「こんな時代だから…」の後に続く言葉は、たいていの場合ネガティブだ。だが、こんな時代だからこそ、凡人ができることは多くあり、地球の裏側にいる人を救うことができるのだ。とある旅行好きの女性が、インド過疎地の社会を変えた。これは“誰にでも”できることだ。そう、あなたにも。
村を好きになるきっかけは、たった一つの「無料公園」
インドの首都から離れた、いわゆる“貧困地域”と呼ばれる小さな村ジャンワール。雑多とした雰囲気が漂うなか、この村に朝から晩まで響くのは子供たちの声である。
その声のもとをたどると「Janwaar Castle」という名の公園がある。ここは誰もが無料で訪れることができ、スケートボードをしたり、お絵かきをしたり、ヨガをしたりと思いのままに子供たちが時間を過ごせる場所だ。この公園は有志によってつくられた。その中心となったドイツ人女性のウルリケさんは「Janwaar Castleがあることで子供たちが村を信頼し、好きになるきっかけの一つになって欲しかった」(引用元:thenortheasttoday)と話す。
彼女は何度も訪れるほど大好きなインド旅行中、この村に出会い、いまだ村に溢れる男女格差や教育制度の欠如の現状を目の当たりにした。そこで子供たちが自由に自分を表現する場所を作りたいと思ったそうだ。(参照元:thenortheasttoday)
“いい子ちゃん”以外は、「スケボーお断り」のルール
実際、この公園ができてから、村にはさまざまな変化が起こった。まず、ウルリケさんが懸念していた教育に対する意識が向上したのだ。そもそも、この村の住人たちは学校が大切という認識がそこまでなかった。両親は学校に子供たちを行かせるよりも、家の仕事をやらせることを優先させており、それに従うことこそが子供たち自身も正しいと思っていた。
だが、子供たちが自主的に「学校に行きたい」と言うようになった。なぜなら、「Janwaar Castle」で遊ぶためには学校に行かなければならないからだ。公園のルールその1は「NOスクール、NOスケートボード」。“いい子ちゃん”しかスケボーをすることが許されない。もちろんいい子ちゃんが村には増え、登校率が一気に上がった。(参照元:Leher)
ウルリケさんは同時に学校の教育水準を上げるように試みた。これまでは学ぶための制度が整っていなかったため、学ぶことは退屈なことだと思わせてしまっていた。しかし、子供たちが遊ぶために学校に足を運び始め、しっかりとした教育を受けることで学ぶことの大切さを知った。学校の必要性が次の代に繋がる基盤ができ始めたのだ。学校に通うことで子供たちも自信を持ち始めたという。(参照元:UlrikeReinhard, huck)
子供たちが担った「ジェンダー格差」を正すこと
実は「Janwaar Castle」にはもう一つルールが存在する。ルールその2は「レディーファースト」。欧米諸国で男女平等を求めるフェミニズム・ムーブメントが押し寄せているなかで、あえて「女性優位のルール」を作るなんて、と思う人もいるかもしれない。しかしジャンワール村に限らず、インドの地方都市ではいまだに男尊女卑の考え方をもつ人が根強く残っている。したがって、ここで「女の子を優先させるルール」を作ることは、社会を根本からよくすることに繋がっていくのだ。(参照元:thenortheasttoday)
このルールを施工してからどうなったか。子供たちはとても素直だ。今やスケートの順番やヨガマットなど用具の利用は、女の子を優先させる光景がどこでも見られる。それも当たり前のように。結果的に学校に通う女の子も増えていった。“女は勉強しなくていい”という意識も改善されたのだ。(参照元:htgroundglass)
この時代にいる私たちが、すでに手に入れている「アドバンテージ」
「Janwaar Castle」ができたきっかけは、ウルリケさんが漠然とインドが好きで旅行に何度も訪れていたこと。そしてそこで、たまたま手に入れた愛車のバイクで、たまたま郊外の村に行ったことだ。それまでは生まれたドイツで本人曰く「まったく普通の」生活をしていたそうだが、先進国である自分が育った国とは全く異なる男女差別や非効率な教育制度を目の当たりして、この国の何かを変えたいと思った。(参照元:thenortheasttoday)
そう感じてからはできることから始めていった。ジャンワールの現実をYouTubeで配信し、自分の想いを世界に発信。最初は小さな一歩であったかもしれないが、今では100ヶ国以上の国々の専門家たちが彼女のパートナーとなって助言を与えている。
何十年も前ならば、あなたが良いアイデアを持っていたとしても、それを実現させるためには時間もお金もかかり、人脈づくりも苦労を強いられた。しかし今はインターネットを通じてさまざまな人と出会うことができるのだ。私たちは、すでに大きなチャンスを手に入れているも同然なのだ。たとえばウルリケさんのように誰かを救うためのアイデアをもしあなたが持っているのなら、同士を集めて行動に移す価値は、多いにあると言えよう。
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。