。伝統的な方法と同じで、最小限のもの(水とアシアナの樹脂、ミロバラン*3の実)を使用していますが、サンダル作りにはそれで十分なのです。すべての過程は手作業で、表面の艶が美しいサンダルを作り上げるまでには30〜35日かかります。

これは簡単なことではありませんが、それがサンダルを買う人たちにとって消費行動が社会や環境に与える影響を考えるきっかけとなるようにしたいと強く思っています。それから責任を持って作られている商品をもっと簡単に買えるようにしたいのです。

(*1)「なめし」とは動物の皮膚の汚れを取り除き、柔らかくする技術。植物タンニンなめしでは、植物の樹脂など天然のものが使用される
(*2)化学薬品を使用するなめしの方法
(*3)インド、インドシナ原産の植物

width="100%"

ーモヒンダーズのサンダルを作ろうと思ったきっかけは?

ありきたりな表現かもしれないけれど、私がこのサンダルを作ろうと思ったんじゃなくて、むしろサンダルが私に作るように言ってきたような感じでした。会社と旗艦商品の「シティ・スリッパ」というサンダルのインスピレーションは、私がインドのムンバイのストリートマーケットで購入したサンダルから受けています。カリフォルニアに戻ってきてから、そのサンダルを数ヶ月間履いていたのですが、その履きやすさ、シチュエーションもあまり関係なく毎日履けるようなデザイン性の素晴らしさを実感しました。

それでサンダルを輸入できないか調べるようになって、そのサンダルの製造背景を知ることになったのですが、多くは工場ではなく家庭で職人が手作りしているということがわかりました。そしてインドまでサンダルを調達する冒険に出たときのワクワクした気持ちが、そのサンダルの歴史の一部となってきた職人たちとビジネスを始める希望と合わさって、モヒンダーズのサンダルを作る決断をしたのです。

width="100%"

width="100%"

ー社会の問題を解決するために、ファッションには何ができると思う?

ファッションを扱う企業は、消費者と話すことに時間とお金を費やしています。そうするなかで、商品を作る過程での問題について話すプラットホームが作られています。社会や環境の問題に関心のあるファッションを扱う企業ならそれを使えるだろうし、それを使って、商品の製造過程について説明するべきだと思います。

このトランスペアレンシー*4の理想的な結果は、消費者自身が①自分の購入するものがどこから来るのか関心を持つようになることと、②彼らが物を購入するときに、商品自体の魅力や価格だけではなく、社会的・環境的な責任まで考慮するなど、それまでと違う決断をするようになることです。

(*4)透明性

width="100%"

ーどこでモヒンダーズのサンダルを買える?

私たちの拠点はサンフランシスコですが、日本にいてもウェブサイトから直接買えます。日本への送料は30ドルです。

それからちょうど今日本の卸売業者と話していて、2018年の春には日本のセレクトショップで買えるようになります。その情報はニュースレター(ウェブサイトの下から登録できます)やインスタグラムでお知らせするので、ぜひフォローしてください。

※動画が見られない方はこちら

ここ数年、とあるファストファッションブランドが若手アーティストの作品を、某ファストフード店がストリートアーティストの作品を盗用していた問題などがあった。伝統的に身につけられてきた装身具などのデザインを、ある意味で“盗んで”商品として売るということは、もっと頻繁に起きているのではないだろうか。

したがって彼らが言っていたような、「消費者が持つ社会や環境に対しての責任を考え直すこと」だけでなく、それぞれの文化が持つ特徴やアイデアをリスペクトすることについても、彼らの商品を通して改めて考えてみてほしい。

Mohinders

Website | Instagram

width="100%"

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

Share
Tweet
★ここを分記する

series

Creative Village