フェアトレード、ダイレクトトレード、ベジタリアン、ビーガン、ゼロウェイスト、昆虫食、未来食…。東京の街に日々増えていく、お腹をただ満たすだけではない「思想の詰まった飲食店」。
「海外からビーガンの友達が日本に来ていて、ビーガンメニューのあるレストランを知りたい」、「サードウェーブの先を行くコーヒーが飲みたい」、「フードロスがないレストランに行きたい」、「無農薬野菜が食べたい」、「友達や恋人と健康にいい食事をしたい」などなど。そんなニーズに答える連載です。
「食べることはお腹を満たすだけじゃない。思想も一緒にいただきます」。その名も『TOKYO GOOD FOOD』。フーディーなBe inspired!編集部が東京で出会える、社会に、環境に、健康に、あなたに、兎に角「GOODなFOOD」をウィークリーでお届けします!
それでは第7回目の『TOKYO GOOD FOOD』行ってみましょう!
WHERE IN TOKYO
今回は、今年4月に天王洲アイルにオープンした『Seed to Table(一粒の種から楽しく健康的な食卓まで)』をテーマにしているT.Y.FARMが運営するレストラン、NOZ BY T.Y.FARM。以前掲載した代表の太田さんのインタビュー記事はこちらから。
彼らは都内に自社農園を持ち、野菜の種を自分たちで作り収穫。それだけでなく、自分たちのレストランを都内に構えているという国内・国外でも唯一無二の集団と言えるだろう。しかし、残念なことに、8月末にクローズしてしまうという悲報がBe inspired!編集部の耳に入ってきた。
そこで気になる今後の展開や、オススメの一品、お店のコンセプトなどを代表の太田さんとシェフの西田さんに伺いました。
WHAT’S GOOD
ーお店で一番オススメの品はなんですか?
西田さん:『10oz SALAD』。名前の通り、野菜が10oz (約280g)摂れるサラダです。
ビーツ、メークイーンと胡桃のサラダ
ステラトマト、インゲン、オクラのタブレ
メークイーンと玉ねぎのフリッタータと自家製リコッタ
ズッキーニとトマトのカポナータ
ベビーリーフミックス
青梅産平飼い卵
ーその理由はなんですか?
西田さん:ただ普通に仕入れた野菜の「サラダボウル」というわけではなく、お皿に盛られた90~95%以上の食材が、自分たちの農場で“無農薬・無化学合成肥料”で育てた有機野菜を使用しているから。今回のプレートでは、卵/クルミ/チーズ、オリーブオイル、ビネガー
くらいが自分たち以外の食材ですね。 ただ、卵は青梅産、チーズも種類によっては自分で仕込んでいます。
また、ドレッシングに限らず、化学調味料を一切使用せず、ビネガーに関しても青梅の農場近所で醸造している物を起用しています。今回のドレッシングには柿のお酢を使用しています。青梅で生産されている食材を使うことで、独自の味の追求と、地域コミュニティとの連携の活性化もしています。
CONCEPT & PHILOSOPHY
ーお店のテーマや信念を教えてもらえますか?
太田さん:“一粒の種”から楽しく健康的な食卓まで、という意味が込められた『Seed to Table』がお店のテーマです。
元々、T.Y.FARMという名前で東京都の青梅市で有機農業に取り組んでいるところから始まっています。
生産するところからシェフ西田が携わり、何をどの様に食べるかというところも計算して種を蒔いています。
食べられるところから逆算されて生産されている為、ベストな食べ時というものが一般的な“食べ頃”とは少々異なるかもしれないが、その考え方もこれまでの飲食店に中々無い仕組みなのではないだろうか、と思っています。
『契約農家』を持つレストランはあっても、種の専門家、有機農業家、養蜂家、料理人、それぞれの分野のプロが揃っている「T.Y.FARM」というチームは特異で、他には中々真似できない存在だと思います。
青梅の畑で撒いている種は、ほとんどが「固定種」と呼ばれる子孫を残せるタイプの種を起用しており、自家採種もしているのですが、何代にも渡って採った種で育てる野菜の味は格別です。農家のほとんどが種を採らなくなった今、固定種(特に地域固定のもの含む)から生産して種を取り続けるというのは、とても労力がかかることですが、その分クオリティに差が出るし、何よりも大事なことです。
生産が間にあわない野菜品目は、近隣で無農薬・無化学肥料栽培を行っている小規模農家さんから仕入れたりもしています。
ーお店での食材の加工方法や調理方法のこだわりは?
西田さん:まずはフード・ロスが出ないように心がけています。キュウリはピクルスにしたり、大きくなり過ぎたズッキーニは煮込んだり、型落ちのトマトは、ジュースを絞りトマトソースにしたりしています。型落ちは形が不細工なだけで、味は自信を持って美味しいと言えるので、加工してお店でお客様に提供し、ゼロウェイスト精神を忘れません。ちなみにお店で出たコーヒーかすなどは溜めておいて、農場の堆肥場に持ち込み発酵堆肥に起用しています。やがてはお店から出た全ての有機ごみを土に還せる様にしたいです。
また、自分たちの野菜の味を活かし、引き立てる味付けを心がけています。最近、サラダ屋さんとかに行くと、チョップされた野菜たちに化学調味料が入った大量のドレッシングをかけます。あれではドレッシング味のサラダを食べているようで、何の野菜を食べているかわかりません。そうではなくて、味付けはシンプルに、ビーツをローストしたり、蒸したり。ジャガイモは岩塩の中に入れてオーブンで焼くだけ。なるべく素材の味をお客様に楽しんでもらえるように調理しています。
CHANGE SOCIETY
ーNOZを通してどのように人々の意識を変えたいですか?また、社会や地球に貢献していますか?
太田さん:NOZでの食事に限らず、美味しいものを食べている時に“何故これは美味しいのか”をもっと考えること、そういう機会を持つ事は、とても大事だと考えています。安いものには何かしら理由があるし、高いものはただ高いだけなのか、それとも高いだけの価値があるのか、そういった事を考える思考を消費者がもっと持ってくれる様になると良いなと思っています。
そしてNOZの食事を通して、社会性があるテーマを実際に社会に投げかける事が出来るのは、とても大きいと感じています。
前述した醸造酢や、生産が間に合わない栽培品目を他の農家さんから仕入れる事ほか、地域でのイベント参加などの連携を大切にしていきたいと考えており、これからはもっと積極的にしていくべきところとも感じています。
今月末で閉店してしまうことは、本当に残念だけど、転機として捉えている部分もあります。場所は変わっても、志の部分は変えずに進んで行きます。8月中はラストのスペシャルメニューを出すので、ぜひいらっしゃってください。今後もよろしくお願いします。
美味しいものを食べている時に“何故これは美味しいのか”をもっと考える機会を持つ事は、とても大事だと考えています
そう太田さんが言うように、「食べることの楽しさ」を感じる機会が、気軽に食事を済ますことのできるファストフードの台頭によって昔より減り、“何故これは美味しいのか”を考える機会も少なくなってきているのかもしれない。
ファストフードやコンビニの食事を否定する訳ではないが、食事は「作業」ではなく、「命や労働に感謝し、いただくという行為」なのだと再認識させてくれるのが、NOZで提供されている食事であり、太田さんと西田さんを含むT.Y.FARMのパッションなのではないだろうか。
普段「健康的な食事が欠けているなぁ」と感じている人は、彼らの健康な畑で育てられた健康な野菜を一度口にしてみてほしい。スーパーマーケットの野菜では決して味わえない、本来の野菜の姿と旨味があなたを待っている。
来週の『TOKYO GOOD FOOD』もお楽しみに!
※閉店までのスペシャルメニューの情報は以下です。
【NOZクローズにあたっての8月スペシャルメニュー】
クローズに伴い、定番野菜・夏野菜はもちろんの事、その他の食材に関しても特別な仕入れをかけ、シェフ・西田が本気でイタリア料理に徹する日を何日か設けます。
是非ご予約の上、ご賞味くださいませ。下記の日程でコースディナーを用意しています。
<ジェノベーゼの回>
8月16日(水)
8月18日(金)
(第1弾は、シェフ・西田が最初に修行した地・ジェノヴァ。 日本での下積み後、渡伊したてで右も左もわからない頃から鍛えに鍛えた料理です。 ジェノヴァを離れる直前”キミももうジェノベーゼ(ジェノヴァ人)だ”と教えてもらった、現地人ならではの品目をお出しする予定です。)
<ナポレターノの回>
8月25日(金)
(第2弾は、ジェノヴァと並ぶ海の街・ナポリ。温暖な気候と夏料理の代名詞ともいえる品目の数々があります。自社ファームの至高の夏野菜を用いて再現、そして体現いただく事が出来る現地の味。)
<マリスコスの回>
8月29日(火)
8月30日(水)
(第3弾は、海沿いの街を渡り歩いたシェフの得意な魚介類の料理を数多くお出しします。 前述のジェノヴァ・ナポリ料理とも違う、魚介料理。何がお出し出来るかは、海の神様次第!)
<最後の晩餐>
8月31日(木)
(最後は何が出るのかわかりません!!)
ご予約はコチラまで
03-6433-1126
NOZ BY T.Y.FARM
Address:東京都品川区東品川2-2-43 T2オフィスビル1階
*NOZ BY T.Y FARMは閉店しました。
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。