Amazonの「便利」なサービスに隠された「大きな代償」

2016.12.21

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みなさんはAmazonを利用したことがあるだろうか?Amazonといえば便利で使いやすい米最大のオンラインショッピングサイトだ。しかもオンラインショッピングに止まらず、様々なサービスを提供し、私たちの暮らしを「便利」にしてくれている。しかし今回、そんなAmazonが「人類ゾンビ化」を進めていると警告をしたい。

便利の宣教師、Amazon

まずは実際にAmazonが提供する「便利」なサービスを紹介したい。

実は「ワンクリック」制度を世の中に紹介したのはAmazon。オンラインショッピングをしたことがある方は分かると思うがAmazonでは「ワンクリック」で商品を買うことができる。従来のオンラインショッピンングでは商品を選ぶと、一度「ショッピングカート」のページで商品を確認してから注文していた。しかしこの「ワンクリック」制度が導入されて以来、私たちは商品を選ぶとワンクリックで「ショッピングカート」のプロセスを省いて直接購入できるようになった。(引用元:Yahooニュース

そしてまるでワンクリックの「リアルライフバージョン」かのような『Amazon Dash Button』なるものが今月の5日に日本に導入された。これは製品に合わせて作られたボタンを押すだけで、家までその商品を届けてくれるサービスだ。家の中のトイレットペーパーや、洗剤などの消耗品の近くにこのボタンを設置し、なくなってしまう前に、最低限の労力で「ワンプッシュ」するだけでいい。スーパーに行くことや、製品のメーカーを選ぶこと、そして支払いのプロセスを一切取っ払った。

その上をいくのは『Amazon Dash Replenishment』。もはや「ワンプッシュ」もいらない。商品が少なくなってくると、データがAmazonに届き勝手に注文しておいてくれる。商品が家に届いてはじめて足りなくなっていたことに消費者は気づく。一歩先をいくサービスだ。

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さらにAmazonは2017年、アメリカでコンビニ界にも進出する。その名も『Amazon Go』。もちろんこれもただのコンビニではない。なんと「レジのないコンビニ」なのだ。どういうことかというと、事前にアプリをダウンロードし、この『Amazon Go』に入店する際にアプリを入り口のバーコードにかざすと、後は商品を好きだけとり、お会計をすることなく店を出ることができる。清算は自動でアプリに登録したAmazonのアカウントから引き落とされる。これまでの私たちの常識を覆す、現実世界で「支払うプロセスのないショッピング」を実現させたのだ。(参照元:Amazon

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昨年イギリスでドローンを使った配送試験を行い注目を浴びたAmazonは、その「便利さ」の追求、卓越したテクノロジーにクリエイティブなアイディアで他社と一線を画す。私たちの日常を楽にしてくれることは確かだが、この「便利さ」に違和感を感じはしないだろうか?

「便利」は人類をゾンビにする

言うまでもなく「便利さ」には利点がある。特に時間のない現代人にとっては、短い時間で用事を済ませられるのはありがたい。しかし、「便利さ」の代償は一体なんだろうか。NEWSWEEKでテクノロジー担当のダニエル・ライオンズはテクノロジーについて次のように話す。

私たちの周囲にはかつてないほど情報があふれ、そこから逃れることはできない。デスクの上にも、ポケットの中にも、カフェのテーブルにもコンピュータがある今、情報はまるで空気に乗って私たちの周りを漂っているようだ。それなのに、自分がどんどんばかになっている気がしてならない。実際、平均すれば、われわれは上の世代より無知なのではないか。アップルストアに並ぶ長蛇の列や、歩きながら携帯電話をのぞきこむ人々。人類はゾンビになってしまった。(引用元:NEWSWEEK

彼はインターネットの普及によりあまりにも簡単に情報を発信したり、収集したりできるようになったことによって、人々が考えることを止めてしまったと指摘する。(NEWSWEEK)これはAmazonのサービスにも言える。「ワンクリック」システムはオンライン上のショッピングを極度に簡易化した。現実世界で利用できる『Amazon Dash Button』は「お店に行く、選ぶ、買うという行為」、『Amazon Go』は「レジで払うという行為」を一切取り払ってしまった。これらのシステムの中では、私たちはこれまで以上に深く考えずに消費をしてしまうのではないだろうか。
 
「便利」さは私たちから「考えること」を奪い、わたしたちを「ゾンビ化」させてしまう恐れがある。

「便利さ」より「あなたにとって価値のあるもの」を選択するかはあなた次第

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Photo by Annie Spratt

社会の「行き過ぎた便利化」に対する懸念はあげらるものの、実際のところ「ゾンビ化」するかしないかは、あなたの選択次第だ。

例えば、最近若者の間で流行っているフィルムカメラ。「ヒップ」だから流行りにのって始める人も多いかもしれない。でも使ってみるとわかること。何度も撮り直しできないから、一度限りで撮った写真を、何日も待って現像してみると、あなたにとって「思い入れのある写真」となる。時間もかかるし、労力もコストもかかる。でもそのプロセスがあるからこそ、「価値」も生まれる。今後どんなに社会が「便利化」してもそのことを忘れずにいられる人だけが、「ゾンビ化」しなくてすむのかもしれない。

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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