従来の「エシカルファッション」というと、なんだか真面目なものを想像するかもしれない。しかし北欧、デンマークではそんなイメージが覆させられる。そこではもう、エシカルであるということは、ブランドの「目的」ではなく「条件」にしか過ぎないから。
「服をただ着るのではなく、マニフェスト(宣言)として着よう」というモットーを持つBe inspired!の編集部がセレクトしたブランドの詰まった「人や環境、社会に優しく主張のあるWARDROBE(衣装箪笥)」を作り上げる連載『GOOD WARDROBE』。今回紹介するのは、デンマーク発の洗練されたミニマルサステイナブルブランド「By Signe(バイ・シーヌ)」。同ブランドの創設者であり、デザイナーであるシーヌさんに話を聞いた。
ーバイ・シーヌの服はどのようにサステイナブルなのですか?
バイ・シーヌはデザインプロセスの透明性を追求したデンマークのサステイナブル・ファッションブランドです。エシカルな生産方法でオーガニックな材料から、正直でミニマリストな普段着を作ることを心がけています。デンマークのスタジオでひとつ屋根の下、企画から発送まで行うことで、プロダクトの向上からサプラインチェーンなどを全てコントロールし、原材料から完成されたものがサステイナブルでエシカルで、自然に優しいものになるように管理しています。
ーどうしてサステイナブルなブランドにしようと思ったのですか?
自然とそうなったという方が正しいかもしれません。私自身がそういうことをとても気にしているので、ブランドを作るときに100%自信を持って売れるプロダクトにするためには、原材料からブランドのコンセプトまで一貫してサステイナブルなものにせざるを得なかった。ひとつ屋根の下でブランドを成功させることで、ファッション業界に対してデザイン&手作りでエシカルなビジネスが可能だと示したいです。また、サステイナブルに、深く、正直で、魂のこもったブランドが成功できるということも。ブランドは輪のようなものです。生産方法がエシカルでも原材料がそうでなければ意味がないし、逆もそうです。環境に優しい服を地球に残そうと、ケミカルなものは一切使わないですし、それぞれの服に温もりが感じられるように心かげています。正直に活動しているから、自分たちのストーリーを消費者とオープンにシェアできるのも好きなんです。
ーこんなに深く考えているけれど、ウェブサイトに“サステイナビリティ”というページがあるだけで、ホームページやSNSをパッと見ただけでは、「エシカルなブランド」とは思わないようなミニマルで情報の少ないスタイリッシュなビジュアルですよね。それはブランディングの一貫ですか?
まず、そう思ってくれたならすごい嬉しい!私はデザイナーとして、デザインを最優先しています。サステイナブルというのは、個人的に気にしているからと、それがファッション業界の未来だと思っているからだけど、一番重要なことではないんです。理想では、みんなが私たちの服を、デザインが好きだから買ってくれて、そのうえで、サステイナブルだという事実がさらなる価値を生んでくれれば嬉しいです。
ーデンマークにはインディペンデントで環境を気にしたファッションブランドが増えているみたいですが、“トレンド”なのでしょうか?
ファッション業界はものすごいスピードで環境を汚染してきました。社会にとっても悪影響を与えてきました。だから、次世代は地球を守るサイドにつかなければいけない。そういう意味では“トレンド”だとは思っていません。これは変革だと考えています。二度と後ろを振り返ることはないでしょう。
ー環境問題などの社会問題を考えるときに、ファッションにはどんな力があると思いますか?
ファッション業界の規模はものすごく大きいですよね。ということは環境問題を考えるうえでファッションには大きな影響力がある。これまではオイルを使ってプラスチックの布を作ったり、自然の原材料を確保するために大量の水と殺虫剤を使ったり、布を染めるために大量のケミカルを用いたり、環境にも生産過程に関わる人の健康にも悪影響を及ぼしてきました。でも大規模なファッション業界だからこそ、意識が変われば大きなインパクトを生める。少しでも多くのファッション業界の人が、地球を守ることに意識を向けていくことがとても重要です。
ーバイ・シーヌは日本からでも買えますか?
今こうやって話している間にも、日本とのすごく面白いプロジェクトを進めています!だからもう少しで買えるようになるはず。それまでは、ウェブサイトからインターナショナルに郵送しています。日本からのオーダーもすごく多いんですよ。ウェブサイトはこちらから。
環境問題への取り組みが盛んなデンマークでは、すでにファッション業界の過渡期を迎え始めているからなのか、バイ・シーヌのようなサステイナブルなインディペンデントブランドが増えてきているという。それも、「地球に優しい」ことがブランドの軸にあるわけではなくデザイン性に優れたものを作るうえでサステイナブルなのはある意味、二の次というスタンス。地球に優しい消費が当たり前の社会では、そういったことが企業側にとっても、消費者にとっても「目的」ではなく「生活の一部」になっていくのかもしれない。
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。